1.アルミヘッドに交換

 アルミヘッドの解説の前に以前行った鉄ヘッドO/H時の写真を紹介しよう。勿論、エンジンは車に搭載した状態で作業を行っている。
 アルミヘッドに替える以前にノーマル鉄ヘッドをO/Hして使っていたのだが、その時にバルブステムの振れがリミットを越えていたので、後にアルミヘッドに替えたのだ。写真の様子は鉄ヘッドを洗浄、シートカット、バルブリフェイスした後に組み直したときの物だ。鉄ヘッドはバルブシートもガイドも一体化しているので、シート・ガイドの打ち換えなどしているとアルミヘッドが買えてしまう。しかも、排ガス規制の関係で8.2:1というローコンプレッションなのだ。決定的なのは”クソ重たい”事である。200ccのバイクのエンジンより重かった。ヘッド1つでである。持ったことのある方は分かると思うが、腰が抜けそうなほど重いのだ。それをジャッキアップされ、ただでさえ鋭利に持ち上がったフェンダー越しに取り外すのだからその苦痛は想像を絶する。ヘッド交換をされる機会があったら是非助っ人を用意しておこう。こんな重たい物が2つも付いているのだからアルミにすることで相当な軽量化が期待できる。一般にアルミは鉄の質量の約1/2、強度は1/3と言われている。単純に素材をアルミにしただけでは確実に強度が低下するが、焼き入れやボックス構造を採ることで、鉄より軽量化した上で鉄と同等の強度を得、鉄と同じ質量であっても鉄の数倍の強度を得ることが出来るのだ。前置きはさておき、劇的効果を生むアルミヘッド交換を紹介しよう。
 まず、私が選択したアルミヘッドは”Trick Flow”の”Twisted Wedge”だ。理由は非常にリーズナブルである事、64ccチャンバーである事(他は69ccが多い)、A/C等全てのコンポーネントがボルトオンであること、そしてメーカーの謳い文句である”Twisted Wedge”に興味があったからだ。今時ウェッジヘッド(くさび形燃焼室)というのも時代遅れだが、普通ウェッジヘッドのバルブは吸排気共に同じ角度で平行に付いている。しかしトリックフローの場合は、吸排気それぞれ異なったバルブ角を持たせ、吸排気効率を上げると共にシリンダー内でスワールを発生させることで燃焼効率の向上もしている。また、そうすることでプラグホールもより中心にレイアウトできるようになっている。このヘッドは、SUMMITで購入し、品番はTFS-31400001。現在$925に値上がりしたようだが、当時$800だった。2000年2月現在、Twisted Wedge G2となり、タングステンのバルブシートが打ち込まれていたり、強化スプリングを備えるなどして$1000を越えている。

TWISTED WEDGE
トリックフロー・ツイステッドウェッジ

TWISTED WEDGE
バルブアングルがねじれている

 このヘッドは、ステンレスのビッグバルブと1.25”のバルブスプリング周りは組み立て済みである。後はロッカースタッドとプッシュロッドガイドを共締めすればよいが、ヘッド単体ではロッドガイドの位置が決まらないので、この作業はブロックに取り付けた状態で行うと良い。ちなみにロッカースタッドはクロモリ製だ。
 造りの方はなかなかである。試しに何本かのバルブをばらしてみたが、切り粉や荒削りな部分もなく、ちゃんとアッセンブリールーブを塗布して組み上げられていた。ここで1つ疑問点がある。バルブのシートリングが打ち込んでないのだ。つまりヘッドのアルミがそのままバルブシートになっているのである。普通この手のヘッドには無鉛ガソリンでもシートが摩耗してバルブが沈まないように、燐青銅等のオイルレスメタルが打ち込んである。が、このヘッドにはそれが見あたらないのだ。エミッションリーガルとして販売されているので有鉛仕様では無いはずだ。一応焼き入れはしてあると書いてあるが、このヘッドの最も心配な部分である。このヘッドを導入して2年あまりが経過するが、今のところバキューム圧などに変化は見られないので問題は感じられない。もしご覧の方で、もっと以前から使用していて大問題が発生したという方がおられたら御一報いただければ幸いである。

 最近('99.2.18)判明したことだが、このアルミヘッドに装着するプラグはロングリーチ(19mm)を使わなければならないことが判った。プラグのリーチとはネジの部分の長さのことである。ノーマルの鉄ヘッドではショートリーチ(12.7mm)のプラグだ。ヘッドの取り説にはロングリーチプラグが必要みたいなことは一言も書いてなかった。また、テーパーシートでもガスケットタイプでもどちらでも良いようだ。NGKの品番で言うと、ノーマルBPR4FSをBCPR4ES等に代えればよい。今までショートリーチを付けていたのでプラグホールの奥の方で点火して、効率も悪かった事だろう。更に、ロングリーチに代えることによりコンプレッションも若干であるが向上する。
 もう1点、プッシュロッドも0.1インチ長い物にしなければならないようだ。レースに使っているわけではないので、そうそうシビアに考えなくても良いだろうが気持ち悪い。いつか交換しよう。



効果:

 さて、実際にアルミヘッドを手にしてみると、それ自体重いのだが鉄ヘッドに比べればその質量は1/2に近いと思われる。また、鉄ヘッドからアルミヘッドに交換した後にフロントの車高が1〜2cm上昇した事実は特筆すべきだろう。
 皆さんが最も気になる点はやはりパワーアップしたかどうかであろう。結論から申し上げよう”劇的に変化する”。勿論、上昇方向へだ。'81年式というのは悲しいことにオイルショックの影響で、最もエンジンパワーがプアーな時代だ。それ故ノーマル状態でストップ&ゴーで全開をくれてやっても殆どホイルスピンをすることはない。しかし、アルミヘッドにしてからは、そんなことをするとしばらくホイルスピンが止まらなくなった。あんまり面白いのでやりすぎて壊さないように!それほど体感できるのだ。現在は違うが当時のスペックはノーマルキャブにインテークはエーデルパフォーマー、ノーマルピストン、コンペティションカム252度、エグゾーストはKBDマフラー以外はノーマルであった。コンバッションチャンバーが76ccから64ccになったので圧縮比が8.2:1->9.1:1程に上昇したため、大幅なトルクアップをしたのだ。
 軽量化とパワーアップ、正に一石二鳥の代物だ。今、”アルミヘッドにしようか”と脳裏をよぎったあなた。迷うことはない、アルミヘッドにしなさい!!今時エンジンが鉄で出来ているなんて、また国産野郎に馬鹿にされるのが落ちなのだ。外した鉄ヘッドは重すぎて漬け物石にもならないので、寺にでも持っていって供養してやろう!

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