あれ?V7エンジン?

 購入して直ぐにおかしいと感じたのはエンジンのばらつきだった。基本セッティングは600rpmなのに、なにせ900rpm以下ではアイドリングしないし振動もすごかった。どう考えても1気筒死んでいるのだ。そもそもエンジンという物は気筒数が多いほど振動については有利になるはずで、とても8気筒の振動レベルではなかった。購入して2〜3日だったのでキャブのセッティング方法などわかるはずもなく、メンテナンスの基本<プラグのチェック>からはじめた。
 最初は古い車だからエンジンルームも広いしプラグのチェックくらい何でもないとタカをくくっていた。しかし、やったことのある人ならわかると思うが、ノーマルエンジンの状態だとエキパイの遮熱版やエミッション関係の配管で手が入らないのだ。上からやってやれないことはないが、手が傷だらけになるのは必至だろう。結局手の届かないところは無理をしないで下に潜って作業した方が効率がいいという結論に達した。現在でも基本的に下抜きで作業している。
 話が横にそれたが、8本のプラグをチェックしたところ特に異常はなかった。ここでプラグの焼け具合の判断を説明しよう。普通、丁度良い焼け具合は”きつね色”だと言われる。しかし、これは大昔の有鉛ガソリンを使用していた時代の話であって、無鉛ガソリンでは黄変しない。黄色いのは鉛のデポジットなのだ。無鉛ガソリンでも黄変する場合があるが、これはアンチノック剤(MMT)等の添加剤の燃えかすだ。この場合プラグ全体が黄変していることが多い。
 ”きつね色”になるセッティングの多くは燃調が濃いのだ。完調のエンジンでは中心電極の碍子部分は”白”である。焼け過ぎとの判断がし辛いが、電極まで白色化していなければ良い。また、中速以上は中心電極の焼けを判断材料にし、スローの状態は陰極外周部のカーボンを判断材料とする。碍子が白で、外周部にカーボンが貯まっていなければ、”絶好調”と言える。

 次に、ちゃんと火花が飛んでいるか検証してみた。プラグを外した状態でスターターを回してみる。この時換気のよいところで作業しないと、キャブから気化したガソリンに引火して爆発の危険があるので注意しよう。結果は8本全て正常に点火していた。
 今度はエンジンが回っている状態で点火しているか検証してみた。方法はプラグコードを1気筒ずつ外していき、調子が崩れればその気筒は正常に機能していると判断できる。調べていくと2番シリンダー(右バンクの一番前)のコードを抜いてもつないでもエンジンの調子に変化がなかったのである。つまり2番シリンダーが失火していたわけだ。では、何故プラグの焼け具合に異常がなかったのか。それは高回転では正常に点火していて、アイドリング状態では失火していたものと推定する。
 では、どういう状態でそのようなことが起こるのだろうか?その原因を探ってみよう。

  1.混合気が薄い
    インマニのガスケット不良でエアリーク?

  2.圧縮漏れ
    ガスケット吹き抜けorピストンリング摩耗?

  3・点火時期が異常
    ショップがいい加減なメンテナンスをしたのか?

 1,2については当時検証するすべを持っていなかったので、これらの致命傷でないこと祈りつつ外観検査に留めた。外見上ガスケットが抜けている様子はなかった。
 まずは一番手軽な3について検証してみた。タイミングライトで点火時期をチェックした。マニュアルによると6゜BTDC@500rpmである。測定すると、なっ何とカムチェーンカバーに刻んである目盛りを遙か通り越して測定範囲外に進角してあった(推定30〜40゜BTDC@900rpm)。これは明らかに異常である。しかし、こんないい加減なセッティングでも回ってしまうアメリカンV8は凄いと感心させられる。
 早速点火時期を調整するためデスビを回そうとしたが、これを固定しているネジに工具が届かない。そう!ディストリビューターレンチなるSSTが必要なのだ。

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