DEVOUR GAME

14



「んっ、あぁん、いや・・・だめ・・・はあっ」
「何がだめなんだよ・・・」
ミロは、頤を仰け反らせて蛇のように動くカミュを見て呟いた。
「はぁっ・・・んあぁぁーーーーきっ、来て!!早くッ」
「・・・」
カミュの言葉通りに動こうとしていた自分に気付いて、ミロは我に帰った。
「普通、自分からは言わないな」
指だけで達かされたカミュの身体には、もう力が残っていなかった。カミュは目を閉じて、余韻に浸っていた。
ミロは指を抜こうとした。そのちょっとの仕種に、カミュは反応してくる。
「あ」
「何だ、まだやれって言うのか?」
強烈な催淫物質が身体の中に残っている限り、カミュは満足することができなかった。欲望の火は消えるどころか、爆発してしまった。
「それ以上声を聞かれてもいいって言うならな」
ミロは意地悪く笑う。
カミュは思い出して後悔した。さっきはあんなに大声を出して・・・。
「それは・・・嫌だ」
「自分から誘っておいて今更だな」
気付いた時には、ミロは服を脱ぎ捨て、何も纏っていなかった。
初めて見る、この男の体。引き締まって鍛え抜かれた筋肉が、カミュには痛かった。
ミロはカミュの腰を浮かせた。
「嫌だ、やめろ」
退いていくカミュの腰を押さえ付け、無理矢理自身を突いた。
「アアァ−ーーーー−ッ」
「さっきみたいに悦がってみせろよ」
「・・・いや」
カミュの身体は貪欲にミロを飲み込んでいった。カミュ自身にもはっきりそれがわかった。
得られなかったものを求めるように、今までになく締め付けた。
ミロはカミュの膝を持ち上げて、上から覆い被さるように身体を揺らし始めた。
接合がより深くなる。ミロの胸板が自分の胸に付きそうだった。
「んあっ・・・」
「ああ、思い出した。患者には睡眠薬飲ませたんだ。いい声出せよ・・・」
「あっ・ん・・い・つか、こ、殺して、やるッ・・・ああんっ」
「最高だ」

その夜、激しく突き上げられ、翻弄されたカミュは何度も達かされ、ミロの前に肢体を広げて見せた。


それからというもの、ミロのプライベートルームに移されたカミュは、腰が立たなくなるまで毎晩抱かれた。
確かに、催淫効果は薄れた。
しかし、あの男の体を見ると、淫らな気分になってくるのはどうにも説明がつかない。
カミュにはわからないことが一つだけあった。
それは、ミロは最後まで行かないということだった。
「商品だから、か」
完全に慣れてしまわないように、ということなのだろうか。
今夜もそうやって抱かれるのだろうか?
しかし、その晩カミュには何事も起こらなかった。


ミロは迷っていた。
何だろう、この感覚は。抱いているうちに、だんだんカミュを手放せなくなってしまっている自分に気付いた。
早く売ってしまわなければ、帳尻が合わない。次の獲物を売ることもできない。
何より、堕ちていく自分。今まで、どの相手にも本気になったことはない。満足したこともない。
「この俺が?」
デスクに肘をつき、遠くを見ながら呟く。
「まさかな」


もう何日も抱かれなくなって、カミュは「そろそろ」時期が来たのだと思った。
「私を、買おうなんて思ってるのは、一体どんな奴だ?」
カミュの抑揚のない言葉。特別の感情も一切隠っていない声で聞かれた。
ミロは仕事中だったが、書類から顔を上げると、カミュを見た。
「・・・顧客の情報は一切教えない」
ぶっきらぼうに吐き捨てるように言った。とても機嫌が悪かった。
そしてミロは急に、思い立ったように、電話をどこかへ掛けた。
「ザイードを出せ」
どうやら自分の組織に掛けたようだ。
「この間話した家、買い上げて・・・いや、奪って来い!!」
少し間が開く。
「ああ、そうして構わん。早くしろ」
ミロは電話を切った。
カミュと目を一切合わせず、仕事を再開した。
カミュはただ、その様子を見つめるだけだった。



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2000.7.9
月下