10月22日 小カヤニスト、大カヤニスト Part2
筑後川調査行には、京都哺乳類研究会&生物多様性ジャパンの川道美枝子先生も同行された。長年にわたり、研究と自然保護活動を両立して来られた方で、私にとっては、学ぶべき事ばかりの大先輩である。
駅に出迎えて下さった白石先生は、小柄で温和な雰囲気の方だった。私が大学院でカヤネズミの研究を始めて以来、白石先生の著作は研究のバイブルとして何度も繰り返し読んで来ただけに、お会いできた感激はひとしおだった。
その日の晩は、白石先生と晩御飯をご一緒して、哺乳類談義。と言っても先生方の思い出話を聞くのが楽しくて、私はつい聞き役に回ることが多かったのだが。
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白石先生と作者。 |
翌日は、朝から一日、白石先生のお車で筑後川のフィールドを案内していただいた。筑後川は熊本県の阿蘇から流れ出て有明海に注ぐ、流路延長143km、流域面積2860kmの九州一の大河川で、「筑紫次郎」との別名もある。
堤防から目にした筑後川は、ゆったりと流れる川幅400mくらいの大きな河川で、両側に幅数10mの河川敷が発達していた。しかし、残念なことに大部分はきれいに草刈され、公園やゴルフ場、牧草地になっていた。
中流域から下流域まで3ヶ所のフィールドを見学。台風で増水したために、河川敷のオギ群落が荒れていたが、それでも作りかけを含めて6個の球状巣を見つけた。残念ながら子どもは見つからなかったが、白石先生のお話では、秋の繁殖シーズンのピークは10月とのことなので、これからが楽しみだ。
筑後川の巣! |
下流部のフィールドは、汽水域からやや上流に位置する淡水域で、クロベンケイガニが生息している。白石先生は、以前カヤネズミを捕獲するためにトラップを仕掛けて、このカニがかかってびっくりされたそうだ(笑)。昼間はオギ群落で休息しているようで、私が巣を探してオギをかき分けて行くと、地面に朽ちて堆積した植物のすき間からごそごそと群をなして這い出してきて、面白かった。
このエリアでは天然記念物のカササギの群も見た(ちなみに外来種)。このあたりでは普通に見られるそうだが、私は野生のカササギを見たのは初めてで、つい見とれてしまった。
![]() 白石先生のご自宅にて。 |
見学を終えた後、白石先生のご自宅で、奥様の手料理をいただきながら、カヤ談義で盛り上がった。本棚には、白石先生にお送りした、「カヤ原の夢」(*)が置かれていて、とても嬉しくなった。本に登場する「大野川」は偶然にも九州に実在する川の名前で、より親しみをもたれたようだ。「サヨさん」の葛藤も、「同じ研究者として気持ちがよく分かります」と仰って、サヨさんのモデルを勤めた身としては、先生も同じご経験をされていたことを知り、安心すると同時に非常に勇気づけられた。
帰り際、白石先生に「これからも頑張って下さい。どんどん知見を積み重ねて、私がやってきたこと乗り越えて欲しい。新しい研究成果を読ませて貰うのが楽しみです」と声をかけていただき、恐縮しつつ感激だった。思わず、失礼を顧みず手を差し伸べると、両手でしっかり包み込んで握手して下さった。とても暖かかった。
しかし、思い返せば、舞い上がって、言わずもがなのことや、拙い自説をとうとうと披露してしまったような気がする・・・などとと反省しつつも、白石先生に「また是非遊びに来て下さい」と言っていただいたので、厚かましくも来年も押し掛けようと画策している。
大カヤニストが甚大な努力を払われて切り広げられた道をたどることを許された幸運に限りない喜びを覚えつつ、小カヤニストとしての誇りをもって、これからも歩んで行こうと思う。
*「カヤ原の夢」(杏有記著):主人公の小学6年生のひかりちゃんが、カヤネズミの研究者(畑さん)との交流を通じて成長していく物語。第6回盲導犬サーブ記念文学賞大賞受賞作品。
*肖像の掲載にあたっては、白石先生にご許可をいただいています。