積算タコメーター

 たまには電子工作実験ネタでも。随分前から考えていたのだが、例によってなかなか重い腰が動かず実現に至らなかった。オイルなどの交換時期を客観的に判断するための指標には、一般に走行距離と数ヶ月毎といった一見定量的な目安を用いてきた。このような曖昧な目安だと、例えば走行距離3000kmでオイル交換すると決めた場合、その距離を走るまでの使われ方は考慮されていない。トロトロ3000km走った場合と常にレッドゾーンで3000km走った場合とでは当然オイルのヤレ方は異なる。時間を目安にした場合も同様、3ヶ月で一度も走らなければ新油のままで交換はもったいない。そこで考えたのが積算の回転計。つまり、エンジンの実働回転数を指標に用いるという方法。これならば、走り方にも使用時間にも殆ど影響されず、かなり高い精度で定期的なオイル交換時期を知ることができる。
 実現の方法はいたって簡単で、TACHパルスを拾ってカウンターでカウントするだけ。電子回路と縁のない人は難しいと思われるかも知れないが、回路自体は極めて簡単なのだ。というか、電子回路に精通している人が見ると、マイコンを使うなどもっと簡素化できるのにと思われるかも知れない(^^ゞ。
 まず、8気筒エンジンなので1回転で4回爆発。つまりタコ信号を4発拾ったら1回転とカウントすればよい。何回転くらいカウントできるようにするかは、例えば今まで5000km走行を目安にしていた場合を考えてみる。単純に考えるために時速100kmで走り続けたとして50時間連続運転となる。時速100kmの回転数は3速ロックアップで毎分約2250回転。
 2250回転*60分*50時間=675万回転
 普段はもう少し低回転域で走っているはずなので、5〜600万回転程度をオイル交換時期の目安に用いればよい。よって最大7桁表示できればよいことになる。今回は1桁の位を表示しても目では見えないので省略して6桁表示とした。

 今回の回路の説明をしよう。回路図を示す。大まかなブロックに分けると、電源、4進カウンター、10進BCDカウンター、デコーダー、表示部に分けられる。電源は車の12VからICに給電するためのレギュレーター。カウンターの数値を保持するためにACCと常時12Vの2系統に分け、内部はLED駆動用に8V、IC駆動用に5Vを給電している。また、待機電力を小さくするためにカウンター部のICはCMOSタイプを用いた。初期段階では、常時給電にもレギュレーターICを使っていたのだが、無負荷でもこのレギュレーター自体で25mAくらい消費してしまうのでツェナーダイオードによる定電圧回路に変更した。負荷はCMOSロジックなので軽くドライブできる。これで待機電流は4mA程度に抑えられた。
 まず、TACH信号は12Vの振幅があるのでそのままICに入力することはできない。トランジスタを介してある程度波形整形とレベルシフトする。その信号をT−FF2段で4分周し、その出力を10進カウンターICに入力。10進カウンターは桁数分繋ぐ。今回使ったカウンターICは2回路入っているので4つ用意すれば必要な7桁分賄え、最大1億回転までカウント可能となる。あとはカウンターの出力をデコーダーに通してLEDを点灯するだけという単純なもの。回路は単純ながら、LEDへの配線が多く作成が非常に困難なのだ。

必要な部品
 ・TTL
   ・74HC73 1個
   ・74HC390 4個
   ・74LS247 (表示桁数個)

 ・3端子レギュレーター
   ・7808 1個
   ・78L05 1個

 ・ツェナーダイオード
   ・RD5.1E 2個

 ・抵抗
   ・470Ω 7*表示桁数個
   ・10KΩ 1個
   ・3KΩ 1個
   ・30KΩ 1個

 ・コンデンサー
   ・電解100uF 1個
   ・0.001uF ICと同じ数

 ・7セグメントLED
   ・アノードコモン 表示桁数個

 ・小さいプッシュスイッチ、基盤、ICソケット、配線など

 表示部分を分ける場合
 ・50芯フラットケーブル
 ・50ピンフラットケーブルコネクタ

大体このくらいでできる。

 作成に当たっての注意点は、HC390、HC73の電源はVCC1、LS247はVCC2とする。各ICにパスコンを入れること。また、LS247のLT(#3ピン)が回路図ではVCC2(5V)に繋がっているが、ここは各LSI間を接続しておいてVCC2に繋ぐべき所はとりあえずオープンにしておく。これはLEDのセグメントテストをする端子なので、テスト段階でグランドに繋いでLEDのチェックを済ませてからVCCに繋ぐ。結構な数の抵抗とコネクターを介すので接触不良や配線の順番間違いなど結構発生するのだ。


こんな感じで組み立て


LT端子をグランドに接続してLEDのセグメントテスト


適当なクロックを入れて動作テスト

 実機搭載動作結果だが、現状では入力インピーダンスが高すぎてノイズを拾ってしまうのか、電源からノイズが回ってくるのか、TACHパルスのリップル成分を拾ってしまうのか??? 3倍くらいの勢いでカウントしてしまう。希にアイドリングで2〜300回転飛んでしまうこともある。TACH入力にシールド線を用いるとか、入力インピーダンスを下げるとか、容量を付けてローパスフィルターを形成して波形をなまらせるなど対策が必要。また基盤剥き出しで、フルコンの真横に取り付けたのでノイズを拾ったのかも知れない。分周器やカウンター部分にCMOSロジックを使ったため各入力インピーダンスが高く非常にノイズを拾いやすくなっている。ケースに入れてシールドする必要もありそう。
 12月20日。3倍カウントの原因判明。TACH入力の強烈なアンダーシュートによるリンギング? やはり入力インピーダンスが高かったのか、L分が見えてるのかアンダーシュートがハザードノイズとなって余計にカウントしていた。これを止めるには入力容量を増やすか、別の入力回路を用いるかのどちらかしかなかろう。今回は別の回路を試して、それでもだめなら容量を付けて波形をなまらせる作戦に出た。まず、トランジスタ入力を止めてツェナーダイオードによるクランプ回路にした。ICのシンク電流は無視できるので、抵抗はツェナーダイオードに適当に電流を逃がすように30KΩにした。結果はばっちりで、入力のノイズもなくなり綺麗なパルスがICに入るようになった。回路図のA点が写真上の波形でTACH入力波形だ。下の波形が4分周して10進カウンターに入る前の波形。完全に動作するようになったのだ。


TACK入力と4分周波形

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