平成17年12月旭川支部定例研究会報告
テーマ 〜プラーナを考える「ヨーガ入門」〜

大村 和彦

日 時    12月3日(土曜日)
会 場    講演会 午後6時 旭川市5条4丁目「旭川市ときわ市民ホール和室3」
ヨーガ講師 荒井千恵子先生
会 費    無  料
忘年会   午後7時30分 旭川市5条6丁目「とんかつ井泉」(会費 5,000円)
出席者   16名

18;00  「長生医学におけるヨーガ研究の意義」 大村 和彦

新長生医学書には「プラーナの起源はインド哲学にある」と明記されていますが、ヨーガもまたインド哲学を起源とします。ここで言うインド哲学とはアーユルヴェーダを指すものと考え間違いないと思われます。

アーユルヴェーダとは

インダス文明が衰えた紀元前1,500年頃、北西インドに白色系遊牧民族のアーリア人が侵入しました。彼らは先住民族を追いやり、支配体制を確立させるため階級制度を設けました。これが悪名高いカースト制度のルーツです。そして紀元前600年頃にかけアーリア人は自分たちの道徳、宗教、文化、医学などの知識を集め、サンスクリット語で知識の意味を持つヴェーダを編纂しました。これが聖典となりバラモン教という宗教形態が大成されたと伝えられています。

「知識の泉ヴェーダ」から生まれた医学体系アーユルヴェーダは生命に関する知識という意味を持ちます。つまりアーユルヴェーダには医学だけでなく、科学、宗教、哲学も含まれていることが分かります。

バラモン教は後に、インドの総人口の8割を占めるヒンズー教という一大宗教になりましたが、ヒンズー教は単に民族宗教という枠に収まらず、インドの文化、生活、社会制度を含んだインド人の心として定着しているといわれます。


長生医学とアーユルヴェーダの接点
仏教もバラモン教の影響を受けていることは明らかです。しかし釈迦はその差別的階級制度を批判し「誰もが悟りを開く事が出来る」独自の思想を展開し下層階級の支持を集めましたが、なぜかインドでは衰退し、スリランカやタイなど南方と、中国や日本など北方へ流失しました。こうした歴史的背景から、浄土真宗も仏教と共にインド〜中国を経て日本に伝えられたバラモン教思想を受け継いでいることは明白です。

また、病気は身体、心、プラーナの調和が乱れた状態と考え、身体の持つ恒常性(ホメオスタシス)を取り戻すことを目的としたアーユルヴェーダの考え方は、長生医学の基本理念を構築する土台になったものと思われます。また患者さんひとりひとりの体質に合わせたオーダーメイドの治療により心身の調和をはかり病気を予防するという手法も長生医学の治療理念と共通します。

したがって長生医学の根本理念がアーユルヴェーダという古代インド哲学と共通していることに何の違和感もありません。それどころか3000年前の古代インド哲学まで精通していたと思われる長生上人の慧眼に敬服するばかりです。

 

アーユルヴェーダとヨーガ

アーユルヴェーダの治療プログラムは「呼吸訓練」「マッサージ」「食事療法」「薬草」「体内洗浄」「運動」など多種に渡りますが、こうしたプログラムに基づいた訓練法のひとつが「ヨーガ」です。

ヨーガは古代サンスクリット語で「調和」を意味し、身体と心とプラーナの調和を目的とする訓練法です。適切な「呼吸法」と「体位」により意識の次元を高めるのですが、ヒンズー教の修行者が一種の悟りを開くための霊的修行として用いた瞑想が本来の姿です。

しかし欧米では精神的成長というより、フィットネスやリラクゼーションなど、身体の健康や心の癒しといった副産物的目的で用いられる事が多いようです。

 

ヨーガの科学的研究
ヨーガの科学的研究も近年急速に進んでいます。
ヨーガにより、呼吸数や血圧が降下することや、心臓の働きが適切な状態に向かうこと、脳波がアルファ波になり、皮膚電気抵抗が増すなど、ストレスが緩和しリラクゼーション効果をしめす生理的変化が身体に起きることが実験的に証明されていることが文献にあります。

アメリカでは多くの医師が心臓病、喘息、糖尿病、アルコール依存症や薬物依存症などの治療にヨーガを取り入れているようです。ごく最近でも関節リウマチの炎症反応減少が科学的に確認されるなど、ヨーガの副産物として健康への効果が年々注目され、補完療法として確固たる地位を確立しています。

またマドンナ、ジュリア・ロバーツといった魅惑的なルックスを有するハリウッド女優が挙ってヨーガを実践していることから、アメリカや日本で効果的なエクササイズとして一大ブームを巻き起こしているのは周知の事実です。

 

長生医学とヨーガの共通性
長生医学とヨーガは、実践的には「呼吸法」で深い関わりを持ちます。

新長生医学書には「完全呼吸法」「リズム呼吸法」「プラーナ振動法」がプラーナ吸収法としてインド哲学より伝わったと紹介されています。確かにこれらのプラーナ吸収法はヨーガの有力な呼吸法と一致しており、呼吸法によりプラーナが育つという認識も同じです。

アーユルヴェーダの根本は「瞑想や宗教的内省により宇宙の意識を理解した人々の永遠なる知恵」にあるといわれますが、長生上人も「自分の心の中の根源的自我を聞くことが大事である」と言います。

更に「霊肉救済は、み仏からプラーナという人間の力を超えた不思議なお力を与えられなされる」と、宗教的内省により覚醒したご自身の体験をもとに、プラーナと心の関係性を説かれています。(新長生医学書P28)

ヨーガの宗教性とプラーナは、長生医学におけるプラーナの概念と起源を同じくし、ヨーガの医学性は長生医学の3本柱と一致します。こうしたことからヨーガはある意味「霊肉救済」を実践しているといえるかもしれません。ヨーガを研究することは、長生医学のルーツに目を向けるという大いなる意義があると考えます。


18:30 公開講座 「ヨーガ入門」  講師  荒井 千恵子 先生

<ヨーガを受講する上での心得>

  • 無理をしない。頑張り過ぎない。
  • 優しくいたわるように。
  • 複式呼吸で、脱力(弛緩)とポーズ(緊張)を繰り返す。
  • 自分の身体に語りかけるイメージで。
  • 意識を身体の内面に働かせ身体と心を調和させる。

<ヨ−ガの基本ポ−ズ5本柱>

前に倒すポ−ズ   脇を伸ばすポ−ズ   反らすポ−ズ
ねじりのポ−ズ   立位でバランスのポ−ズ

「頭から宇宙に向けてアンテナを伸ばしましょう」
「気持ちを集中して、丹田にプラーナを集めましょう」
「呼吸は鼻から吸い、鼻から吐き、横隔膜を動かしましょう」


           

19;30 忘年会 
北川先生の乾杯に始まり、黒豚しゃぶしゃぶと名店井泉のフルコースを満喫。講師の荒井先生を囲み宴は賑やかに進みました。

21;00 解散
大村先生に講評を頂き解散。一同2次会へと向かいました。

<後記>
12月の旭川支部定例研究会は公開講座の形を取りました。
札幌、長沼、滝川、深川、美瑛など遠方から一般参加の方を含め、ヨーガに関心を持つ大勢の方が参加されましたが、皆さんヨーガは初体験ということもあり、ヨーガの基本形を紹介していただく形で講座は進行しました。

最初は要領がつかめず苦戦苦闘していた会員も、講座終了直前に見事なY字バランスを決めるなど、講師から「さすが!」とお褒めの言葉を頂きましたが・・・正直なところ私たちの柔軟性はヨーガ教室に入会する方を標準に見ると平均以下なのだそうです。

プラーナ育成を目的とした企画でしたが、患者さんの健康管理を仕事としながら、自分たちの体は管理出来ていない長生医学師の実態が計らずも明らかになりました(笑)

ともすれば見逃しがちな自分たちの健康管理に、長生医学と起源を同じくするヨーガは極めて有効な健康法として見直す必要があるのではないでしょうか。患者さんだけでなく、自分たちの身体に語りかけ身体と心を調和させることも必要だと改めて感じた研究会でした。


日本長生医学会旭川支部  大村 和彦

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