9月26日 「ケナフを植えないで」

私が参加しているMLで、少し前、ケナフという外来種の植物のことが話題になっていた。アオイ科の一年草で、成長すると4〜5m、大きいもので6mにも達するという、非常によく育つ植物だ。このケナフが、最近日本にどんどん移入され、あちこちで栽培されているらしい。

成長が早いため、CO2の吸収率がよい、繊維をパルプの代替品に使える可能性がある、ということで注目されているようだが、ちょっと待って欲しい。ケナフは本来日本の植物ではない。日本国内のあちこちに植えられたケナフの種子が飛散して、栽培地の外側に逃げ出したらどうなるだろうか。

栽培植物とは言っても、ケナフはダイコンやキャベツのように人間が手を掛けてやらなくても条件さえ合えば勝手に育つ、丈夫な植物だ。最近読んだ新聞の記事(朝日:8/31)によると、全国77校の小学校で栽培されていると言うことで、日本の土壌がケナフの生育に適していることは明白だ。下手をすると、今や日本の至る所で猛威を振るっているセイタカアワダチソウのように在来の植物を駆逐して、日本国内の本来の植生を、がらりと変えてしまいかねない。さらに、在来植物に住みかや食料を依存している野生動物も、生息場所を失い、絶滅の危機に立たされる。

私の調査地でも、セイタカアワダチソウがオギやススキを駆逐して、カヤネズミの生息地がどんどん狭められている。セイタカアワダチソウの葉は、縦に裂けないのでカヤネズミは巣作りが出来ない。また、一度根付くと地面に茎を縦横にはわせて、どんどん勢力を拡大する。地上部の高さは3メートルにも達して一帯を埋め尽くすので、他の植物が生える余地がない。地上部を刈り取っても、地下茎が残っているのでまた伸びてくる。調査地の近くの放棄水田では、オギがすっかりセイタカアワダチソウに置き換えられてしまった。

セイタカアワダチソウに限らず、一度持ち込まれた外来種を取り除くのは、不可能に等しい。北海道のアライグマ、日光のアカシカ、琵琶湖のブラックバス、奄美のマングース、枚挙にいとまないが、全て人間が持ち込んで、その結果貴重な資源や野生動植物に取り返しの着かない被害を与えた。小学校でのケナフの栽培は環境教育の一環らしいが、日本の豊かな自然を破壊する種をばらまいて、それが教育とは聞いてあきれる。町おこしの材料として考えている地域もあるようだが、10年先の地域の環境に及ぼす影響をしっかり考えているのか、はなはだ疑わしい。話題性や目先の利益に目を奪われて、子どもの世代に残すのは広大なケナフ畑だけ、っていうんじゃ、あんまり寂しいんじゃないの。