人が死にたくなる時 : 大村 まや

 

もうすぐ夏休み!という楽しい気持ちが、一気にしぼんでしまう新聞記事がありました。今年も自殺者が3万人をこえたのです。残念な事に今年の自殺者は、去年、私が意見発表文を書くため自殺について調べた数を上まわっていました。泥沼といわれたベトナム戦争でアメリカは十数年間で5万8千人あまりの命を失いました。しかし、平和な日本はこの2年間で6万人以上の人が自ら命を絶っているのです。

去年の私は自殺する人の気持ちがよく分かりませんでした。でも、今年はその気持ちが理解出来ました。自分は清潔にしているのに「臭い」「汚い」と言われたり、一生懸命書いた自己紹介文をバカにされたり、学校でそんな事が毎日のように続き、悲しくて「こんな辛い思いをするくらいならいっそ死んでしまいたい。」と思ったのです。でも私は死にませんでした。それは先生や友達、母の励ましがあったからです。

父が「動物は生きるための強い生存本能があるからが自殺しないんだよ。でも人間が自殺するのは、動物本来の生きる本能より、もっと強い本能があるからなんだ」と教えてくれました。その強い本能をアドラ−という心理学者は「所属の本能」と呼んでいるそうです。分かりやすく言うと、人とつながりを持つ本能だそうです。つまり人間は、人とのつながりに失敗し、社会に受け入れてもらえない、社会に必要ないと感じた時、自殺を考えるというのです。なるほど、新聞に載っていた自殺の理由をみても、病気や借金、リストラで社会とのつながりを無くした人ばかりです。「もし自分が死んだら、皆、ショックを受けて自分のことを思い出すだろう」そう考えるほど、人はつながりが失われると、気持ちが追いつめられるのだそうです。私が死にたくなった理由も、一部のクラスメイトの心ない言葉で「自分はクラスという社会からのけものにされている」と感じたからです。

しかし「自分は社会に必要とされていない」というのは、自分ひとりの思い込みなのです。人は一人ぼっちになった時死を考えるというけれど、死んだら本当の一人ぼっちになるのではないかと私は思います。私に友達や先生がいたように、本当に一人ぼっちの人なんていません。必ず必要としてくれる人がいるのです。雑草だって地球の生態系を支えるという大切な役割があるように。


第31回 毎日新聞社中学生作文コンク−ル 毎日新聞社賞
平成15年旭川市立北都中学校「北都っ子の集い」意見発表大会 最優秀賞


「評」:
自分の周囲の小さな人間関係より、もっと大きな社会に、さらに大きな地球という生態系に所属していると考えることで自分を強めていけると筆者は説く。適切な助言を与えられるお父さんの存在もすばらしいと思う。

 

賞をもらって:
この作文を通して私は「自殺はとても身近なもの」ということに気付きました。そして人を自殺に追いやるものは「孤独」だということがうっすら見えてきました。

中学生の私がこんな難しいテ−マに取り組むなんてちょっと生意気かもしれません。でも本当に一人ぼっちの人なんて決していないと思います。今年新聞を開いた時、自殺者が一人でも減っていることを願います。立派な賞をいただきありがとうございました。

大 村 ま や  プロフィ−ル

1989年12月29日生まれ(山羊座のへび年・・変ですか?)
旭川市立知新小学校を経て、現在 旭川市立北都中学校3年在学中

趣  味: マンガ作り(獣人もの)
特  技: 絵画「道民家庭の日絵画コンク−ル 北海道知事賞」
「電波障害ポスタ−コンク−ル 奨励賞」
「第39回 旭川児童生徒絵画展 北海道新聞社賞」
「第41回 旭川小、中学生版画展 旭川市教育長賞」
その他
好  物: イチゴ、手羽先(特に骨髄)、北京ダック(まだ一度しか食べた事がない)
嫌  い: うるさい男子、怒った母
好  き: アニメのカッコイイ男の子(犬夜叉、カイザ−・・いけませんか?)
将来の夢: 伊藤健太郎さんみたいな声優

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