カンボジア ダイビング紀行

12月29日(水) 曇のち晴

朝7時に起きて、部屋の窓のカーテンを開けたら、なんと空が灰色になっていた。そんなのありかよ。17日からずっと晴れだったのに、今日初めて太陽が見えない曇りとなった。
海で泳ぐ日に曇りとは。。。
曇りならやっぱりダイビングをした方がいいな。
曇りでも気温27℃位だが、乾季で湿度が低くて蒸し暑くなかった。
ホテル近くの中華系レストランへ行って、朝食(フランスパン、オムレツ、肉まん、コーヒー)をとった。肉まんの中にゆで卵が入っていて珍しかったけどなかなか美味い。ホテルに戻って、水着に着替えて、マスクとダイブコンピュータとCカードとログブックを入れながら手荷物を用意した。

8時半にホテルのロビーへ行って、「Claude」の方を待った。
5分位経つと、古くてあちこち凹んでるバンの車が来て、運転席から身長175cmある体がスマートで、半分白髪で覆った灰色っぽいショートヘアで、眼が青くて、渋い顔をした外人が現れた。
その外人が、手でレギュレーターをかけるしぐさを表しながら、英語で、
 「ダイビングする方は、君達ですか?」
と尋ねた。
この外人が「Claude」だ!とすぐ反応し、思わず手でレギュレーターをかけるしぐさを表しながら
 「はい、私です。ダイビングを申し込んだ私です。」
と答えた。Wは、すぐその外人と握手しながら「よろしく」と言った。
カンボジア人でないと分かり正直ホッとし、なんだか信頼できそうな感じで握手を交わした。
この外人は、フランス人で、「Claude」の店の名前通りクロードという方で、ダイビングインストラクターをつとめている。年は40代位で、似ている俳優といえば「アラビアロレンス」のピーター・オトゥールかな。
他にお手伝いさんのカンボジア人若い女性と一緒に来ていた。
クロードの車の後方席、トランクまでタンクや器材など荷物が詰めていた。
そのため、俺とWはその車に乗れないので、バイクタクシーに乗ることになった。
クロードが1台のバイクタクシーを呼んでカンボジア語で行き先を告げてくれて、俺とWはバイク運転手の席の後ろの席に座るという3人乗りの形になった。バイクは125ccのスクーター。ヘルメットなしで乗るので、頭から倒れないように席についてる鉄バーをしっかりとつかんだ。
バイクタクシーでホテルから3km先の港へ向かった。
ノーヘルでバイク3人乗りってハラハラドキドキしたというより、走るたびに涼しい風に当たって快い気分だった。
港のボート乗り場に着いて、バイクから降りて運転手にタクシー代を聞いたら二人で4$。2$が相場なので4$とは高い。3$まけてくれとお願いしても何度も「ノー」と言われたので、仕方なく4$払った。
ボート乗り場に、俺とWの他に外人7人いた。ほとんどカップルだが、男は欧米人のような白人、女はカンボジア人という組み合わせなのでちょっと変。1日女性をレンタルして付き合っているじゃないかな?と思った。
その外人達はシュノーケリングの目的であるが、他に体験ダイビングする外人カップル1組(男は欧米人?女はカンボジア人)がいるので彼らと一緒にダイビングすることになった。
ボートはどんな形かと期待したら、なんと木で作ったボロい屋根つきのボートだった。まるでボートピープルが使うボートみたいだ。航海中に木のデッキが壊れて水があふれて沈没しそうな雰囲気だった。ボート運転手は、なんと13歳位の少年2人。ボートに国際A旗のダイビングフラグがついてなかった。なんだか漁船いや密輸船に乗った気分だった。
クロードがタンクと器材をデッキに運んでいる様子をみても、私達は本当にダイビングに出かけるのかまだ実感できなかった。

ボートの中
そして、ボートが出航した。しかしボートのスピードがとても遅い。ノロノロしながら揺れている。10km位先にあるロン・サムロエン島へ向かうと聞いて、ボートからその島が見えたが、スピードが遅いのでなかなか大きく見えない。まあ、ここはカンボジアだから設備がおくれているんだと思い込んで、イライラせず、のんびりと海景色を眺めた。
しばらくすると、クロードにCカードを見せてと言われたので、Cカードを見せた。そしたらクロードが笑顔で
「潜れるよ。大丈夫だよ。」
と握手してくれた。これでクロードに信用しても大丈夫だろうと思い安堵感となった。

ロン・サムロエン島のビーチ
2時間かかってロン・サムロエン島に近づく頃に、曇ってる空に太陽が見えて、ますます晴れてきた。
やったぜ!
ロン・サムロエン島に近づくと海がエメラルドグリーン色と変わり、南の島らしい雰囲気が漂ってきた。ロン・サムロエン島は家があまりないジャングルだらけの島で、無人島ような感じ。
家、店も何もないビーチのほとりでボートが停泊した。ビーチはエメラルドグリーン色できれいな海なので、本当にカンボジアの海なのかと信じられなかった。
すると、砂浜に機関銃を持った兵隊2人が監視しながら歩いていた。兵隊を見てすぐ緊張し、ここは間違いなくカンボジアだなと実感してしまった。
いつもはボートからすぐ海に飛び込む私なのに、ここではボートのはしごを使いながらゆっくりと海に入った。地雷がないか気をつけるために。それだけでなく、パラオのビーチでオニヒトデに刺された経験があるから、用心深く気をつけながら。結局、海の中はサンゴも魚も何もない、全て砂地だった。水温は25℃位といえ、まだ冷たい感じだった。
でも、景色は南の島のように美しいので眺めるだけでも気持ちがいい。
クロードが、体験ダイビングの人に、器材の付け方、潜り方などを指導しているので、その間に私とWはビーチで泳いだりシュノーケリングしたりした。
シュノーケリングでは海中は何もない・・・。砂を巻き上げるとハゼらしき小さな魚が数匹出てくるが、 まもなく砂の中に隠れてしまう。それしか何もないからシュノケーリングするよりも、浜辺でのんびりした方がいいな。そして体が冷えたため泳ぐのをやめてボートにあがって、クロードが体験ダイビングの人に教えている様子を見学した。日本の体験ダイビングと同じく細かくしっかりと指導していた。Wはずっとシュノーケリング。さすが元スイマーだ。

するとトイレへ行きたくなってきた。しかし、ボートの中にトイレがない。停泊した島にもトイレがない。トイレは島のジャングルの中で済ませるしか方法はないって。女性には勇気がいるかもしれないが、木が大いに茂ってるので隠れてやれば大丈夫。
しかし、ヘビが出てきた。マムシのようなヘビだが、クロードが、

インストラクターのクロードさん(フランス人)
 「毒ヘビだよ。近づかないで!」
と言い、木の枝で毒ヘビを殺してくれた。
ジャングルには、熊、ヘビ、サソリなど危険な動物が居そうなので、その中を歩き回るのを遠慮した。

そしてボートにあがって、そこに置いてある器材とタンクは大丈夫かなと点検してみた。タンクの耐圧検査の日付や質量を見たら"V"、”W”という文字がない。英語でなくフランス語で書かれていた。読めないのでタンクの点検をパスした。
BCのメーカーはシークエスト、レギュレータとオクトパスではマレス。
ゲージは聞いたことないブランドで、残圧計はフランスでの単位で表してた。「70kg/cu」のところが「1000PSI」と記されている。水深計はフィート単位で表してる。
BCにタンクをセッテイングして、残圧を測ったら目盛りの針が「2600PSI」と差してた。日本でいうと180kg/cu位。「1000PSI」以下は日本の70kg/cu以下で警告の赤線が描かれているので、700PSI〜1000PSIでエキジットすればいいと認識した。
私は日本からダイブコンピュータを持ってきたので、水深計にはそれを見ればいい。フィートって慣れていないので。(5mの場合は17フィート)
レギュレータで空気を吸えるか、BCは膨らむか確認したら問題なかった。ウェイト、フィンはちゃんと用意していた。これで器材はもう大丈夫だなと確信した。
えーと、あとは・・・。あれっ?スーツがない!ない!
クロードに聞いたらスーツを用意していなかったって。君達が持ってくると思っていたって。
 「水着とTシャツで潜るの?さっき泳いだら寒かったので、海中も寒いと思う。」
と不安しながらクロードに聞いたら、クロードが、
 「私が着ているスーツを貸してやるよ。私はTシャツで潜るから。」
と言ってくれた。なんて優しい方だ。
Wの場合はTシャツで大丈夫だって。
クロードの体験ダイビングの指導が終わってから、ランチタイム。
クロードが海辺でたき火をつくって、鉄板と鍋をのせて、お手伝いさんが鳥肉のステーキ、大エビの塩焼き、サワラ(?)のムニエル、チャーハン、フランスパンを作ってくれた。まるでバーベキューかピクニックのような雰囲気。ムニエルやサラダの調味料などがフランス料理らしくとても美味くて、沢山食べた。それで、カンボジアの危険なイメージを忘れた気がした。

空に雲がなくなって太陽がピカーンとギラギラして真夏のように暑くなってきた。
ランチタイムが終わって30分位休憩をとってから、私とWと体験ダイビングの二人とクロードはボートに乗って、ここの隣りにある小さな島 コン島へ向かった。ダイビングするコン島の海中はどんなものかな?とワクワクドキドキした。