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「んっ、あぁん、いや・・・だめ・・・はあっ」 「何がだめなんだよ・・・」 ミロは、頤を仰け反らせて蛇のように動くカミュを見て呟いた。 「はぁっ・・・んあぁぁーーーーきっ、来て!!早くッ」 「・・・」 カミュの言葉通りに動こうとしていた自分に気付いて、ミロは我に帰った。 「普通、自分からは言わないな」 指だけで達かされたカミュの身体には、もう力が残っていなかった。カミュは目を閉じて、余韻に浸っていた。 ミロは指を抜こうとした。そのちょっとの仕種に、カミュは反応してくる。 「あ」 「何だ、まだやれって言うのか?」 強烈な催淫物質が身体の中に残っている限り、カミュは満足することができなかった。欲望の火は消えるどころか、爆発してしまった。 「それ以上声を聞かれてもいいって言うならな」 ミロは意地悪く笑う。 カミュは思い出して後悔した。さっきはあんなに大声を出して・・・。 「それは・・・嫌だ」 「自分から誘っておいて今更だな」 気付いた時には、ミロは服を脱ぎ捨て、何も纏っていなかった。 初めて見る、この男の体。引き締まって鍛え抜かれた筋肉が、カミュには痛かった。 ミロはカミュの腰を浮かせた。 「嫌だ、やめろ」 退いていくカミュの腰を押さえ付け、無理矢理自身を突いた。 「アアァ−ーーーー−ッ」 「さっきみたいに悦がってみせろよ」 「・・・いや」 カミュの身体は貪欲にミロを飲み込んでいった。カミュ自身にもはっきりそれがわかった。 得られなかったものを求めるように、今までになく締め付けた。 ミロはカミュの膝を持ち上げて、上から覆い被さるように身体を揺らし始めた。 接合がより深くなる。ミロの胸板が自分の胸に付きそうだった。 「んあっ・・・」 「ああ、思い出した。患者には睡眠薬飲ませたんだ。いい声出せよ・・・」 「あっ・ん・・い・つか、こ、殺して、やるッ・・・ああんっ」 「最高だ」 その夜、激しく突き上げられ、翻弄されたカミュは何度も達かされ、ミロの前に肢体を広げて見せた。 それからというもの、ミロのプライベートルームに移されたカミュは、腰が立たなくなるまで毎晩抱かれた。 確かに、催淫効果は薄れた。 しかし、あの男の体を見ると、淫らな気分になってくるのはどうにも説明がつかない。 カミュにはわからないことが一つだけあった。 それは、ミロは最後まで行かないということだった。 「商品だから、か」 完全に慣れてしまわないように、ということなのだろうか。 今夜もそうやって抱かれるのだろうか? しかし、その晩カミュには何事も起こらなかった。 ミロは迷っていた。 何だろう、この感覚は。抱いているうちに、だんだんカミュを手放せなくなってしまっている自分に気付いた。 早く売ってしまわなければ、帳尻が合わない。次の獲物を売ることもできない。 何より、堕ちていく自分。今まで、どの相手にも本気になったことはない。満足したこともない。 「この俺が?」 デスクに肘をつき、遠くを見ながら呟く。 「まさかな」 もう何日も抱かれなくなって、カミュは「そろそろ」時期が来たのだと思った。 「私を、買おうなんて思ってるのは、一体どんな奴だ?」 カミュの抑揚のない言葉。特別の感情も一切隠っていない声で聞かれた。 ミロは仕事中だったが、書類から顔を上げると、カミュを見た。 「・・・顧客の情報は一切教えない」 ぶっきらぼうに吐き捨てるように言った。とても機嫌が悪かった。 そしてミロは急に、思い立ったように、電話をどこかへ掛けた。 「ザイードを出せ」 どうやら自分の組織に掛けたようだ。 「この間話した家、買い上げて・・・いや、奪って来い!!」 少し間が開く。 「ああ、そうして構わん。早くしろ」 ミロは電話を切った。 カミュと目を一切合わせず、仕事を再開した。 カミュはただ、その様子を見つめるだけだった。 |