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カミュが気が付いたのは、翌朝だった。 「おはよう。良く寝てた」 目を開けると、ミロが覗き込んで来た。 「今日から一週間程休みを入れたよ」 「休みを?・・・会議があるのに」 「それはうまく調整しておいた」 カーテンを開けると、素晴らしい天気だった。木漏れ日がカミュの目を襲った。 「今日は天気だ。朝食の後、散歩にでも行かないか?」 二人は食事を終えると、林を歩いた。 落ち葉が歩く度に音を出す。ミロはあまり乗り気でなかったカミュの腰に手を回して歩いていた。 「冬の散歩っていうのもいいだろ?」 答えないカミュの頬に落ち葉をコソコソと当ててみる。 「くすぐったい」 カミュがしゃべるとミロは微笑んで、一歩前に出た。 「なあ、この向こうに栗の木があるんだ。取りに行かないか」 振り返ろうとしたとき、ミロは後頭部に痛みを感じた。目の前が真っ暗になって記憶が途切れた。 ミロは不自然な重さで目が覚めた。何だろう、この重量感は。 「!?」 ミロは自分の目を疑った。 そこには自分の身体の上に乗ったカミュがいた。 「お、お前とやってるわけじゃ無い・・・」 目を瞑って、唇を半分開いていた。 「男としての機能を使わせてもらっているだけだ・・・」 カミュの傍らには、昨日ミロが処置したテープが剥いであった。カミュは思い出したのだ。刺されたことを。 「は・・・あれに刺されてこんなふうになった・・・あっ」 「いい加減にしろ」 ミロはカミュの腰を掴み上げた。 「目を覚ませ、カミュ。あの蝉は、毒は無いんだ。インディオの迷信だ」 何かおかしいとは思っていたが、このせいだったのか。 「俺とやってるわけじゃないって言ったな」 「・・・ああ」 「来い!!」 ミロはカミュに服を正させると、無理矢理地下室まで歩かせた。 地下室にはビニールシートが掛けてある何かがあった。 「これは昨日、この家に押し入った盗賊さ」 ビニールシートを剥がすと、自分の部屋から持って来た、歯医者が使うセメントを出してみせた。 「こいつを死体のモノに注入したらどうなると思う」 カミュは目を背けていた。 「10分もせずに勃つ」 ミロは注射器を取り出すと、セメントを注入した。 「俺はお前の倒錯に付き合ってる暇はないんだ。こいつとやってろ」 「協力してくれたっていいじゃないか」 二人が言い合いをしている間に、死体に変化が現れた。ミロの言った通りに、勃った。 その様を見たカミュは、叫んだ。 「嫌だ!」 少しの沈黙の後、ミロが口を開いた。 「本当は怖かったんだろう?俺に優しくしてほしいんだろう?」 ガクガクと崩れるように、カミュは頷いた。 「お前が俺に刺青を彫らせた意味も分かってる」 カミュは少し顔を赤らめた。 「やっと俺のものになったっていうのを認めたのに、素直になれないんだな。言いたいことがあったらさっさと言っちまえよ」 ミロはカミュを抱き締めた。 「今日は何もしなくていい」 カミュの部屋に着くなり、そうミロは言った。 「何も考えるな。俺以外のことは」 カミュは少し笑ってみせた。 二人はその日、片時も離れることはなかった。 |