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バスケ部に入って1週間経った。毎日めちゃくちゃ走らされるので、ふくらはぎがなんかじわじわと痛い。練習だけじゃない。美流は新人なので、部室や体育館の掃除などマネージャーと同じことをやらされている。相沢の方はというと、何もなかったかのように黙々と練習し、マネージャーがやることを甘んじてやっていた。 ケッ。スカしやがって。あいつがジャーマネになりゃいいんだよ。何もなかったなんて絶対させねぇ。 いつも通り早く部室入りしたミロは1人毒づきながら着替えていた。 バン!! 噂をすればなんとやら。相沢神遊が部室に入って来た。もっとおだやかに入って来れないのか。そう思って美流は神遊を一瞥する。 神遊はそんな美流を気にも留めず着替え出す。横に立った神遊は意外と背が高く、美流とほとんど変わらない。ただ美流ほど筋肉は付いてなさそうだ。 神遊は動作の一つ一つが派手でいちいちうるさかった。 なんだこいつ。美流はそう思いつつ、神遊を見ると、どうも体がだるそうだ。 「・・・お前さ、熱あんの?」 神遊はそれに答えず、美流を見ると一言こう言った。 「確か今日あたり3ポイントシュートのテストがあるんだ。お前本気でレギュラー狙ってんならみんなが来る前にやってたほうがいいぜ」 そう言うと、神遊は部室を出ていった。1人残された美流。 は・・・?せっかく人が心配してやってんのに、なんだよ。 神遊のあとを追うように美流は部室を出た。体育館に入るとすでに神遊が1人で練習していた。美流は神遊の見よう見まねで練習を開始した。 やっぱりちょっと神遊は足がフラフラしてるような気がする。美流は練習をやめ、神遊の側に歩み寄った。 「お前さ、どうしてそんな余裕なわけ?」 神遊は重い口を開いた。 「・・・お前はスラッシャータイプだから」 「は?」 「面田先輩から球取れたろ」 「まだそうと決まったわけじゃないぜ?」 「多分あのとき試したのだってそれを考えてだと思う。・・・お前、当たりが強そうだから」 俺はちょっとびっくりして相沢を見ていた。何気なく分析しているところがこの間の印象とはかけ離れていたからだ。 「俺とはポジションが違うんだよ。お前はこれからチームのスラッシュアンドドライブをやって行く。スラッシャーだ」 神遊は最後のボールを投げると俺の方を向いた。 「だからレギュラー争いなんかない。お前は球を取って、点を稼ぐだけでいい。ときどきディフェンスしてくれたら後は俺らが配球する」 ものすごい自信だ。なんか癪に触る。 「なんでわかんだよ」 「面田先輩のやることは大体分かるんだ。だてに長くいないからな」 そうこうしていると、他の部員たちが続々とやってきた。俺と相沢の会話はそこで終わってしまった。 アップ後、相沢が言ってたことが的中した。 「みんなスリーポイントラインに6列に並べー!」 副部長のかけ声でみんなが散らばって3面コートにそれぞれ6列作った。 「記録取るから数えてろよー。制限時間1分だからな。はじめ!」 マネージャーがノートを持って最初のコートに陣取った。みんな続々とリングに投げ入れている。 やがて1分経つと次の部員が前に出て投げ始める。周りの1年はその間飛び散ったボールをかき集める。 ようやく美流の順番が回って来た。がむしゃらにリングに入れまくる。気づいたらもう次の部員が投げていた。マネージャーに申告して振り向いたとき、バタッていう鈍い音が聞こえて来た。 「相沢!!」 副部長が駆けつけて、頬を叩いた。コートに沈んだ相沢は目を閉じて反応がなかった。 「熱があるな。この時間から保健室行っても帰りづらいな」 相沢の周りは人だかりになっていて、俺も後ろから覗き込んだ。部長も駆けつけて輪の中に入って来た。 「どうした?」 「どうやら風邪みたいだ」 「おーい、本城〜」 「はい」 「お前つれて帰れ」 「え、俺がですか?」 なんで俺が。こいつを連れて帰んなきゃいけないんだよ! 「たしか相沢の家ってお前んちに近いんだよな。もうお前も今日の練習終わり」 「はぁ、わかりました・・・」 「あ」 相沢が目を覚ましたようだ。 「俺、意識が・・・あれ・・・?」 「今日はもう帰れ。本城に付き添わせるから」 「え・・・自分で帰れます」 「だめ。部長命令」 面田益玖にそう言われて神遊はがっかりした表情でコートから立ち上がり、フラフラと部室に歩いて行った。 俺もその後を渋々ついて行った。 |