後ろ歩き健康法 : 大村 和彦
筆者と愛犬

探し物をしていると、引き出しの中から撮りかけのビデオテ−プを発見しました。

幼稚園の運動会が映っています。園児達のお遊戯を撮っているカメラが、一人だけ踊らず突っ立っている子を意地悪な視線でズ−ムしています。「どこにも一人くらい居るよなぁ、こんな子が」自分が撮っていた事も忘れ笑いながら見ていた目が点になりました。画面一杯アップになったのはなんと我が娘。事もあろうに両手で必死に鼻クソをほじっているではありませんか。驚きのあまり当時の記憶が鮮明に蘇りました。

印象に残った競技がありました。父兄参加の「後ろ歩き競争」です。

徒競走ではトップの人がなんとビリ。やはり勝手が違うようです。

しかし不思議なのは、後ろ歩きという不自然な歩き方にも関わらず、後方に進むという不自然さを除けば、誰もがとても良い姿勢で歩いているのです。

通常の歩行は、最初に「かかと」を地面に着けバランスをとり、爪先を蹴り出し前に進みます。ところが後ろ歩きは、爪先を最初に地面に着けバランスをとるためとても歩きにくいのです。おのずと一歩一歩踏みしめるように後ろに足を送ります。その結果、足で地面を確実に捉えるため自然と姿勢が正されるのです。

プロのモデルさんやスチュワ−デスさんは、良い姿勢が身に付き、足首やふくらはぎの筋肉が引き締まるので、あえて後ろ歩きを練習するそうです。また、後ろが見えないため神経を集中するので、短時間でも効果が上がります。慣れない運動なので長時間はむしろ逆効果。ウオ−キングの合間などに取り入れてみましょう。

運動はちょっと汗ばむ程度を目安としてください。この時、脈拍は1分間に120回前後になります。心臓に病気がなければ、せめて一日1回これくらいの負荷は身体に必要です。

「横歩き」も良い運動です。後ろ歩きとはまた違った筋肉が使えます。こうした変則歩行は手軽な健康法として当院でも大いに奨励しています。

そうそう、ビデオに見入って忘れていたのですが、私は一体何を捜していたのでしょう?もしかすると、遠ざかる秋の後ろ姿だったかも・・・な〜んちゃって!

 


北海道新聞地域情報誌 せせらぎタウン「健康ひとくちメモ」に連載
 平成8年10月 第58号

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