深夜の似顔絵師





今日が終わる
もうすぐ終わる
零時からまた始まる今日の続き
座れない椅子を目指して
地面に座る




人々の顔を描いて
はい ワンコイン
ありがとう ありがとう
これで一缶のビールと
 ホットドッグにありつけます
椅子に座ったお皿が無くとも
今日もあたしは生き延びる




通り過ぎて
通り過ぎて
幾人かの人達と
縺れ合って傾れ込む




時々
振り返って戻って来てくれる人に
あたしは座れない
この椅子を捧げる




媚薬を飲んでる
昼間と違う顔を持ってるあなたが好き
その一夜の面相を写して
その背負った昼間を一時感じる
あなたがそこに居たという
証を写し取りながら




いつも決まって
また夜は明けるけど
道端に散らばる
華やかな時の終わりの証拠の品を
横目に見て
その時あなたは笑うのか




それともやっぱり
絢爛の続きを捨てられないのか
ただの眩暈(めまい)
目映いばかりの華燭と信じ
それを捨てられないのか
その椅子を捨てられないのか




そうして夜も
またやって来る




あなたの昼間が
どこかでしっかりと
受け止められていますように
あたしはそう祈りながら
あなたの夜をチャコールで染める




どこかでしっかりと受け止められる夜
もしもそんな夜が欲しいなら
あたしを探すあなたがいてもいい
あたしはすぐに見つかるはず
あたしは地面に座ってるから




 

 

 


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