因襲の余波(なごり)





葬られたことを知らない街
孤独な雑踏も無く
旅人さえ思い切る
眠りの深い街だから
人々の朝は早い




一番大切なものは
自分の持ち物
与えることで潤うのを知らず
しっかりと握りしめて離さない




あんまり爪を立てすぎて
バラバラに千切れる市松の手足のように
あんまり奥へ仕舞いすぎて
青黴に(まみ)れている西陣のように




振り捨てて
振り返ることが思い浮かばず
いとも容易(たやす)
残心を砕く




持ちものが
いつも必ず
そこに眺めていられるならば
口角を捻り
歯を見せず
笑う




不憫な継続の
安心を手元に置いて
私財(たから)を守り
排他を守り
(ひしめ)き合って王城が成る




笑顔の底の
黒い淵が
あちら こちらで
(ぬし)を飼ってる



 

 

 

Kyoto
Photo by Shido Isana

 

 


prev poetry next