富山便りvol-13


 

本家と分家

私の実家は典型的な核家族である。

高度経済成長に伴い作られた団地で大きくなったので

家のしきたりとか、土地柄などというものとはほとんど無縁で

そういうことがあるということは認識していたが、実感としてもったことがなかった。

私には関係ないものというのが本音である。

ところが、去年の年末にだんなの弟のお嫁さんが交通事故で亡くなり

いきなりお家制度が肩にのしかかってきたのである。

自分のことは自分でする他人に迷惑をかけないむやみに人に頼らない

この3つは私の実家の家訓である。たとえ家族であってもである。

私の弟は

男はひとりでも生きていかなくてはならない、いつまでも親に頼るんじゃない

と結婚もしていないのに家から出され一人暮らしをしている。

父方の祖父は父が赤ん坊の頃に亡くなっていて

祖母は父を実家において再婚したので、父には本当の兄弟がいない。

母には兄弟がいるが、本家とか、分家とか関係なく

母方の祖父と祖母は祖父が死ぬまでは二人で暮らしていて

祖父が死んでからは祖母を次男と三男が交互に面倒をみている。

兄弟対等なのである。

そんなわけで私には本家とか分家とか言われてもピンとこないのである。

わずらわしい親戚関係をまったくといっていいほど経験していないので

富山に来てからは頭をひねることばかりである。

最初に「富山にきたからにはここのしきたりに従ってもらわなくては困ります

と言われていれば「じゃぁ、務まりませんので縁を切らせていただきます」と

私が言うことがわかっているのか、誰も無理強いはしないので

やっぱり「私には関係ないもの」と思っていたが義妹がなくなって

そうはいかなくなったようである。

聞くところによると本家というのはとことん分家の世話をしなければならないらしい。

例えば弟のおよめさんなのだから、弟が中心となってやるのが当然だと

思っていたが、このあたりでは本家になる親と兄とで取り仕切るのが常識らしい。

誰の嫁さんなんだ?と頭をひねってしまうのである。

富山の風習は私にとってシリアと同じくらい理解に苦しむものなのである。

 

 

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