大門誘拐事件
住めば都といわれるが、不思議なもので富山に移り住んで2年
カルチャーショックの連続だった私だが、ここの暮らしにも随分なじみ、
田舎もたまにはいいものだと思えるようになってきた。
それなのに近所で強盗誘拐事件が起こり、非常にショックだった。
先祖代々この土地に住み、ご近所はみな顔なじみ、ささいなことでも
あっという間にうわさが広がるこの村で、信じられないような話である。
事件当初はマスコミ関係の人が殺到していたようだ。
いろいろ聞かれても面倒くさいので、私は騒ぎが落ち着くまでは
家から一歩も出なかったが、刑事さんが頻繁に訪ねてきていた。
このあたりの認識としては都会は治安が悪くて怖いところだと思っている人が多いが
私に言わせると、田舎のほうがよっぽど怖い。
確かに大阪は事件が多く、テレビだけだと怖いと思っても仕方が無いが
事件が起こったとしても、あまり身近には感じない。
治安が悪ければ悪いなりに、それを防ぐ手段があるし、
危険を回避することができるのである。
子供の頃から自分の身を守るということを教わるので、
なにか事件に巻き込まれたり、危険な目にあうとすれば、その教えを破ったときだろう。
私がショックを受けたのは、もちろん近所ということもあるが、
被害にあった人を直接知っているので他人事には思えなかったからである。
「治安ええんが田舎の良さちゃうんかー」と叫びそうになった事件だった。
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