2001ミステリ&ホラー映画情報

 各映画の公開予定、スタッフとキャスト、原作の紹介などを掲載しています。

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公開済み作品

海外作品

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 邦画公開済み作品

『バトル・ロワイアル』

(原作『バトル・ロワイアル』高見広春)
脚本 深作健太
監督 深作欣二
出演 藤原竜也 前田亜希 安藤政信 山本太郎 栗山千明 柴咲コウ ビートたけし

2000年12月16日公開 東映系 (原作読了済み)(鑑賞済み)

 1月5日、とうとう観て参りました。

 まあまずコンパクトにまとめたな、というのが第一印象。原作における壮大極まりない『大東亜共和国』なる設定をカットし、現行政府が発布した『BR法』をストーリーの骨子に据えています。一つの世界観を2時間やそこらで再現するのは非常に困難なので、この理由では妥当な選択と言えるでしょう。

 大まかなストーリー展開は原作に準じています。秀逸なのは冒頭のバスのシーン。修学旅行に向かうバスの中で騒いでいる生徒たち、そしてバスの進む道沿いを警備する軍(自衛隊?)の兵士達。いやでもこれから起こる事の平和な現実との落差を実感させ不安感を掻き立てます。

 序盤、廃校に連れ込まれての「ゲーム」のルール説明がなされるシーン、これもみやむーこと宮村優子演ずる「お姉さん」の「みんな頑張って戦うんだぞ〜?」という気の抜けたビデオでテレビのバラエティ番組のごとくあっという間に説明し、展開が早い早い。

 しかし感心したのはここまで。原作の膨大な情報量を知っている者としてはその後の展開は、「あ、はしょった」「はしょった」「またはしょったな」ってなもんで、やむをえない事なんでしょうが、もったいないという気分が拭えません。個々のシーンの緊迫感、銃撃戦のテンポの良さなどはさすがですが、逆転に次ぐ逆転で構成された桐山和雄VS三村信史、香港映画ばりのカンフーアクションで魅せた桐山和雄VS杉村弘樹の二つの対決が、三者のキャラクターの戦闘能力面での弱体化によってカットされているため、やはりパワーダウンという印象。実は凶悪なルックスの安藤政信、なかなかいい感じに演技してますが、いま一つ動きにキレがないのがいただけません。原作で書き込まれていたある種のマンガ的なアクションの美しさも、もう少し意識して演出してほしかったところです。

 数々の泣けるエピソードもいくつか再現されてまして、灯台での全員相撃ちなどはかなり力が入ってます。本当にシーンによっては息を飲む迫力を生み出し、映画全体としては緊迫感を決して失いません。が、黒バックに白抜きの文字で画面に台詞を出すのはちょっと……だせえよ……。あれは白けるのでやめた方が良かったと思うのですが、いかがでしょう?

 大量の血のりや生首のオンパレードは楽しいですね。R15指定の理由はほとんどこれでしょうね。原作も映画も、中学生同士が殺し合うという事よりも、大人が中学生同士に殺し合いをさせるという事にウエイトがおかれてるので、この事を理由に「中学生以下は観ちゃダメ!」と言うのはちょいとせこいですからなあ。

 テーマ的に、七原父やキタノなど、この国のダメな大人の代表とでも言うべきキャラクターにも、むしろ「甘い」ぐらいに愛ある眼差しがそそがれているように見えました。娘ぐらいの年の少女に救いを求めるキタノなど、彼らもまた被害者なのです、と言わんばかりです。しかし製作者たち「大人」はキタノに自分を同一視しているのか(自己憐憫)、それとも自分とは別種の存在として捉えているのか(オレたちはマトモな大人だもんね)、ちょっと気になりますね(いくらなんでもここまで単純な二元論にはなってないと思いますが)。原作と異なるラストには、「いくらダメになっても俺達はこの国で生きていかなければならない」というテーマがこめられているのでしょうが、これもちょいと疑問。「大東亜共和国」ではなく現実の国家である「日本」と設定を地続きにすることで、現状を肯定しようという狙いがあるのでしょうか。「ここまでダメになる前になんとかしようぜ」というのだったら話はわかりますが、「日本」だろうがなんだろうが、ガキ同士を殺し合いさせるような国は、逃げるか死ぬか潰すしかない、ってことはきっちりわかっといて欲しいですね。

 主役級の役者の面々(藤原、安藤、柴咲、山本、栗山あたり)が、各シーンで存在感もってきっちり演技してて感心しました。代わりに脇役クラスの役者とレベル的にちょっとギャップが生まれてしまってますが、これもやむを得ないことでしょう。

 トータルとしてはなかなか良く出来た作品です。原作を読んでいない人は大いに楽しめるでしょうし、読んだ人もまあそれなりに観られます(これってすごく褒めてるんですよ)。細部にもったいない所は多々ありますが、全体の密度を崩すとこまでには到らず、一安心。映画オリジナルの部分で一番面白いのが「みやむー」であるというのがちょっちアレですが、まあいっか。

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『狗神』

(原作『狗神』坂東眞砂子)
監督 原田眞人
出演 天海佑希 渡部篤郎

2001年1月27日公開  東宝系 (原作読了済み)(鑑賞済み)

 『死国』に続く坂東眞砂子作品の映画化第二作! もはや毎年恒例となった感のある東宝の正月映画第二弾角川ホラーです。二本立ての一本です。

 『金融腐蝕列島/呪縛』でヒットを飛ばした原田監督「戦う女の肉体の美しさを描きたい」と意気込みを語ってます。ジャンル的には「官能ホラー」だそうで……。雨中のファックシーンなど、天海ファン衝撃のシーンが満載だそうで……。ベルリン映画祭出品を目指してるそうで……。

 10月28日、原作読了。いや、これ、なかなかいいです。坂東作品は今まで『蛇鏡』『蟲』の二作しか読んでおらず、あまり手ごたえを感じなかったのですが、この『狗神』は映像的に訴えかけてくるものがありました。終盤のスペクタクルは、予算を注ぎ込んで映像化すべき迫力、充分です。これってモンスター物だったんだ……。楽しみだな〜。

 渡部篤郎は原作では、25歳の中学教師役。田舎に赴任してきた彼は、孤独な年上の女(天海佑希)に惹かれ、彼女と愛し合うようになるのですが……。ちょっと彼、25歳には見えませんね。映画版では設定が変わるかもしれません。しかし田舎もんの中のただ一人の都会人役。革ジャンを着て山道をバイクで疾走するなど、楽しみなキャラです。

 作品の舞台は、またしても閉鎖された田舎。どうしてこう田舎もんってのは頑迷なんだ……と読んでてうんざりしたりあきれたり(笑)。都会の風を吹かせ、渡部! ところで「戦う女の肉体の美しさを描きたい」ってのはなんだろ? 戦うシーンはなかったけど……。つけくわえるんでしょうか。

 R15指定になった模様。映像的な事もありますが、ストーリーの問題もあるのでしょう。

 さて、2月8日、観てきました。原作でヒロインに恋慕していた40代のおっさん社長が、ぐぐっと若返って渡部篤郎と同じ年代になってました。話全体の役回りとしては変わりませんが、ヒロインの姪と幸せになることで、ある意味ストーリーの行く末に希望を残したキャラクターになっています。

 しかし監督はハリウッド志向な人だと聞いていましたが、まさか今だ記憶に新しいハリウッド映画のモノマネをやるとは思いませんでした。ホントに流行ってるなあ、この路線。平たい話、藤村志保はブルース・ウィリスでした(もうわかりました?)。映像表現はわかりやすさ命、という印象でしたが、ヒロインの若返る描写(突然、眼鏡無しでも見えるようになる。白髪消失)などはともかく、怪異が起きるシーンの画面のブレや旋回する風景などはいささか陳腐。パッと見で何が起こってるか全てわかる、というのはいいんですが、もう少し表現に工夫が欲しかったような。

 お〜い、「闇の獣」はどうした〜!? 「坂東さんの作品は映像が浮かぶから好きなんです」と言ってた監督、一番かっこいいとこを映像化しないでどうするんだよ! やはりというか何と言うか、予算の問題でしょう。原作でスケールでかかった山火事以降のシーンは大幅縮小! ふ〜っ。寂しいなあ。

 「閉鎖された田舎はしょうもない。中でも田舎の男は威張ってるだけでもっとしょうもない」というのがテーマなこの作品。「戦う女の肉体の美しさを描きたい」とか言ってましたが、とうとう耐えかねた田舎の女がプッツンして身勝手な男のドタマをかち割るまでを描いても、あんまり戦ってるように見えないんですが。田舎の女衆が腹にすえかねてるのはわかるんですが、その代表がヒロインだという点は説得力不足だし、ヒロインのプッツンを描いてしまった事で、逃れようもない田舎の呪縛という原作の視点は希薄になってしまいました。まあ原作も映画も「さっさと出て行こうよ」というと身も蓋もない話なんですけどね。

 ラストもオチになってないのが気になります。人間ってのはプッツンした瞬間よりもその後が面白いのに……。ほんとにこの正月第二弾ホラー二本立ては、どんどんダメになって行きます。さあ、来年はなんだろ!? 今から楽しみでしょうがねえよ! 

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『弟切草』

(原作『弟切草』長坂秀佳)
監督 下山天
出演 奥菜恵 斎藤陽一郎

2001年1月27日公開  東宝系 (原作読了済み)(鑑賞済み)

 スーファミ、プレステで発売されたあのサウンドノベルの原作が映画化です。やったことないですけど。ホラーでしょうか? 『かまいたちの夜』も映画化しないかな。

 毎年恒例、東宝の正月映画第二弾角川ホラーです。二本立ての一本です。上記『狗神』と同時公開がすでに決定済み。しかし、これ、どっちがメインなんでしょう? だんだんしょぼくなっていく気がしますけど、頑張って毎年続けて欲しいですね。

 11月1日、原作読了。バカップルinお化け屋敷……つ、つまんね〜。猥雑さとスピード感だけの話……筋は無茶苦茶だし、キャラはアホ揃いだし、これをこのまま映画化しても、怖いと言うよりびっくりするだけの映画になりそうですなあ。

 2月8日、観てきました。いやいやいや……つ、つまんねえ〜。もう何も言う気が起きない……。やっぱり筋は無茶苦茶、伏線テキトー、『ブレアウィッチ』の真似なのか手持ちカメラ(酔うっちゅうねん!)、奥菜恵の二役に失笑、斎藤陽一郎のけたたましい笑い声に虫酸、ろくなロケも出来ずセットも組めないからってぼかした映像でごまかすバカがどこにいる!? 美術ぐらいちゃんとやれ! お屋敷のCGは遠近を考えて合成しろ! マルチエンディングだと!? 笑わせんな! 何が「全てに新しい事をやった」だ! エンディングを二種類続けてやるのは『フランケンシュタインVS地底怪獣』のビデオで経験済みなんだよ! 原作通り兄と妹の禁断の関係やって『狗神』近親相姦二本立てで18禁にしろ!

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『死びとの恋わずらい』

(原作『死びとの恋わずらい』伊藤潤二)
製作 松下順一
企画 加藤東司
脚本 友松直之
監督 渋谷和行
出演 後藤理沙 松田龍平 秋吉久美子 三輪ひとみ 三輪明日美 高橋慎二 猪俣ユキ 齋籐洋介 松田一沙 麻見奈央 羽仁俊太郎 川村陽介 齋藤千尋 本田博太郎 伊藤美紀
3月24日公開  松竹系  (原作読了済み)(鑑賞済み) 

 『うずまき』『富江』の伊藤潤二のホラー漫画の映画化です。『ガラスの脳』の後藤理沙、『御法度』の松田龍平が主演。

 11月21日、原作読了。なんというか……大いに笑えます。「辻占」なる風習がはやる町に、10年ぶりに戻ってきた少年。彼の隠された過去を反芻するかのように、奇怪な事件が頻発する。事件の影にその姿を見え隠れさせる「四ツ辻の美少年」の正体とは……? 長身を黒衣で覆い耳にピアス、死んだように美しくクール、わざとらしくポケットに手を突っ込み、無闇に首が長く、口を開けば出てくるのは人を絶望的にさせる台詞ばかり! 謎の美少年のモノマネを思わず延々とやってしまいましたが、かっこいいんだからしようがない。4話構成になった原作をどう映画化するのかも興味深いですが、私的にお気に入りな第二話『悩む女』が大きな扱いになればい〜な〜。ああ〜どうしようどうしよう〜。

 さてさて4月3日、劇場まで足を運んで参りました。まず先に感想を申しますと……「思ったよりも観られた」でしょうか。原作漫画よりもかなり設定が変わっており、後藤理沙演ずるヒロイン柴山みどりがよそから舞台となる街に舞い戻ってくるなど、ほとんど別物の作品になっています(粗筋は公式ページを参照の事)。しかし別物になったとはいえ、「辻占」「黒服の美少年」「入れ墨」「お弁当」「カッターナイフ」など原作を彩った小道具やキーワードは巧みにちりばめられ、それなりに関連性を楽しめるようになっていました。原作との相違を追求する……というのも映画化作品を観るにあたっての一つの楽しみ方かもな、と少し考えさせられました。

 辻占の美少年の正体の陰に潜む二重三重のどんでん返しなど、細部に矛盾があるにしても構成を考えてシナリオを作っており、某映画のパクリだけで終わった『狗神』などよりもよほど好感が持てました。また、平成の現代の高校を舞台にしているにも関わらず、携帯電話を持った学生も茶髪の奴も一切登場せず、いったい何時の時代やねん!と突っ込みたくなりますが、そこをぐっとこらえてみると、高層建築などが一切ない平屋ばかりの町並みとあわせて、一つの世界観を着実に構築しているのがわかります。基本を押さえた丁寧な作りを感じました。アクションにしろホラーにしろ、日本映画には香港映画のような予算のなさを気合いと体力でカバーする土壌がないだけに、この丁寧さはぜひ一つの指針としたいところです。

 主役かと思いきや出番が少ないキーキャラクターだった松田龍平、もういい加減その髪型やめろよ、背筋ももっと伸ばせよ、と観ながら文句をつけてしまいましたが、途中でぶちかまされる後藤とのキスシーンでは、私の前の方に座ってた女子高生らしい二人連れが身悶え! 後ろの席に座ってたOL二人連れも、映画が終わった後で「(キスシーン)やるのは知ってたけど……」とため息! この人気(?)はさすがですね。

 茫漠とした表情と棒読みっぽい台詞の後藤理沙。しかしこの下手さ加減ももしかしたら意図した演出だったのかと思わせる真相に、文句のつけようがありません。一つの不安要素を他でカバーする、これも映画作りの重要な要素かなあと考えた次第。

 古き良き時代の青春映画(大林宣彦調と誰かが言ってました)を思わせる出だしに、最初は大変不安になりましたが、後半はグロい描写も爆発! 三輪姉妹の怪演にも後押しされ、なかなか楽しませてくれました。全体的に傑作とは言いがたいですが、映画全体の雰囲気の統一感、こういう映画を作ろうという目的意識とビジョン、行き当たりばったりに作った感じのない真摯な姿勢を感じました。これからの日本ホラー映画の最低ラインとして、今後はこの映画を指針にしたい。これから作られるホラー映画はすべてこの『死びとの恋わずらい』映画版を超えることを義務付けたい。そんな作品であります。

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『バトル・ロワイアル 特別編』

(原作『バトル・ロワイアル』高見広春)
脚本 深作健太
監督 深作欣二
出演 藤原竜也 前田亜希 安藤政信 山本太郎 栗山千明 柴咲コウ ビートたけし

4月7日公開 東映系 (原作読了済み)(未見です)

 なんか冗談のようですが、『エクソシスト』の向こうを張って作るそうです。今年、15歳になってなかった中学生が、4月には観られるようになってるからだそうで……。

 カットされたシーンを付け加える他、追加撮影もするそうで、「ただの特別篇ではない」とのこと。「ファンへの感謝を込め、単なる再上映ではなく、前作で表現し切れなかった部分、登場人物一人一人の思いも強調して描きたい」と脚本の深作健太氏は意欲を見せています。

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『ステーシー』

(原作『ステーシー』大槻ケンヂ)

監督 友松直之
脚本 大河原ちさと
出演 加藤夏希 尾美としのり 内田春菊 筒井康隆

8月18日東京公開 (原作読了済み)(未見です)

 キネ旬の6月上旬号の執筆者コメント欄で、大槻ケンヂ自身が「映画化しました」と言っておりました。国産ホラー映画は、ブームが去った後も一ジャンルとして定着した感がありますね。

 しかし原作とは全然違うものになってるんでしょうねえ……たぶん。

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『陰陽師』

(原作『陰陽師』夢枕獏)
監督 滝田洋二郎
出演 野村萬斎 伊藤英明 小泉今日子 真田広之 今井絵理子

10月6日公開  東宝系  (原作未読)(観賞済み)

 製作費10億円を投じて、最新のCG技術で平安京の豪華絢爛(けんらん)な世界を再現するほか、魑魅魍魎(ちみもうりょう)はびこる闇の世界を映像化。今までにない一大スペクタクルが繰り広げられそうで、製作サイド(東北新社とTBS)では「“平安版マトリックス”を狙いたい」と意欲を示しているそうな……! 『ホワイトアウト』が7億〜8億だったらしいから、かなり金かけるつもりですね〜。妖怪相手にバトル! 

 ちなみに私、コミック版も読んでおりません。おもしろいらしいですな。誰か貸して下さい。

 10月7日、観ました。京都を舞台にしているにも関わらず山の中ばかりで撮影してた『五条霊戦記』とはさすがに趣を異にし、都の外景はCGで、一つ一つの建物はセットで、という具合にそれなりに予算を投じて作り込んでいました。同じく登場する妖怪群もCG、ミニチュア、本物の動物などを使って作り分けています。……欠点は、どれがCG、どれがセットやミニチュアなのか一目瞭然な、作りの安っぽさでしょうか(爆)。多少はフィルターをかけて観る事を要求されます。

 野村萬斎という人は初めて見ましたが、なるほど、個性的な風貌と低い声が浮き世離れした風情を醸し出し、凡庸さを感じさせません。いかなる帝にも仕えるにはあまりに傲慢な当代最強の男を、なかなか楽しげに演じています。ぼそぼそと人に聞こえぬように陰陽道の呪句を呟くところが、結構かっこいい。映画の他の部分がへたれているので、ついつい彼が台詞を発するのを心待ちにしてしまいました。

 前半の「陰陽道の基本おさらい」的な説明的シーンの連発がなければ、もう少し短くなったと思いますが、とにかく映画としてのテンポはぎりぎり。なんとか決め台詞を作ろうと四苦八苦する脚本を見ていると、台詞回しに頼らず映像で晴明と博雅の友情など表現できないか、脚本家と映像作家との意思の疎通をどうしても疑いたくなります。決め台詞がわざとらしく聞こえるあたり、外してるなあ……。

 悪役の真田広之がどうして京の支配を企むのか、晴明はなぜああもひねた性格をしているのかなど、描くべき事がいくつもないがしろにされているために、最後の対決も盛り上がりを欠きます。上段の「陰陽道の基本おさらい」など世界観の設定の部分は原作に譲ってもかまいませんが、キャラクターのバックボーンや心理は映画の中だけで完結しないと、どうしたって浅薄な印象になってしまいます。まあ私なんかはアクションさえすごければ満足するのですが、そっちの方もなあ……。

 いったいどうやったら現代日本は面白い娯楽映画を作れるのだろう……永遠の課題になってしまうのかな……。

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『ターン』

(原作『ターン』北村薫)
監督 平山秀幸
出演 中村勘太郎 牧瀬里穂 倍賞美津子 柄本明 川原亜矢子 北村一輝

2001年10月13日公開 (原作未読)(未見です)

 バンブーピクチャーズの第一回作品。完成は2000年8月。初お目見えは東京国際映画祭。実は北村薫読んでいないのですが、ミステリではないようです。さらなる情報、原作の感想求む!

 とうとう公開日が決定しましたが、監督もキャストもそれなりに名が売れているにも関わらず、ここまで決定しなかったということは、内容は大丈夫なのでしょうか? とにかくこれから原作を読みます。

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 邦画公開予定作品


『蝶の棲む家−木曜組曲−』

(原作『木曜組曲』恩田陸)

監督 篠原哲雄
出演 鈴木京香 浅丘ルリ子 原田美枝子 富田靖子 西田尚美 加藤登紀子

公開日未定 (原作未読)(未見です)

 4年前に薬物死した大物女流作家の死の真相をめぐり、洋館を舞台に繰り広げられる推理劇。恩田陸作品、初の劇場映画化! 出演者が女性ばっかりですねえ。

 監督は『月とキャベツ』『はつ恋』などの篠原哲雄です。

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『仄暗い水の底から』

(原作『仄暗い水の底から鈴木光司

監督 中田秀夫
出演 黒木瞳、水川あさみ
1月19日公開 (原作未読)(未見です)

 『リング』の鈴木光司の小説「仄暗い水の底から」に収められた1篇、「浮遊する水」が映画化されます。2002年1月19日、全国東宝系で公開予定。毎年恒例のやつですね。おそらく二本立てだと思いますが、もう一本は何かな? しかしどんどんマイナーな作品が映画化されますね……。

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 とりあえず企画だけはあるらしい作品 

『ループ』

(原作『ループ』鈴木光司)
監督 長谷川和彦

(原作読了済み)(未見です)

 『リング』『リング2』『リング0』のいわゆる映画リングシリーズとは別の流れになるこの作品、どういう風に映画化するんでしょうか。ちょっと無理かもね。

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『天使の囀り』

(原作『天使の囀り』貴志祐介)
監督 森田芳光

(原作読了済み)(未見です)

 『黒い家』に引き続き森田監督登板ですね。しかしアクティブさが薄いので、映画化して面白くなるでしょうか。

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『催眠2』

(原作松岡圭祐)

(原作未読)(未見です)

 2ってなに……? ところで、おでんは(しつこい)。

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『六番目の小夜子』

(原作『六番目の小夜子』恩田陸)

(原作読了済み)(未見です)

 この企画は放映中のドラマの視聴率次第でしょうね。ちなみに私は裏番組の『ゾイド』を毎週観てましたので、ドラマは観ておりませんでした。

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『すべてがFになる』

(原作『すべてがFになる』森博嗣)

(原作読了済み)(未見です)

 企画しているのがWOWOWだそうなので、劇場映画になるのかどうかは不明。たぶん『多重人格探偵サイコ』と同じく衛星ドラマというかたちになるのではないでしょうか。はっきりするまでは掲載しておきます。主要キャストを森博嗣さんのHPで募集していました。御興味ある方は、ぜひ見に行って下さい。しかしこのキャストは難しいのでは……。

 9月9日現在、新しい情報は入って来ておりません。ですが、ちょっと思い付いた事があるので、以下にまとめておきます。

 上では衛星ドラマになるのではないかと書きましたが、最近のWOWOWの動向を見ていると、劇場映画になる可能性もかなり高いように思います。素人の意見なのですが、WOWOWの番組プログラムを見ていると、概ね二種類に分類できると思います。一つは地上波よりも遥かに早い「劇場用映画」のテレビ放映、もう一つは質が高いと評判の幾多のアニメ作品や、『京極-怪』『サイコ』などの「WOWOWオリジナル作品」の放映。

 このうち一つの流れである「劇場用映画」ですが、例えば『リング2』『死国』がほぼビデオリリース直後ぐらいの時期に、第一回目を放映していました。これは、地上波と比較せずとも、異例の早さです。下手をすればビデオの売り上げやレンタルにも響くぐらいですが、なぜここまでの速度で放映出来るかというと、これは製作の段階で出資している、つまりは幾許かの金を出しているからに他なりません。配給の東宝や製作にあたった角川書店ほどではありませんが、映画を作る段階から参加することによって、予めある程度の権利を確保する事が可能になるわけです。むろん、出資の段階からの参加は少なくない資金を必要とするのですから、リスクはあります。が、当たれば見返りも大きい。このところWOWOWは、順調に加入者数を増やしているようです。近作の劇場映画では『バトル・ロワイアル』にも出資しています。WOWOWはかなり「劇場用映画」の製作に力を入れ、そのノウハウを吸収しようとしているのは、間違いのないところでしょう。

 続いて、もう一つの流れである「WOWOWオリジナル作品」ですが、こちらにもかなり力を入れています。『京極-怪』の完成度を見てもおわかりでしょうが、地上波のドラマとは一線を画す出来といえるでしょう。『京極-怪』『サイコ』の二本は、講談社とも組んで、メディアミックス戦略も進めています。

 さて、最近のWOWOWには、上記二つの流れがあるわけですが、では、このWOWOWの根幹をなす二つを一本の流れにまとめるとどうなるでしょう? つまり「劇場用映画」の製作に他社に追随して参加する事によって得たノウハウを、高いレベルを誇る「WOWOWオリジナル作品」に生かすには……。もうおわかりですね、「WOWOWオリジナル作品の劇場公開」です。実はこれ、すでに第一歩が実現しています。東京一館、大阪一館という非常に小規模な形態でしたが、『京極-怪 七人みさき』が八月に短期間ながらも劇場公開されたのは、記憶に新しいところです。作品が劇場公開可能なクオリティに達していたことはもちろんですが、裏を返せば、最初からそのつもりだった、とも取れます。

 『京極-怪 七人みさき』劇場公開を第一の布石とすると、第二の布石はなんでしょう?

 「テレビ向けに作ったオリジナル作品を、小規模ながら劇場で公開する」ことに続く戦略とはなんでしょう?

 当然、スケール・アップしかありません。すなわち「最初から劇場公開のために作ったオリジナル作品を、大規模に劇場公開する」ことです。

 地道に出資を続ける事で得た映画製作のノウハウと、クオリティの高い作品を作る技術、加入者増で獲得した資金、角川に匹敵する大出版社である講談社との提携、これらを全て活用するためのWOWOWのさらなる戦略……そう、それが『すべてがFになる』の劇場用映画としての製作、公開なのです。

 とまあ、決め打ってみましたが、これはあくまで素人のイメージによる推測に過ぎませんので、あまり過度の期待は持たれませぬよう……。ただ、WOWOWがいつかオリジナルの劇場映画を作る、というのは遅かれ早かれ実現すると思います。ただただ愚直なまでに娯楽作品を放映し続けるWOWOW……特に映画に関してはこだわりが感じられますから。それが『すべてがFになる』になるかどうかは、また別の話ですがね。

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海外作品

『ハンニバル』

(原作『ハンニバル』トマス・ハリス)
監督 リドリー・スコット
出演 アンソニー・ホプキンス ジュリアン・ムーア ゲイリー・オールドマン レイ・リオッタ

2001年4月7日公開 (原作読了済み)(鑑賞済み)

 さてさて、3月12日、試写会で一足先に観て参りました!

 原作版における『羊たちの沈黙』から『ハンニバル』への連鎖は、サイコスリラーからキャラクター小説への大胆な転換が印象的でしたが、映画版における前作から今作への変化はそこまでイメージを変えるものではありません。

 映画版『ハンニバル』の原作の再現度は、ある面ではかなり高いと言えます。序盤の魚市場での銃撃戦、イタリアのカッポーニ宮のレクター博士登場シーン、構成を変え冒頭に持ってこられたメイスン・ヴァージャーとバーニーの邂逅など、映像面においては最大公約数的イメージで手堅くまとめられ、観ているこちらにさしたる違和感を起こさせません。原作を読んだ後に映画化された作品を鑑賞した時、読んでいるあいだにイメージを膨らませ過ぎ、映画版の映像に幻滅を感じる事が時々あります。今作でもやはりそれはありましたが、「まあこんなものか」という程度に押さえられており、納得いくレベルには達していたと思います。むしろその反面、何気なく想像していた部分が映像化すると意外にも迫力ある映像が出来上がっているというケースの方が印象的でした。具体的に申しますと……「豚、怖い!!」 己の想像力の豊かさと陳腐さの両方を実感する、優れた映画化作品を観る時の楽しみの一つと言えるのではないでしょうか。

 ストーリー面から見ていくと、全体の流れは大まかには原作を踏襲しているのですが、ラストを改変しているために作品のテーマとでも呼べるものが大きく変わっており、そこに到るまでの描写が全て原作とは違った描かれ方をされているため、印象としてはかなり変わっています。原作において怒濤のハッピーエンドに雪崩れ込んだレクターとクラリスの関係が、映画版ではさほど甘いものとしては描かれていません。前作の原作版を読んでレクターやクラリスのキャラクターのファンになった読者のために、過剰なまでのサービスを盛り込んだキャラ萌え小説として書かれた原作『ハンニバル』は、「怪物」レクターを初めとするメインキャラの心理描写を中心に据えた内容となっており、それらを映画という表現法で完全に表現するのは無理であり、心理描写抜きにしてはあのラストを描いても説得力を持たせられないと判断した結果でしょう。原作のキャラクターファン(つまり私)はいささか不満が残る内容であると言えます。

 登場人物の心理の動きを細かな映像とストーリーの流れで表現するのが映画というものだと思いますが、やはり原作は上下巻、個人的にさくさく読めたとはいえ情報量はかなり巨大です。2時間やそこらで全て押さえるのは不可能というもの、結果、レクター博士は映画版前作同様、謎めいたキャラクターとなり、クラリスもあまりぶっ飛んだことはしてくれません。やむを得ない、というかむしろ映画の完成度を高めようと思うと妥当な改変であるのは確かですが、弊害もありました。レクターと対立するメイスン・ヴァージャーの妹マーゴの設定が丸ごと省略されたため、邪悪かつ下劣な人間的悪の存在としてレクターと対比されたメイスンのキャラクターが、外見が気持ち悪いだけの今一つなものになってしまったことです。おまけにせっかくゲイリー・オールドマンなのに、あそこまで特殊メイクしちゃったら怪演もできんではないか! もったいないなあ。

 キャラクターの解釈が変わっているという一点で、もう映画版は原作版とは別物になっています。割り切って観るといたしましょう。さすがにアンソニー・ホプキンスもちょっと年取って動きに切れがない印象。原作のきびきびした人のイメージで観てはいけません。やっぱり期待しすぎると物足りないですね。ラストもやや中途半端な印象あり。原作はオチをつけ過ぎたのが逆に面白かったんですが……。

 意味もなく日本人が登場するなどリドリー・スコットお得意の隠し味もありますし、やっぱり晩餐会のあれは笑えますし、面白い映画であるのは確かです。噂では3時間を超えるディレクターズ・カットもあるそうで……それも観たいなあ。

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『呪われし者の女王』

(原作『呪われし者の女王』アン・ライス)
監督 マイケル・ライマー
出演 スチュアート・タウンゼント マルガレーテ・モロー アリーヤ レナ・オリン ヴァンサン・ペレーズ

2002年公開予定 (原作読了済み)(未見です)

 本当に好きな作品が映画化されるというのは、なんと喜びと苦しみを伴うのだろう……(笑)。御存知アン・ライスの『ヴァンパイア・クロニクルズ』の第三作が『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』より数年の時を経てついに映画化されます。

 ブラピ、トム・クルーズなどの出演者は総入れ替えされ、レスタト役はイギリスさわやか青春コメディ『シューティング・フィッシュ』で朴訥な方の男をやっていたスチュアート・タウンゼントに決定。しかし彼はちょいとごついし眉毛は太いし、かなり不安だ……(笑)。上手いとは思うんですが。

 ジェット・リ−主演の『ロミオ・マスト・ダイ』でヒロインを演じたアリ−ヤが、アカシャ役。レナ・オリン(近作『ナインスゲート』)がマハレ、ヴァンサン・ペレーズがマリウス役で決定済み。未確認ながらパンドラとデイヴィッド・タルボットも登場する模様。ルイとガブリエルは……?

 ストーリーはやはり大幅に刈り込まれるでしょうが、冒頭のロックバンドは再現されるそうで一安心。秋が楽しみだな〜。

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