| −こいばな第6話−
 
 漢二人のタンデム基板ツアー
 
さて、既に7年程前の出来事であろうか。
 館主の率いる仲間内による基板屋さん巡りが目的の定例秋葉原不定期ツアー、
 コトの始めはW氏とのタンデムツアーが始まりだったような気がする…。
 (その後最大7人の都合が付いた年は賑やかで…もう暫くは無いかも。)
 
 秋葉原に行くのには交通費と言うものが掛かる。ここ東北の片田舎からだと
 電車でなら往復で1万円は掛かる。…赤貧な館主にはきつい事この上無い。
 
 …そこでふと館主が思い付いたのは、
 
 「そうだ、2人きりならバイクでも移動が可能ではないか!」
 
 そう、館主の計算では高速を使用せずとも
 (注:バイクは高速を2人乗りできません。)片道4時間と1,800円の
 ガス代で秋葉原に行けるのではないかと考え付いたのだった。
 しかも駐車場の心配も無く、都内の移動も楽チンで良いことずくめのはず。
 
 …ただいつもと事情が違ったのは、たった1つ
 12月中旬の極寒時期だった事
 である…。
 
 早速W氏にこれを提案したところ、バイクと言うものには無縁なW氏、「極寒」が
 どれ程のものかを知らないままに2つ返事でOKしてくれた。
 「ええと、寒いのでなるべく厚着をしてできれば皮ジャンパーなど着て頂ければ…」
 と注釈を入れたのは館主のせめてもの良心のかけら。
 …
 実はバイク乗りなら判るのであるが、車乗りの言う「寒い」とバイク乗りの言う
 「寒い」は全く次元の違うレベルで寒さであり、感覚が違うのである…。
 … … … … … … …
 
 さてツアー当日、朝6時(日の出前)に出向いたW氏宅で館主が見たものは、
 セーターや皮ジャンパーを着込んで着膨れした完全防備なW氏。
 館主が思わず「おおお、厚着しましたねえ!」
 と声を掛けた程。
 W氏、館主の言っていた「寒い」の本当の意味に、この時点ではまだ気付いて
 いない様子。
 
 早速R6号を南に向けて出発。
 お揃いの黒の皮ジャン二人連れは、傍から見れば
 ちょい怪しめな新宿歌舞伎町関係者。
 …しかし、流石の館主でもこの日の寒さは半端で無い事に気が付いた。
 何故かとても寒い。
 さすがのバイク乗りでもこれはちょっと計算が違う。
 走り出して程なく、タンデムシートからW氏の悲鳴。
 
 「うう〜、… さ、寒いいいいい… …」
 
 「いや、とにかく日の出になれば、少しは暖かくなるかと…」と励ます館主。
 
 …だが、日の出になって気が付いた。なんと空には雲一つ無い晴天。
 …と、言う事は…
 全国的に高気圧が張り出している典型的な西高東低の気圧配置であることは
 想像に難く無い…。よりによってまあこの日ときたら…
 
 途中茨城のセブンイレブンで休憩、ふと道路の温度標識を見ると…
 …「1℃」と表示されていた。
 「い、いやあ、きょ、今日はこ、高血圧が張り、出しているから…」
 と言い訳する館主。寒さのあまり思考能力も停止気味。
 
 それでもなんとか10時頃には無事秋葉原に到着。
 秋葉原の裏路地にバイクを止め早速行動開始…
 しかし既に一日の大半の体力を使い切った気分。
 
 トライさんに立ち寄る等で5時間程費やし、購入した基板をバイクのトランクに
 収納、早々と帰路に付く事に。
 
 …しかし帰り道すがらW氏、今度はあまり口を効かない。
 ふと見ると、もう目がうつろ。
 生まれて始めての極寒の洗礼にすっかりグロッキーな様子。
 「これはまずい!なんとか一刻も早く戻らなくては…」…あせる館主…
 しかし、今度は道路が混雑すること。
 強引に車の脇をすり抜ける強行突破作戦に出たが、これもW氏にとっては
 初体験。
 
 「ううう、恐いいいい…」
 
 すっかり日が落ちてからやっとのことでW氏宅に到着。
 既に目がイッているW氏。
 荷物を分け早々においとましたが、W氏、速攻で風呂を沸かし待ち切れずに
 入ったぬるま湯風呂が…この時ばかりはとても熱かったとのこと…。
 
 これを機会にW氏は、館主がいくら
 「バイクは安いから又タンデムでツアーしましょう!」
 と言っても決して乗ってはくれなくなり、一言「いいっっ!」とだけ返事をくれる
 ようになったのである。
 人間、つくづく学習能力がある事を改めて認識した館主なのであった。
 
 … … … … … …
 
 悲惨な思いをしたW氏に合掌…でも、館主に取っては良い思い出です。
 それでも館主は
 「…また懲りずに又W氏と一緒にタンデムで基板ツアーしたいなあ…」
 と実は今でも密かに思っていたりしますが。
 
 ああ、つい懐かしくて長話ししてしまいました。(笑)
 
 
 
−館主コメント−
 昨年秋、久しぶりにW氏とタンデムで会社の芋煮会に出掛ける機会が
 ありましたが、集まった会社の女子社員達から
 「あの2人の仲、なんか怪し過ぎるわよねえ…」
 と囁くかれていた事実を後日知り、うっかり「やはり」と思ってしまった
 館主なのでございました。
 
 
 
 
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