「おいしい」 「気持ちがいい」 「楽しい」という感覚を積み重ね、増やしていくことで、苦しく辛い記憶を楽しいことで塗り替えていけるし、そういう本能的な感覚をしっかり味わうことで、生きている実感を取り戻し、自分の力にできると考えました。 そしてそれは、今考えてみても、とても有効な方法でした。 実家での約2年の休息期間を経て、私が再び家を出てから1年が経ちました。 いまわたしは、9帖ワンル−ムのこの部屋で、飼い猫と一緒に、おだやかに暮らしています。 誰にも言動を制限されず、自分のペースで働き、安心して眠れる今の生活は、経済的には裕福ではないけれど、私が望んで手にいれることのできた、豊かで幸せな生活です。 過去には、私が精神を病んだことで、離れていった人もいましたが、この3年程の間にたくさんの大切な友人ができ、支えあえるパートナーもいます。 これを読んでいる方の中には、精神的な悩みや苦しみの渦中にいる方も多いと思います。 これまで私が、長々と詳しく目分の経験を書いてきたのは、こんな人間も、ちゃんと立ち直り、生きていくことができたのだという事を示したかったからなのです。 苦しさや不安と戦っていて、先が見えないことで、本当に回復できるんだろうかと、もっと不安になったり、治らないのかもしれないと絶望しそうになったりした時、こんな風に回複できた人間がいたのだから、自分もきっと大丈夫と思ってほしいのです。 私は3年と8か月の間、精神科に通いました。薬に頼らなけれぱ平静でいられない自分を気違いだと思っていたし、3年半の間虐待を受け、その心的後遺症に約2年間悩まされました。それでもこうして生きているし、それは、何も私が特別強かったからとか、恵まれていたからではなく、たった今、そうした苦しさの渦中にいる人すべてに、同じ様に回復の可能性はちゃんと在るのです。 他の多くの人達が感じられないことを感じられて、その重さや苦しみに耐えているというのは、とてもすごいことです。どうしても自分を責め、目分自身を攻撃しがちになるけれど、ほんとうは、それだけのことができる自分を褒めてあげたっていいのです。 |