ケナフから“撤退” 高知県が予算化せず(共同通信ニュース速報)
「非木材紙の草ケナフ 結構ずくめは本当か」(東京朝日新聞)
ケナフから“撤退” 高知県が予算化せず 共同通信ニュース速報
高知県文化環境部は、木材に代わる紙資源で「環境に優しい」といわれるケナフの普及、啓発活動を1999年度限りでやめ、2000年度予算での計上を見送った。理由について同部は「運搬、保管のコストやエネルギー、廃液処理などを考えると、環境に優しいかどうか判断できない」としている。各地でケナフへの取り組みが始まる中での“撤退”は注目を浴びそう。
ケナフはアオイ科の一年草。大気中の二酸化炭素や水中の窒素、リンなどを大量に吸収するため、地球の温暖化や水の富栄養化を防
ぐ植物とされる。各地の小中学校で環境教育のために栽培されたり、紙は企業で名刺などに利用されたりしている。農水省は水田の転作作物などとして研究中だ。
高知県は99年度、五課でプロジェクトチームをつくり、284万円の予算で、情報収集や環境教育などに活用した。しかし2000年度は「現段階で製紙コストが高く、直ちに産業化に結び付く動きにならない。紙を漂白すれば廃液処理などで環境に負荷がかかる」などとして予算計上しない。産業振興面では、これまでの制度の枠内で支援する方針。
製紙会社でつくる日本製紙連合会(東京)によると、ケナフは収穫が年一回で一年分の保管庫が必要な上、木材より軽くてかさばるため輸送費が高く、木材の代わりにするのは現実的でないという。
環境庁環境保全活動推進室は「ケナフの木材代用について科学的な知見が蓄積されてから検討する。当面は再生紙の利用を優先させたい」としている。[2000-01-15-10:45]
◇ミニ時評◇(東京朝日新聞)
「非木材紙の草ケナフ 結構ずくめは本当か」
★★(企画報道室・清水弟)★★
自動販売機のコーヒーを買うと、紙コップに「森林資源保全のため非木材紙(ケナフ)を使用しています」と印刷されていた。
ケナフはアフリカ原産の一年草。茎の太さが四、五センチで高さ四、五メートルに達する。生育が早く、多量の二酸化炭素を吸収して地球温暖化防止に役立ち、水中のチッソやリンの吸収効果が高く水質浄化になり、製紙原料でもあるというから、結構ずくめである。
しかし、ケナフに疑問を持つ人もいる。大阪市立大の畠佐代子さんはこのほど、「アンチ・ケナフ」のホームページ(http://www.ne.jp/asahi/doken/home/charoko/kenaf/index.htm)
を開いた。
畠さんは河川敷や休耕田にすむカヤネズミを研究している。頭胴長五ー八センチ、体重七ー十四グラムと日本最小のネズミで、オギ、ヨシ、ススキなどに巣を作る。ケナフは日本の気候に合って生育が速く、耕作地のほか河川敷や空き地にも盛んに植えられているが、野外での生育データも不十分だから、「田畑のあぜや休耕田、河川敷の植物を刈り取ってのケナフ植栽はやめるべきだ」と主張する。
「ケナフの会」(広島県安浦町)や「ケナフ協議会」(東京都港区)のホームページをのぞくと、サミットが開かれるなど大変な活気だ。「自然環境を壊さないか」との質問には、「セイタカアワダチソウのような植生への影響力はないので、休耕田をケナフ畑にしてもいつでも元に戻せます」と答えている。
ケナフ協議会の稲垣寛・会長も「生態系への影響は、絶対ない。米国でも証明されている」と断言する。しかし、「琵琶湖のヨシの代わりにケナフを植える案がある」と聞くと、何もそこまでと言いたくもなる。
畠さんのホームページからは推進派のホームページにもリンクできる。