スークでお買い物


前にも書いたが、スークというのは市場のことである。

語学研修のときに先生に連れて行ってもらったスーク・ハミディーエは観光客も多く、

日用品を売る店もあったが、みやげもの屋やアクセサリーを売る店などがたくさん立ち並び、

ハデな印象だった。(なかでも金スークには釘付け

それに比べスーク・ジュマは庶民のスークだけあって、食料品や日用品を主に扱っている店が多かった。

しかも安い

ハミディーエにはハミディーエの良さがあったが、ジュマ(金曜日=休みの日)という名前の

このスークも大好きになった。

今は外貨獲得の為、観光客の受け入れに力を入れ、外国人が割と簡単に入国できるように

なったようだが、私がいた当時は湾岸戦争直後ということもあってか、シリアにいる外国人は少なかった。

特にこのあたりは、本当に庶民の住居エリアだし、日本人の私は動物園の珍獣並

珍しかったようで、スークに行くと、店のほとんどの人が舐めるようにじーーーーーーっと

見るか、話しかけてきた。

(後に彼らの舐めるような視線で見られることを視姦と呼んだ)

しかし、話しかけられても、アラビア語がまだほとんどわからなかったので

しどろもどろになってしまい、買い物どころではなかった。

言葉が通じない、しかも習慣や文化が違うというのはアドレナリン大放出という

状況に落ちいる。あうあうと言葉がでずにオットセイ化してしまう。

そんなんだからよけい人が寄ってきてしまうのである。

スークでの買い物は基本的に量り売りである。

お店に天秤ばかりが置いてあって、はかりの片方に錘、片方に品物をのせるのである。

私は大事なことをまだ覚えていなかった。

それは、ものの単位である。

はかりの単位はキログラムなのであるが、ヌスという言葉とルバという言葉を覚えていなかったのである。

ヌスは半分、ルバは三分の一のことである。

この時の私にとって、最低の単位はイチキロだった。

じゃがいも、にんじん、たまねぎ、ピーマン、鶏肉、米、すべて一キロずつ買ったが

これらはまだよかった。

消化できる量である。

しかし、紅茶が飲みたかったので、紅茶の葉も欲しかった。

しかし、私の知ってる単位は1キロなのである。

後から考えると、家のすぐそばなのだから、ちゃんと単位を覚えてから買ってもよかったのに

飲みたいという欲求に勝てず、何種類か置いてある葉を指差して

「アティーニ、キロ(1キロちょうだい)」と言ってしまったのである。

当然、ものすごい量になってしまった。

店のおじさんが、秤に1キロの錘を載せ、反対側にビニール袋を置き、

紅茶の葉を入れ始めたが、それを見ているだけで、気が遠くなりそうだった。

こんなに飲めるのか?誰がこんなに飲むねん!どうすんねん密閉容器もないのに!

そう思ったが、紅茶を水代わりに飲んでると、案外消費できた。

シリアは乾燥しているので、葉が湿るということもなかった。

買ったものあわせて、全部で7キロ。

他にも欲しいものはあったが両手がちぎれそうになってきたので

家に帰る事にした。

 

 

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