DEVOUR GAME





数分後、飛び出していった水夫が戻って来た。息を切らしながら叫んだ。
「おい!!ビルをどうした!!」
続けて閉じ込めた水夫も走り込んで来た。
「これを見ろ」
一同が振り返る。その水夫の手にはねっとりと人の血が付いていた。

カミュは何も答えない。まるでそれが当然であるかのように表情を変えなかった。
「この野郎っ」
一人の水夫が手をあげて殴り掛かろうとした。しかしそれはカミュを睨み続けていた
水夫によって妨げられた。
「待て」
他の水夫が彼を見る。
「もっといいことを思いついた」
そういうと水夫はカミュを見て、こういった。
「傷つけるには惜しい顔をしている」
もう一回口を開く。
「俺たち何ケ月も御無沙汰でな・・・」
水夫たちの目は取り付かれたようにカミュを見ていた。口は薄ら笑いを浮かべて・・・。
薄汚れた部屋に暗雲が漂い始めた。


時化は船を揺らす。


黒い影は獰猛に容赦なく攻撃し、傷つける。拷問にも似た行為は彼の体を確実に変化させた。
カミュの顔は苦痛に満ちていた。



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2000.5.27
月下