カンボジア ダイビング紀行
時計を見たら14時すぎてた。もうこんな時間かよ。 まさか1ダイブで終わり??? クロードに聞いたら、1ダイブで終わりだって。 「えーっ、1ダイブだけ? せっかくここまで来たのにー」 「まあ、カンボジアで潜るのは考えていなかったら、1ダイブだけでも潜れたらいいじゃん。」 「そうやな。海辺でリゾート気分を味わったし、しかもダイビングできるなんで、カンボジアにしては考えれなかったな。」 「1ダイブで、カンボジアの海中を味わおう。」 とWと話合った。 |
ダイビングするコン島はロン・サムロエン島から200m先にあるので、あっという間に着いた。クロードが、コン島の岸辺から20m位離れたところでアンカーロープを投げて、ボートを停泊した。 ここで潜るそうだ。 コン島は無人島で海の辺りには何も人気がないので、ここでダイビングできるの?とちょっと不安した。 波はおだやかで潮がないそうだが、ボートの上から海面を見ると底が見えないほど藍色になっていた。とても深いだろうなと思って、クロードに聞いたら深さ10m位だって。えっ、浅いなあ。でも暗い藍色で海の中何も見えないからまさか透明度が悪いのでは?と思った。 さあ、ダイビングの準備。 クロードから借りたスーツを着たら肩まわりと脚はぴったりだけど、腹の部分がきつかった・・・。クロードの腹はしっかりとたくましいのに対し、俺の腹は出ていてスーツに合わなかった・・・。 器材をセッティングして、あれこれ万全か確認した。エアは2600(180)OK! BC、レギュレータはOK! | ![]() ロン・サムロエン島から見たコン島 |
クロードはブリーフィングをせず、 「体験ダイビングの人と一緒に潜ります。海中で時々君達を確認しますが、バディ同士でしっかり自己管理しながら潜ってください。」 と言うだけで、エントリー開始の指示を出してた。 ここは自己管理を徹底するダイブスタイルかな。でも、海中はどんな地形が知らない、最深も知らないと不安したので、クロードに聞いたら、 「大丈夫。潜れば分かる。」 と言われた。 バディ同士で自己管理を守れば大丈夫だろうと自信もってエントリーの準備をした。 ボートのデッキが海面から1m以上も高いので、ジャイアントストライド法でエントリーした。 水面で体を浮かんで、マスクで海の中を覗いたら、 「ゲッ!何も見えない!藍色で見えない!底が見えない!透明度が悪すぎる!」 と大ショック!! 透明度が5mもないほど悪そう・・・。 クロードが、 「海底においてあるアンカーロープの碇のところで待ってください。」 と言う。 潮流れがけっこうあってロープをつかまらないと流されてしまう状態であり、透明度が悪くて碇の位置が見えないので、ロープをつかみながら下へ下へと潜降した。 深さ6m位の位置でやっと底が見え、碇のところにたどり着いた。 陸上では南の島なのに、海中はそうでもなく暗い藍色の海中世界・・・。 地形は平地で1m級の岩だらけで、岩の上にサンゴがあちこち勃々と生息している。サンゴにはハマサンゴ、アザミサンゴがほとんど。 サンゴの他にすり鉢のような大きなカイメンがあちこち生えている。これは驚いた。串本やカリブ海で見られるすり鉢のカイメンがここにあるとは! それに、岩の下にカンガゼがけっこう出ている。 碇の周りには、イワシの群れ、ゲンロクダイが泳いでいる。伊豆で見れる魚だし、カンガゼもあるし、 「ここは伊豆じゃないか?」 と目を疑った。 体験ダイビングの人はなかなか耳ぬきができず、クロードと共に深さ3mのところにいる。 海底6m地点から上を見ても体験ダイビング人とクロードのフィンしか見えない。 すると3人のフィンが見えなくなった。どうやら、水面にあがって、指導しているのではと思い、俺とWは、ロープの碇のところで周りながら待ち続けた。 5分たっても来ない。 上をみたら人影が見えない。まだかなー。と待ち続けた。 10分位たった。それでも来ない。上を見ても人影が見えない。 「どうする?上がるか?」 「クロードが俺達を確認するために来ないとは?」 「1ダイブだけなのに、ここでじっとするのはもったいない。」 「じゃ、セルフでやってみるか?水深が浅いし、潮流れは大丈夫だし。」 「地形が全く分からないけど、コンパスと深さを徹底的に確認しながらセルフやろう。」 Wと相談して、セルフでやることにした。 早速コンパスを出して確認しながらセルフダイビングをはじめた。 海中の地形が知らないので、セルフするのにドキドキしてしまった。でも、冒険気分?でワクワクする楽しみもあった。 エントリー地点から25〜50mまで直線で行ってみた。そしたら水深が6mと変わらないのでゲージの水深計が壊れてるのはと思って、日本のダイコンで確認したら水深が変わらなかった。 どうやら海底は平ららしい。 すり鉢のような大きなカイメンがどこでもいっぱい生えていて、まるで壷を焼く窯の中にいたような感じ。 そして、でかいワヌケヤッコがペアで泳いでた。初めて見る稀種だ。 カリブ海で潜ったことがあるWが、 「ここはカリブ海じゃないか?」 と言ってた。カリブ海は、すり鉢のような大きなカイメンが沢山生えてるし、ヤッコが多いからだって。 90度向きを変えて進んだら、テーブルサンゴが見え、ウメイロモドキの群れ、クルグンの群れが現れた。ハナビラクマノミ、セジロクマノミ、アオブダイ、クギベラ、ニシキヤッコ、キンメモドキの群れ、ネオンテンジクダイの群れなどいて、魚影が濃くなった。 それで、 「ここは沖縄じゃないか?」 と思った。 オニヒトデがカンガゼと隣りにいて、変な組み合わせだなと思った。 コラーレバタフライフィッシュ、ヤスジチョウチョウウオなど初めて見るチョウチョウウオが結構いた。 岩にはギンポがあちこち出ていた。カイメンが多いのでイザリウオが居そうな感じだった。 あれこれ伊豆、カリブ海、沖縄とミックスしたような珍しい海中世界で、私の頭が???となってしまい感動していいか分からなかった。 珍しい海中世界にすいこまれたため、覚えておいた碇とロープ(エントリー時点)の位置を頭の中から消えかけてしまった。 コンパスの位置も曖昧になってしまった。やばい!! 進んだ方向を逆にして、見覚えのあるサンゴとクマノミを捜しながら戻ろうとしたが、潮流れで方向がずれてしまい、碇とロープはどこか分からなかった。 「場所が分からないから海面に浮上して、ボートの位置を確認しょうか。」 「ずっと水深6mでいたし、減圧警告がないから上がっても大丈夫だろう。」 とWと確認し合って、海面に浮上した。 そしたら、ボートは目の前。ボートから3m位離れたところに浮上した。 「なあんだ、近くにあったのか。」 とホッとした。 ボートにはクロードと体験ダイビングの人がいない。 どうやら潜っているようだ。 Wと俺の残圧が1700と結構残っていてもったいないので、もう1回潜った。 ボートから半径50m位周りながら海中散歩したが、海底はどこまでも6m〜10mで平ら。 ドロップオフの気配がない。 でも、サンゴやカイメンなどの地形や魚をあちこち見回っても、伊豆、カリブ海、沖縄とミックスしている雰囲気だった。 残圧が1000となったとき、いつもと違うエアの味がした。なんか鉄サビの味がした。 「タンクの中身をしっかり清浄していなかったのでは?」 「残圧700(50)までいきたいが、鉄サビ味のエアを吸うのは体に悪い。」 「もう終わりにしょう。」 とWとお互いに確認し合って、エントリー時点に戻って浮上した。 ちゃんとボートが目の前にあり、無事にエキジットできた。 潜水時間は1時間位だった。 ボートにクロードが既にあがっており、笑顔で、親指を立てて「GOOD」と指ポーズを出しながら 「お疲れ様」 と言ってくれた。そして握手を交わした。 どうやら、初めからセルフダイビングの扱いをしたらしい。 でも、カンボジアの海で、しかも初めてのダイブで、地形をまったく知らない上でセルフダイビングしたのは、嘘のようで信じられなかった。Wも同感だった。 それに、伊豆、沖縄、カリブ海と頭の中がグルグルまわっていて、 「本当にカンボジアなのか?」 と信じられなかった。 ああ、水中カメラとビデオを持ってくればよかったと後悔したが、カンボジアの海中世界をちゃんと脳裏に焼きつけたので満足した。 ボートでロン・サムローム島に戻って他のメンバーをピックアップして、シアヌークビルの港へ帰った。 そのボートの上で、Wとお互いに 「本当にカンボジアでダイビングしたの?」 「本当にカンボジアの海なの?分からない。」 と何度も言うほど、信じられい気持ちでいっぱいだった。 すると、カンボジアの海の地平線に真っ赤な夕陽が照らしていたので、ずっと眺めた。 ダイビングにはまだ信じられない気分だったけど、オレンジ色と染めた大空はきれいで気持ちが良かった。 港に入る前に、貨物船のような船に近づいて、俺達のボートの運転手が、ボートのデッキを開けて荷物を出した。貨物船のような船にいる漁夫?達にその荷物を見せて、彼らがうなずいて、そのままボートがその船から離れて港に向かった。 「何の為に荷物を見せたのか?その貨物船は何や?」 と疑問しながら、貨物船をみると、すぐ体じゅうゾーッと鳥肌がたった。 貨物船に機関銃の砲台がおいてある! 「密輸船か確認するためのパトロール船だったのか。」 「もし、ボート運転手がパトロール船に身分を確認させなかったり荷物を見せなかったりしたら、機関銃でボート全体撃たれるんじゃないか。」 もう体じゅう震えはじめ、 「ああ、ここはカンボジアだなあ。」 と思い知られた。 港に着いたら19時過ぎていてもう真っ暗。 クロードが 「私の店でログを書こう。そして一緒に夕食をとろう。」 と言ってたので、そのまま店へ行くことになった。 バイクタクシー1台で3人乗りで、クロードのショップへ向かった。 道の周りは真っ暗で、どこを走ってる分からない。暗闇でとても危ないところを走ってる感じ。 バイクタクシー運転手に知らないところへ連れされ、襲われて金を奪われるのでは?と不安でドキドキした。 暗闇から店のあかりが見えて、クロードの店に着いた。 バイクタクシーの運転手が笑顔で「ここだよ!」と言い、店のフロントまで案内してくれた。親近感のある人で安心した。 クロードの店はホテル兼レストランでありビーチの高台に建っていた。ダイビングショップというイメージはなくリゾートホテルっぽかった。 そのレストランに入ったら、フランス人らしき旅行者が5人いて夕食をとっていた。 どうやらフランス人リピーターのホテル、レストランのようだ。 レストランのテラスから、ビーチが見える。 レストランのメニューを見たら、ほとんどフランス語で書かれたフランス料理。読めないので、英語メニューと変えてフランス料理を注文した。海の幸のマリネ、ポトフ、貝柱のオイルターソースかけ、フランスパンなど。 フランス産のカクテルを飲みながら料理を食べた。 「カンボジアでフランス料理を食べれるのは考えれないよ。」 「カンボジアじゃないぞ。フランスのニースにいるんだよ。」 「いや、ニューカレドニアだよ。」 とWと笑いながら話し合った。 夕食の間、クロードと一緒にログを書きながら交流して、カンボジアの最後の夜を楽しんだ。 ログにクロードの店のスタンプを押し、名刺をもらったので、カンボジアでダイビングした証をとれて嬉しかった。 ダイビング料金は一人当たり65$でした。(夕食のフランス料理は25$) 戦争、地雷と悪いイメージがするカンボジアって嘘みたいで、平和になってきたんだなと実感した。 |
【 ダイビング・ログ 】 |
カンボジア・シアヌークビル コン島 | |||||||||
日付 | 1999/12/29 | 天候 | 晴 | 気温 | 28℃ | スタイル | ボート | ガイド | なし |
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潜水時間 | 15:10 〜 16:12 62min |
流れ | 小 | 水温 | 27℃ | 透明度 | 10m | 水深 | Ave 6.8m Max 9.4m |
ワヌケヤッコのペア、コラーレバタフライフィッシュの群れ、ヤスジチョウチョウウオ、ウメイロモドキの群れ、クルグンの群れ、ハナビラクマノミ、セジロクマノミ、ゲンロクダイ、アオブダイ、クギベラ、ニシキヤッコ、キンメモドキの群れ、ネオンテンジクダイの群れ、イワシの群れ |
【 カンボジア・シアヌークビルの海のマップ 】 クリックすると大きく見れます |
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【 ダイビングショップ「Claude」の広告 】(シアヌークビルの案内パンフレットより) |
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