スークジュマ


 

うちの近くのスークは庶民的なスークで大阪でいうところの

黒門市場みたいな感じで活気もあるし、品物も新鮮で安い

ジュマというのは金曜日という意味でイスラムでは休日を意味する。

金曜日は通常どこも休みなのであるが、そこは金曜日でも開いていた。

日常に必要なものはなんでもそろったし、観光客や外国人も

ほとんどいないので、スレた商人にボラれるということもなかった。

シリアにも高級住宅街と呼ばれる地域があって、

日本人をはじめ大使館関係や商社関係の外国人はたいていそこに住んでいたが、

協力隊員は経費の問題や職場との兼ね合いなど、いろいろなことが重なっていて、

そういう地域(高級住宅街)に住んでいる人は少なかった。

私もそのうちの一人で、私の家は本当に庶民が住む地域にあった。

そのためにスークで働く人たちは普段外国人、しかも東洋人の女を見たことがないのか、

ただ歩いているだけで注目の的だった。

シリア人にはシリア人の価値観というか、イメージというものがあるようで

東洋人でもパリッとした正装をしているのが日本人で、

それ以外はどっかのアジアの国の人という感じだ。

偏見もはなはだしいが、私はいつもTシャツにジーンズというスタイルだったから

日本人に見られたことがほとんどなく、日本人だというとへぇーという顔をされた。

スークに入っていくと、どの店も

「トゥファッダリ(どうぞ)」

「シューラーゼム(何がいる?)」

「ターイラホン(こっちへおいで)」

と呼び込みしてくる。

最初の頃はどの店でも「シーニー(中国人)?コーリー(韓国人)?」と聞かれ

「ヤバニーエ(日本人)」というとへぇーという顔をした後、人懐こい顔になった。

そのうち、慣れてきたのか騒がなくなったし、いきつけの店も決まってきた。

市場はいろいろ行ってみたが、食料品はジュマが一番いいような気がする。

なんといっても新鮮で安くておいしいのが魅力だった。

引越しをした後、ジュマが遠くなったのが一番残念だった。

ハミブラ(スークハミディーエをぶらつく)も好きだったが

ジュマブラ(スークジュマをぶらつく)には別の楽しみがあった。

ハミブラをすると観光客目当てのウザイ客引きがいて、時々うんざりしていたが

ジュマブラは何よりも庶民のスークなので、値段も書いてあるし、

安心して買い物ができた。

おまけに一人暮らしなので大量には要らないときなど、一個だけ欲しいというと

「もってけ」とおまけでくれたりすることもあった。

スークジュマはシリアの思い出の中でも深く印象に残っている場所のひとつである。

またいつか行ってみたいものである。

 

 

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