アラブのI・B・M
アラブの特徴にI・B・Mというものがある。
これはインシャァッラー、ブクラ、マーレシュの頭文字で
インシャァッラーは神のみぞ知る、ブクラは明日、マーレシュは気にするな
というのが直訳である。
インシャァッラーはけっこう有名だが、この3つを正しく理解しないと
はらわたが煮えくり返るような思いをする事になる。
数々の痛い目にあいながら私なりに考えた意味は
インシャァッラー=一種の社交辞令。その気はあるけどあまり期待しないでね。でも努力はするわ。
ブクラ=とりあえず今日は無理。明日できると良いんだけどね。
マーレシュ=悪気はないのよね。怒らないでね。笑って許してね。気にしないでね。
という感じなのではないかと思っている。
マーレシュは特にくせものである。
すぐに「ごめん」とか「すみません」とか言ってしまう日本人にとって
場合によっては殴り倒したい衝動にかられることもある。
マーレシュを英語に直すとDon't Worryらしい。
相手をなぐさめるときに使う言葉で、直訳するとやっぱり気にするな
ということになってしまうが、これを時として加害者が使うのである。
私は仕事の為に日本からエアロビクスのレッスン用のテープを持って行っていた。
シリアでは手に入らないだろうと思っていたからである。
ある日、いつものようにレッスン前にテープをセットして生徒と喋っていると
何を思ったのか、生徒の一人が録音ボタンを押してしまったのである。
気づいて「あぁーーーーーーーっ」と叫んだ時にはすでに遅く
テープの最初が消えていた。
たいした事ないと思うかもしれないが、このテープは片面がすべて継ぎ目なしに作られていて
最初の部分と言うのはレッスンを盛り上げるためにカウントを取っていく部分なのである。
そのテープがガヤガヤガヤ「あぁーーーーーーーっ」
という雑音と私の絶叫入りの間抜けなテープになってしまったのである。
「マーレシュ」録音ボタンを押した生徒が私の肩をたたきながら言う。
それはこっちのセリフちゃうんかー
と叫びそうになったのは言うまでもない。