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「ルイ、実は・・・」 ある日、ミロはルイの部屋を訪ねると、相談をした。 「ドレスを、でございますか?」 「帽子と靴もだ」 ほ・・・これは。ルイは感心しながら主人の言うことを聞いていた。 ミロは少し照れくさそうに、さる高貴な姫君へのプレゼントについて話した。 「ですが、サイズが分かりませんと・・・」 「そう言うと思って、・・・借りて来た」 ミロは大事そうに抱えていた布を広げると、ドレスを見せてくれた。靴は外で裸足になった隙に借りるという、ほとんどくすねる状態で借りて来たという。良く靴を脱がせられたものだ。ほとんど子供の発想だと思いながら、ルイは若い頃の自分と姿を重ねて、少し微笑んだ。彼は興奮気味で立ったままの主人を座るように勧めた。 「お座りください」 「ドレスは早く返さないといけないんだ」 部屋の中央のテーブルに乗せられた姫のドレスを挟み、ミロとルイは向かい合っていた。ミロは椅子に半分も座ってはいなかった。 「ええ、分かっておりますとも。帽子も靴もすぐに作らせてご覧に入れます」 年若い主人の真摯な注文に、ルイは年の離れた自分の子供の注文のように大事に受け止めた。 「どういうデザインがよろしいのでしょうか。その方のイメージは?」 「彼女は白いバラのような人だ。無垢で純真で可愛らしくて美しいよ」 ルイは、他にも似たような形容詞をいくつも並べて目を輝かせるミロを見て、これは本物だと思った。願わくばこの恋が一生に一度の恋となりますように。この時代、恋愛が結婚に結びつくのは稀だが、主人だけは幸せになっていただきたい。 「宮中での舞踏会か晩餐会にお出になるのですか?」 「いや、この城に招待する。近々、舞踏会まではいかないがそういう催しをしようかと思う」 それだけ言うと、ルイはすべてを察して「分かりました」と答えた。 「それでは、お召し物はお預かりいたします」 「よろしく頼むよ」 ミロはルイの部屋を出て行く時、誇らし気な顔になっていた。 |