DEVOUR GAME

15



翌日は休患日だった。事務処理が残っていたミロはプライベートルームで仕事をしていた。
今日のカミュは着替えが間に合わず、ミロが渋々与えたアフリカの丈の長い、白い民族衣装を着ていた。
ふと手を休めて、ベッドの端に座っていたカミュを舐めるように見た。
・・・後にも先にも、出会わないだろう。
ミロはペンを置くと、立ち上がった。
カミュは無言で近付いてくるミロを、目で追っていた。
ずっと一緒の部屋に居たのに、なぜか緊張した。立ち上がったカミュはミロの目に射抜かれて、金縛りにあったように動けなかった。
ミロはカミュに近付いてちょっとだけ腰に手を回すと、啄むような口付けをした。何度も。だんだん間隔が長くなっていく。
そして手が動き始める。
細い腰を、撫でた。指先には乱暴さの欠片もない。カミュはいきなり体温が上昇した。
自分でも訳のわからない現象に戸惑い、恥じらった。
いつの間にか息が荒くなっている。ミロは、そんなカミュの顎から首筋にかけて口付けを進めていった。
腰に回されていた手は、今は長衣をたくし上げ、太腿を撫で回している。
甘い声が出ないわけはなかった。
「あ・・・」
力が抜けて立てなくなる。ミロはそっとカミュを押し倒した。上手に服を脱がせると自分も脱いだ。
ミロはカミュを俯せると、腰を引き上げた。臀部を突き出したような格好になったカミュは、足を広げられた。
ズキズキする。
傷が付いて痛いわけではない。催淫物質はもう残ってはいない。
ミロはカミュの回復した媚肉に舌を入れようとした。刹那、くぐもった息が、そこに当たる。
「ん・・ふ」
深い息がカミュの鼻から抜けた。
柔らかい湿った、ざらつく物体。
官能を引き出すように、押したり引いたりしながら根元の太いところまで、ぐいぐい入り込んでくる。
指とは違い、力の渡りが均一ではない、その感触に溶けそうになってしまう。
「ぁあ」
普段とは違う声。サインが出た。

ミロは後ろから思いきり突いた。
「あああっっっ!!」
カミュは上を向いて叫んだ。ちょうどその位置にミロの顔があった。
突く時に出る、ミロの吐息が耳に当たった。体温が上がるカミュにさらに追い打ちを掛けるように、熱い風は送られて来た。
ミロは支える手を片手だけにすると、カミュの腹を強い力で撫で上げた。
カミュから咽び泣くような声が出た。
「んあぁっ、いやぁ・・・やめて」
中に入っているのがはっきりわかるほど、張っていた。
ミロはその感触を指先から感じ取る。こんな奥まで入っている・・・。その行為はカミュを追い詰めた。
「あぁっ、やめて、許して」
感じたことのない、追い詰められた感覚。
涙が、頬を伝って落ちた。
ミロはカミュの髪をかき上げ、項にしゃぶり付いた。
「っぁ・・・ふ、ぅ・・・ん」
上から、下から沸き上がる感覚に目眩を起こし、五感が鈍る。
気付いた時には、涙の代わりにだ液が落ちていた。
ミロは緩く腰を回した。
「い、やぁ・・・」
息を吐き出しながら、聞こえてくる淫靡な声。ミロを性急にさせる。
抽送が速くなる。
その速さと、カミュの声が噛み合わなくなって、時々喉の奥が鳴る音がした。
ミロは繋がったままのカミュを、無理矢理仰向けにした。
一瞬だけ・・・一瞬だけカミュと目が合った。
濡れて潤った目。脳裏に焼き付く。

お前の、強い目はどこへ行った?
いつものあの目は・・・!

ミロはカミュの膝を抱え、さらに追い打ちをかけた。
突く間隔をわざと乱した。
いつ来るかわからない刺激に、カミュは怯えた。
「だめ・・・」
もうすぐやって来る。
自分をだめにする感覚が。
すべてを否定して自分を変えてしまう感覚。

「ぁぁあああ!!」
カミュの波動が極限に達する直前、ミロは口を開いた。
「お前と取り引きだ」
上擦ってもなく、浸っている声でもない。

こうでもしなけりゃ、お前に堕ちていくばかりだ・・・。

「してほしいか」
カミュは思考がまとまらない。しかし、身体は欲しがっていた。最後のそれを。
「お前を売るのは、止める。そのかわり、」
息を吸い込む。
「俺を受け入れるなら、一生俺のものになるなら」
カミュは待っていた。
「お前の望み通りにしてやろう」
言い終わらないうちにカミュは応えた。
「・・・し、て・・・!!」
すべてがどうでもよかった。ただ待っていた。


ミロはすべてを放った。


それは無防備になったカミュの心を掠め取っていった。


心が、持っていかれる!!


「いやああああーーーーっ!!」
カミュの身体は反り返り、波打っていた。
ミロはカミュを抱いてやりながら、変貌の瞬間を見ていた。
それ以外には何も見えなかった。



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2000.7.9
月下