−こいばな番外編第7話−
学生寮日記

二十年二昔…

さて、今週は基板ネタから離れて自由な気分で書かせて頂きたいと思います。
どうも最近、コンテンツは必ず基板ネタにしなくてはと言う気負いが大きかった
気がします。
まあ、少し気分転換。たまにはバカ話をさせて頂きましょう。

… … … … … … … … … …

「オールドゲームのレビュー」のコンテンツを読まれた方は既に御存じになるかと
思いますが、館主が学生時代に住んでいたのは学生寮です

さして裕福ではないのに東京の学校なんか受かってしまったのですから家が大変
でした。アパートでの独り暮らしを経験してみたかったのですけれども、それは
できない相談。
幸い、い○き市営の学生寮が川崎の○田にありましたのでそこに入寮。
少しでも家を援助する目的で奨学金を貰いながら無事卒業した次第です。
都内の学校に通う同郷い○きの連中と同じ飯を食い、六畳一間(二人一部屋)を
当てがわれながらも楽しかった日々…

…なんか、けなげな感じがする出だしでとてもグーですね。
ですが、いまだに誰にも話さずに極秘のままだったりする事があります。
ここだけの話、皆様にだけはこっそりと白状致しますが、

奨学金の殆どはゲーセンで消えてました。

さて、それでは学生寮で起きた出来事などをこれから幾つか紹介致しましょう。
皆様にお願いですが、既に15年以上経った事です。ヤボは言いませんよう。
なにせ実際にあった出来事をお話しするのですから…



出来事その1.雪遊び

1984年1月頃、四年生卒業間近の館主。
(四年目と言った方が正しい寮生もいました。)

早朝目を覚まし、ふと3階の窓から中庭を見下ろすと、一面の雪
(この年東京は大雪でしたね)
…暫く眺めているうちに、館主ふとあるたくらみを思い付いた。

思い付いたら速実行、同じ部屋のNちゃんを起こす事に。
「おう、おぎろ、てづだえ!!」

… …
今でもそうですが、館主標準語とい○き語を使い分けていたりします。
今回の話は同じい○き出身の学生同士の話ですのでリアリティを出す為に敢えて
い○き語を使わせて頂きます。意味が判らない場合にはお知り合いの
福島県人にでも聞いてみて下さい。
… …

やにわに起こされて不機嫌そうだったNちゃんではあったが、館主の計画を聞き
「やっぺやっぺ!」(^O^)
と大喜び。

早速中庭に降りた二人、一面の雪。

新雪の上、まずは中庭を一直線に横断してみる。
そして中程で中位の円を描くように歩いてみる。
今度はぐるり大きな円を描くように歩いてみる。
最後に大きな円の外に後光のような線を描くように歩いてみたりする。
手分けして進める緻密な作業…
こう言う時は息が合う同室の相棒だと円滑である。

… … …

約10分程で中庭に完成したのは、かの矢○純一氏でさえ驚愕するであろう
巨大な

ミステリーサークル。

完成の喜びを分かち合う二人。
部屋に戻り窓から見下ろしてみると…これまた絶景かな…。
エレガント極まりないアートワークは神秘の後光が射しており、学生の分際では
ありながら若布酒で一杯きこしめてみたくなった程。

…やがて他の部屋の寮生も起き出して来た。…そこかしこ窓を開ける音がする。
これ程期待で胸膨らむ瞬間があったであろうか。

「おっ」
「なんだあ!」
「あははははははははは」
「うおおおおおおっ!?」
「だれだこんなのかいだの!?」

成功。
そこかしこから聞こえて来る漢二人を称える賛美の声。
これはとても嬉しい。苦労の甲斐があったと言うもの。

「あっくんだろ」

…何か聞こえてきた。なんかとても悲しい気がしてきた。
こんなにも真面目な館主が普段裏でそのように思われていたとは。

アートワークについてはシラを切るつもりにしていた館主であったが、
結局は真犯人扱いされ、汚名を着せられる事になってしまった。
折角のオブジェは後に踏み潰して消す事に…

「…犯人は俺じゃない!俺とNちゃんなんだ!
と心に思いながら。

世の中不当に人を疑うヤツがいるものである事をこの時知った館主、
「身から出た錆」などと言う自分に都合が悪い諺など当時は知る由もなかった。

… … … … …

雪を見て今度は隣部屋、K士舘に通う同学年のWが行動に出た。
洗濯場からタライを持って来て雪を山盛りにする。

タライを持って後輩のいる各部屋を回るW。

「おう、お土産だ!」

そう言っては次々にドアを開け、雪を部屋の中に放り込んで行くW。
嬉々とする顔。
先輩のする事、後輩は逆らえない。
「しまった!その手もあったか!」と密かに悔しがる館主。

勢い余って今度はトイレの朝顔に雪を詰め出したW。
もう誰も彼を止められない。
相変わらず嬉々としているW、後の事など蚤の糞程も考えてはいまい。
朝顔でも物足りなかったのか、
…今度は和式便器にも雪を詰め出した。
パンパンと鳴る、雪を固める音…。

そろそろばかばかしく思えるようになった頃、異変に気付きそこに来たのは
寮長
唖然と立ちつくしている。

寮長:「…あ…、なにやってんだ?」

困惑したその顔。
だがWは全くひるまない。大真面目に

W:「ああ、こうすれば綺麗になるんです。」

…なるはずがない。
しかし寮長、あまりの大真面目ぶりなそのWの剣幕に押され

寮長:「…あ…そうが… … …」

そのまま引き返して行ってしまった。
人の嫌がるトイレ掃除をしてくれているんだと無理矢理に感心してくれたご様子。
Wの剣幕のお陰で叱られずに済んだようである。
… … … …

今でも雪が降ると学生当時の汚れ無い雪遊びを思い出したりするのであるが、
これを上回る高貴な雪遊びを未だ思い付けないのが何とも悲しい館主なので
あった。

出来事その2.シンナー事件

1983年夏の夜。
夏休みも始まり、大分寮生が帰省してしまった頃。

「おーいあっくん、面白えぞ!いぐべいぐべ!」

やにわに廊下を走ってきたWが息せき切って切り出す。
話を聞くと、どうも近所(歩いて数分)の三○中学校の水泳部部室で
シンナー遊びをしている最中の中学生グループがいるらしい。

W:「捕り物すっぺ!」

こんな面白い話は無い。
勿論桜の御紋関係に突き出すようなヤボをするつもりなどさらさら無い。
いきなり
「K察だ!」
と入り口を開けて、中の連中が狼狽する顔を見てみたいだけなのだ。

早速階段を駆け降りる二人。
…たまたまそこを通り掛かった後輩数人。

後輩:「どうしたんすかあ?」
W:「ああ、これこれしかじか…」
後輩:「おもしれえ!!!一緒に行ぎます。」

かくして寮を飛び出した寮生達。
目指すは三○中学校水泳部部室。

校門から堂々と入り込むと、直ぐ目の前が部室。
左手に周囲を鉄条網で囲まれたプールで月が静かにたゆたっている。

笑いを押し殺しながら摺り足で部室に近付いてみると…
中からすっかり出来上がった意味不明な声が聞こえてくる。
声から3人組である事も判った。

おもむろに戸に手を掛けるW。

ガラガラッ!!
「…K察だ、出ろ!!」…(^O^)

一瞬静まり返る場。漂うシンナーの臭い。

…やがて一人が出て来た。
寮生を見るなり脱兎のごとく寮生の合間を抜けて逃げ出していった。

残る二人は観念した様子でフラフラと表に出てきた。

少年A:「あ、いわ、どーもー…」

…すっかりテンパっている。
狼狽しながらもテレ笑いを浮かべ、場を取り繕うとしている。
足下がおぼつかない。

「はははは、わりいわりい!そこの学生寮の者だけど驚かして
 みたくて。(^O^)
 たまたま前を通り掛かったら声が聞こえてきたものだから。
 …でも、シンナーなんか吸ったら駄目だろ?」

少年B:「あ、はええ。ごめんなはい…」

?この人は何故部室の前を通り掛かったのだろう?」と言う素朴な疑問など
今の少年に露程も思い付けるはずがない。

かくして奇襲に成功した寮生達。
聞き出した話から、どうも御近所のワルガキだった模様。
(水泳部員とは何ら関係がありません)

気を付けて帰れよと優しく声を掛け、全員嬉々として寮に戻るのであった。

だがその直後…

W:「さあで…邪魔者はいなぐなったし、一風呂浴びっぺ!」
館:「おー!!」

そう…
実は…
少年が酔った頭では思い付けなかった疑問…
その答えは…

実はW、プールに入ろうとして部室の前を通り掛かっていたのである。

夏休みに入り、寮の共同風呂が休止していた事から、寮生は銭湯に行くしか
無かった。
しかし貧乏学生に180円の入浴料は厳しい…。
そんな訳で、

三○中学校のプールは一部寮生の便利な代替銭湯

になっていたのである。
なんてえ広くてゴージャスな大浴場!

周囲が鉄条網で貼り巡らされているとは言っても、一箇所だけ鉄条網が切れて
入り込める所があった…。
南京錠の掛かった入り口の扉の上である。
さすがに開け閉めする扉にまで鉄条網は貼れなかったのである。
盲点は探せばあるものである。

… … …
この騒ぎがあった後日、
また風呂に入ろうとしたWと、匿名希望の館主の二人。
プールを訪れたが…
(途中職務質問されたらアウトだったかも知れません。…素っ裸にタオル一枚で
臨戦状態の格好でしたから…)

何か物足りない。

月だ、月が映っていないのだ。

…どうやら盆休み前とあって、学校当局が水を抜いてしまったらしい。
「水を抜くな!」と不満を言い合いながら来た時のままの格好で引き返す二人。
夜風が心の中にまで吹きすさぶ。

悪い事はいつまでもできるものでは無い事を悟り、また一つ社会勉強をした館主
なのであった。

… … … …
ええ、

皆様は決して真似しませんよう。
プールは泳ぐ目的以外に使ってはいけません。
実は館主、これ以外にも過去プールから上がるのが面倒でトイレ代わりに
(とっっても、暖かいんですぅ。)

いや、何でもありません。
次の話にしましょう。


出来事その3.仮装行列

寮では毎年夏に寮祭が行われる。
御近所の方々もこの日ばかりはバザーに訪れ、寮生が出品した中古の
ウオークマン(1000円)やドライヤー(500円)などを入手していき、
結構盛況なものであった。

だがある年の寮祭に限って…
寮生による仮装行列の企画が上がった…。
寮から駅まで一回り仮装行列してこようと。

はて困った、何の格好をすればいいのであろう…。
周囲の寮生は思い付くまま
「ニコちゃん大王」「グレートゼブラ」「トンボ」「バンドマン」等々
仮装の格好を決め出している。
館主はなかなか良い案が浮かばない。

そんな中誰とも無しに…

「あっくんはオカマの格好が良いべ!!」(^O^)



…何と言う事であろう、面白がるのは構わないが、さすがにそれは漢のプライド
が許さない。(館主そんな趣味はありません)
当時身長171cm、53Kgの細面だった館主、更に床屋嫌いだったものだから
すっかり髪長。しかも色白な体質。
…そんな風貌が理由で安易な思い付きが出たようなのである。

「なあ、やるべよ!他に思い付くものはあんのが!?」

「…ねえべ… …」

自分の発想の貧困さをこれ程恨んだ事はあるまい。
結局なし崩しでオカマの勧めを承諾する形に誘導されてしまった。
(今考えても、恐ろしく安直な案でしたねえ…)

当時相○原にいた従姉妹に借りた恥ずかしいドレスとハイヒール等々。
ついでにご近所から買ったパンティーストッキングやら簡単な化粧品やら…
…どうしてこんなにも女物を買い揃えるのって恥ずかしいのであろう。
ひょっとしたら自分は世の役に立っていない人間かも知れないと、
悲しくもなってきた。

…やれやれ、仮装行列当日の館主の格好、決してお話は致しますまい…。
今はもう仮装した寮生全員の記念写真一枚だけ残し、行進途中で
撮られた写真は全て破棄していたりする程のおぞましいもの
だったりしたものでして…。

… … …
行列の準備が整った休日の昼下がり。
先頭はイエス・キリストの格好をしたH先輩

…準備の際、先輩から赤い絵の具を渡されて「身体中に塗ってくれ
と言われ、言われるがまま筆で塗りたくってはみたが、…どう見ても十字架に
縛られたイエス・キリストの痛々しいながらも高貴な面持ちとは程遠い。

素肌に派手な流血のつもりの身体中赤の迷彩色…。
段ボールでできたチープな十字架。
パンツ一丁になり、腰の周りに衣装代わりのタオルを巻いた格好。
お経を書いたら間違い無し、耳無し○一。

…怪し過ぎる。
イエス様を申し分無く冒涜している。
某団体からクレームが付いたりはしないだろうかと心配になる程イメージは掛け
離れていた。


ゾロゾロと行進を始めた寮生達。
景気付けにバンドマンの格好をしたNちゃんがクラリネットを吹き始める。
道中周囲から奇異の目で見られているのが判るのが痛過ぎる。
さしもの自慢のクラムボンもこのような使われ方をされては可哀想と言うもの…

小田急線沿線の一本道を歩き始った時。
…丁度休日部活動の帰りなのであろうか、結構な人数の明大生がこちらに
向かって歩いて来た。

だが、今度は…
皆身体を強張らせていらっしゃる御様子。
今迄とはちょっとリアクションが違う。
我々を一瞥した女子大生二人組などはやにわに180度方向転換して元の道を
引き返して行ったりする。
逃げ道が無い人間が取る行動である。

普通の仮装行列ではここまでは望めない。

そう、
引き返して行った理由は…
行列先頭の男(H先輩)にあった。

振り回す十字架は壊れ、すっかり意味不明なオブジェになり下がり

腰に巻いたタオルもとうに外れ、パンツ一丁の出立ち

体中タトゥーにも劣る派手な赤い迷彩色が塗りたくられ

既にトランス状態で意味不明に身体をくねらせている

後ろに引き連れているのは疲れて怪し気な足取りになったニコちゃん大王等々…

…白昼堂々こんな男が率いる一団が臆せずこちらに歩いて来たとしたら…
アメリカのスラム街のまっただ中で「ニ○ロ!」と
大声で叫ぶ事ができる世界一勇気ある男だって

引き返そうと言うもの。

館主の人生の中でこれ程恥ずかしい思いをした事は無い。
何故自分がこんな連中のような瓦に伍さなければならないのか。


とにもかくにも言える事は、館主の人生に
また一つ汚点が残った
事だけは間違いあるまい。

… … … … …

後日になり館主、寮を出ようとしたところ…

「あ!ほら、オカマだ!!」
「ほんとだ、ヤーイヤーイオカマ!」


館主を指指して言う。
…ご近所のお子様な方々でいらっしゃる。
どうやら「人権」と言う言葉を御存じでいらっしゃらない御様子。
先日の仮装行列を覚えていたのである。
館主、既に言い返す気力も無く、ほうほうの体でその場を去るに。
この一件が館主のかなりの心のトラウマになった事は言うまでもない。

借りたドレスはクリーニングして従姉妹に返す事に。

従姉妹:「どうだった、着れた?」
館主:「ああ、
少し緩かった位だよ、サンキュー。」

…世の中、悪気が無くても人を傷付ける事があるものだ。
まだ自分の方が細身であると思い込みたかった従姉妹には認めたくない現実。
更に出来上がった仮装行列の写真を見た叔母様連中が
「あら○君、U子ちゃんにそっっっっくり!!…従姉妹だね。」
と心無い追い討ちを掛けたものだから…
(館主、美男でも何でもありません)

かなりのショックを隠し切れなかった従姉妹、館主が暫くの間口を聞いてくれる
ようになる為に苦労したのは言うまでもない。

… … …
やれやれ、

…館主、仮装はもうこりごりでございます。(T_T)



−あとがき−
今回は全然基板ネタでなくてごめんなさい。
ですがちょい楽しかった過去の寮生活を思い出して書いてみたくなりました
もので。f(^^;;
…いや仮装の話などは忌わしい限りな思い出なのですが、こうしてみると
何時の間にか良い思い出に変わっているのですから…人間不思議です。

それにしても自分の思うままに文章を書くのって楽しいものですね。
館主、今回は楽しく更新をさせて頂きました。(^^)
最後まで下らない昔話にお付き合い下さった皆様には感謝致します。

                                by館主



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