−マニアに責任の無い故障−
さて、どうも最近「ずんずん教」やら「FIST」やら不真面目なコンテンツの
UPが続きましたね。(^^;
このHP本来の運営方針を忘れてはいけませんでした。今回はちょい路線を戻し
ましょう。
基板を収集されているマニアな方で、ある日突然基板が正常に動作しなくなる
不運な目に見回れた経験をお持ちになる方がいらっしゃると思います。
考えられる原因は
1.電気部品不良。
(部品不良についてはこのコーナーにコンテンツ「実は寿命のあるIC」でも
取り上げていましたね。)
2.取り扱いミスによる不具合。
(静電気,過電圧の印加,基板への応力による半田クラック,配線ミス等)
3.初期製造不良
(未半田,半田ブリッヂ,作業ミスによる半田クラック,導電性異物付着等)
4.その他
(供給電圧不足,コネクター弛み,ROMソケット緩み,ハーネス挿し違い等)
大体こんなところが考えられるでしょう。
1,2,4についてはここ「基板の豆知識」コーナーや
「基板の取り扱い方ノウハウ」コーナーで紹介してきたものが多いと思います。
(説明していないものは追って順次紹介していくつもりです。)
今回は上記不具合モードの中から「3.初期製造不良」を紹介してみましょう。
ROMソケットが弛んでもいない、電圧も正常、
…でも時々画面が乱れたりすっかり直ったりする…。
置き方を変えて基板がほんの少したわむと直ってしまったりする…。
こんな症状は往々にしてどこかの部品で接触不具合が発生している可能性が
強いのですが、取り扱いが悪くて半田した部品の端子が剥離していたりする以外
実は初期より製造不良が潜伏していた場合もあるのです。
ささ、早速これについて紹介して参りましょう。
1.半田未着
さて冒頭は半田未着不良です。
上の画像を見ればお判りになりますが、3.9KΩ(392)のチップ抵抗の片側
電極にフィレット(*)が形成されておらず正常に半田付けされていませんね。
これは基板を製造する過程で起きた不良であり、半田量が不足していたり
リフロー槽(基板全体を暖めて一度に半田付けする設備)の温度条件が
悪かったりした事が原因です。
またはチップ抵抗の初期部品不良なんかも稀にありまして、抵抗の電極表面の
成分が殆どSnに偏析(半田は錫と鉛がある割合で配合されていますが、殆ど
錫成分だったと言う不具合)していた為半田が馴染んでくれなかった、なんて事
もあります。
(*)
フィレット:富士山の裾野のようになだらかに半田が解けて付いているさま。
以前基板の「取り扱い方ノウハウコーナー」、「半田の付け方について」で
紹介しましたね。
この不具合により導通不良が起きますが、やっかいな事に基板のパターンと抵抗
電極は密接していますから、一時的に導通してしまい不具合が再現しないままで
生き延びている場合があったりするのです。
基板にストレスを掛けた途端に導通不良が発生して動作がおかしくなったりする
原因の一つにこのような基板の製造不良がありますこと、皆様知ってて下さい
ましたら。(^^)
このような不良の場合、メーカー製造責任は別にして再度半田付けすれば直って
しまいます。
以下の画像も半田未着の例です。
CPUの端子、右から2、3、5番の3本の端子にフィレットが形成されておらず
未半田による導通不具合が起きているものです。
おまけの画像として、リフローの機械による半田では無く、半田コテによる
作業者の半田忘れ不具合の画像を以下に紹介しておきましょう。
ほら、一番右端の端子が半田付けされていないでしょう?(笑)
人のする作業ですから、慌てるとこのような事が起きるものです。
2.半田ブリッヂ
端子同士が半田で橋渡しされショートする不具合ですが、まあ完全な半田ブリッヂ
は基板出荷時の動作チェック工程で引っ掛かりますからまず市場でお目に掛かる
事は無いでしょう。
皆さんも半田コテで半田ブリッヂをこさえた経験がありますよね。(^^)
上の画像は上述の「半田リフロー」工程で発生したCPU端子間の半田ブリッヂ
です。
完全に半田ブリッヂしている訳ではなく、ビミョーに接触した状態です。
これは製造過程でたまたま糸クズ等が付着し、それにまとわり付いたクリーム
半田が残ってしまった事により起こるものです。
ブリッヂを起こした半田はかなり細い形状で、しかもフラットパッケージCPU
の下に隠れていたりする事もあるのですから、まず外観確認で見つける事は困難
でしょう。(^^;
3.半田クズなどの導通性異物付着
上の画像は製造工程で混入した金属クズがCPUの端子間に付着したものです。
ビミョーに端子間で電気的なショートが発生しています。
基板をたわませると直ってしまうのは御愛嬌。いや、実際金属クズは軽く乗った
状態ですのでこんなんなってしまうのですけれども。(笑)
以下の画像は半田コテから発生した半田クズが部品の端子間に付着し、
動作不良を起こしていた実例です。皆様、
半田コテを使用する際にはくれぐれも近くに基板を置いたりしませんよう。
画像をもう1枚。
下の画像も半田クズによる不具合例です。チップアレイ抵抗の端子間に付着し
ショートを引き起こしていたものです。
4.半田クラック
上の画像は作業者のミスによる初期製造不良です。
フラットケーブルを無理な力で曲げた為に半田クラックが入ってますね。
半田クラックは初期製造不良に限らず、基板に不要な応力を加えれば、フラット
ケーブルだろうがCPU端子だろうがチップコンデンサであろうが半田付けした
部分ならいつどこでも発生し得る恐いものです。
例えば、コントロールパネルのボタンが利かなくなったと思ったら、原因は基板
に半田付けされたコネクター端子が半田クラックを起こしていた、なんて体験が
あるのは館主ばかりでは無いでしょう。
(原因はコネクターの抜き差しの繰り返しによる応力疲労です。)
また、年月が立つに従って半田もモロくなってきますから、温度変化等によって
自然に見えないレベルのクラックが入ってしまう場合もあったりします。
オールド基板で半田が剥がれて電解コンデンサの足がスッポリ抜けていたのを
見つけた方もいらっしゃるでしょう。(^^)
−まとめ−
今回は初期製造不良で市場に流出してしまった不具合品を紹介させて頂きました
が、実際製造現場では他にも色々と工程内不良が出ているものです。
部品の付け忘れ、付け間違い(極性違い)等、動作チェックで見つかり世に出る
事がない不良があったりします。
故障基板を持つマニアな方はいかがですか?これを機会に御自分の基板を良く
観察されてみては?
不具合が起きたり直ったりする現象はROMソケットの弛み等、大概接触不具合
が原因だったりしますが、こんな目でご覧になれば新たに不具合箇所が
見つかり修理ができてしまうかも知れませんよ。(^^)
館主は過去2回(達人王,ハチャメチャハイター)の端子の半田剥離を見つけて
修理しています。
(クリーム半田量が不十分で剥離が発生した、初期製造不良の可能性が極めて
高かった事を確認しています。)
まあ、そのうち「指1本で基板を直そう」なんてコンテンツもUP予定です
けれども、不具合箇所を見つけるノウハウなど館主なりにそちらで紹介して
みたいと思っています。
最後に、
ICの不良,半田不良はメーカー責任です。
取り扱い不具合、過電圧印加等は出荷から最終的に中古として基板屋さんに
入荷するまでの使用状態,流通過程で起きる可能性があります。
皆さんが全く悪く無いのに基板が不具合を起こす場合が往々にしてあります事、
覚えておいて下さいましたら。(^^)
普通、部品不良や製造不良はメーカーが自社責任として無償交換するもので、
不具合を起こした責任元が判明すればそこで発生費用を負担するのものです。
基板屋さんに検品不十分に起因する不具合流出責任がある場合もあるでしょう
が、まずは皆さん、故障した基板を修理に出す前にもう一度状態を確認して
おきましょう。
館主は職業柄、製造不良(または初期設計不良による信頼性不十分による故障)
を修理したメーカーがその費用を客に請求する行為が嫌なのです。
まあ、今の家電業界等大概のメーカーは面子がある手前そうするのかも知れ
ません。
「その為に保証期間がある」と弁護されてしまうかも知れませんが、期間さえ
過ぎればやはり費用は客負担になりますしね。
究極で言えばコストダウン目的で保証期間の1年だけ持つ信頼性仕様の製品を
設計されてもユーザーは判らないで費用負担するのでしょう。
数カ月使用したビデオが壊れたのを調べたら故障部品は安いゴム質のもので
あったけれど、保証期間内なので修理に出したら「その部品は保証対象外だ」と
言われて修理費用を請求された、なんて馬鹿みたいな例があったと聞きます。
余談ですが、1年で壊れると言う某家電の「○○ータイマー」の話が有名ですね。
信者の方には申し訳ありませんが、ビデオとCDプレイヤーが1年弱で故障した
自分の体験から、どうも個人的にこのメーカーの「品質が良い」と言う企業
イメージは戦略上作られているような感じがします。
このメーカー、ゆくゆくは社内生産に取り込む為にASSY部品の注文を出す事
を盾に下請けの製造技術の提供を要求(以下略)
なる程、製造技術力が付いて「技術の(以下略)
…
…なんか業界こいばな風の展開になってしまい申し訳ありません。(^^;;
節操無く基板に関係無いオチになってしまい少し反省したところで
今回はこの辺で。
by館主
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