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朝になると、ミロは電話を掛けた。あの顧客だ。 「朝早くにすまない。重要な知らせがあるんだ」 電話の取り次ぎは時間がかかった。 窓の側に座っていたカミュと目が合う。 ミロは受話器を持ったまま、カミュに舌を回してみせた。 カミュの目許に朱が入る。すぐに視線を移した。 まあ、昨日の今日で仕方ないか。カミュの後ろ姿を見ながら笑う。 「・・・この間の話だが、患者が自殺したのでなかったことにしてくれないか。ああまた機会があればな。じゃ」 ミロは受話器を置く。 カミュは自殺したことになったのがあまりいい気分ではなかったが、取りあえずほっとした。 「これでお前は他の誰かのものでもない」 一瞬間が開く。 「俺のものだ」 ミロはカミュに近付くと身体を抱き上げ、出窓に座らせた。ちょうど、立っているミロの顔の位置にカミュの顔が来た。 腰に回した腕に力を入れて、ミロは口付けをしようとした。 カミュは顔を反らす。追いかけて来るミロ。 カミュはその吐息だけで、目眩を起こしそうになった。 遂に折れたのか、感覚が鈍り出したのかミロに捕まえられてしまった。 ミロの舌はカミュの口腔で暴れていたが、口から離れて顎に、頤に、鎖骨に下がって行った。 「ふ・・・は、ぁ」 長衣の襟元まで来ると、服が脱げない体勢だったのを不服に思ったミロは、腰に回していた手を外すとカミュの襟元を裂いた。はだけて肩が見えていた。 胸元の突起を探し当てると、ミロは噛んだ。 「あっ」 びくっと身体が仰け反る。カミュの身体が窓に当たらないように、ミロは腕の力を強くした。 カミュはミロに遮られて、身体を支えるスペースがなくなってしまった。背中をもう少し後ろに倒して、腕を付こうにも、ミロの腕が許さない。 仕方なく、カミュはミロの肩に手を乗せた。それが却ってミロを喜ばせる結果になろうとも思いもせずに・・・。 Yシャツにネクタイという出で立ちだったミロは、首が苦しくなってネクタイを取って放り投げた。 取る間も、カミュは手を放さなかった。放すとそのまま崩れそうで怖かった。 「フ」 そんなカミュを横目で見ながら、どれくらい感じているか確かめた。カミュは目を瞑っていてミロの仕種は見えていない。視線を戻したミロは、欲望のままにカミュの身体を舐めていく。 「ああ・・・んっ」 一際、高い声が出る。カミュの中心に触れた舌は、そのまま貪り始めた。 その動きに合わせて、カミュの上半身はうねり出した。 「はぁぁ、ぁぁあ・・・」 息を吐き出しながら言う、カミュの長い声。ミロの肩に置かれた手は、カミュが動く度に、自分が攻める度に、力が伝わって来る。 ミロは否が応にも、燃えていく。 口だけでは間に合わなくなって、手を使いだした。 起き上がり、顔の位置がカミュと同じになった。 まるで白い蛇だ・・・。 乱れた髪がカミュの唇の周りに張り付いてた。それがミロの手が動くと同時に、カミュの口から噴き上がった。 人が人に惚れる瞬間。 ミロの中の、すべての動きが止まった。 脳が灼けた。 強くしていた腕の力を緩めると、カミュの腰を少し前にずらした。 何の前兆もなく、ひと思いに貫いた。 「あああーーーっ」 カミュの身体が、拒絶ではなく受け入れようとしているのがわかったミロは、何かをぶつけるように強く攻め立てた。 力が強過ぎて、腕の力は役に立たなかった。二人の身体はやがて出窓のぎりぎりのラインまで倒れていく。 ミロの力強さはそのままカミュの手を伝って、背中に傷跡を付けた。 シャツが赤く滲んでいる。 このくらいの傷は、傷だと思わない・・・。 これは愛じゃない。 恋だ・・・。 ミロはカミュを天に舞い上げた。 豪華客船の小さな窓に、二人の溶け合う姿が映し出された。 |