ドメスティック・バイオレンスから逃れて



[ 9 ]


 それから最後に、その攻撃性を身近な人に向けてしまっている、 ドメスティックバイオレンスの加害者、子供を虐待してしまう親、両親を殴り付けている子供達、そういう人達に伝えたいこと、考えてほしいことがあります。

言う事を聞かなかったから、思い通りにならなかったから、といって人を虐げたり殴ったりする必要などないのです。
 元々、人は自分の思い通りにはならないものです。たとえ、親でも子供でも、赤ちゃんでも、妻でも恋人でもそれは同じです。一人一人違う存在として精一杯、自分を生きているのです。
 それなのに「思い通りに行かない」と、あなたが暴力を選ぶのはどうしてですか?(抑えることもできるのに、怒鳴ったり、相手を傷付けることで何かを発散することを、何かから目を逸らすことを自分で選んでいるのです)
相手は、本当に悪いのですか?虐待されて当然と言う事を、本当にしたのですか?
もしそれが、あなた自身なら、その理由で暴行を受けることを、納得できますか?
人に認められていない、という苛立ちや寂しさを、弱い者にぶつけていないですか?

その事を認められない、自分の弱さから目を逸らすために、人を虐げたり、従わせようとしていませんか?

 どうぞ自分のことに目を向けてみてください。人を殴らなければならない原因が、自分の心の中にあることを知ってください。
 誰かのせいにしても、誰かを殴っても、いつまでもすっきりしないはずだし、何一つ解決しないのです。

 暴力さえ受け人れてしまう(受け人れざるを得ない)相手の存在に、依存している自分の弱さを認めることは、恥でも屈辱でもないのです。それは大事なことだし、自分のすべてを受け入れ認めることが、人から本当の意味で受け人れられることに、繋がっていくのだから。

 血を流している妻や恋人、泣き叫ぶ子供、或いは、怯えてあなたを避ける両親を見て、このままでいいとおもいますか?自分の行為に少なからず疑問は感じているでしょう?
それでもなぜそんなことをしてしまうのか、深く考えるのを避けるために、また暴れてしまうのではないですか?

 一人で考えられないのなら、誰かを頼ってださい。脅しや強制ではなく、どうしていいかわからないのだと、索直に助けを求めてください。友人、親、配偶者、など誰かに相談して、できればカウンセリング、病院など専門機関にかかってください
(客観的に、具体的なアドバイスが受けられることと、アルコール依存症とか、他の何らかの精神的な疾患が要因になっているかどうかも判断してもらえるので、より正確に手助けして貰える)

 人を殺してしまう前に(そんなつもりがなくてやったとしても、あっけなく相手が死んでしまうことは、いつでも有り得るのです)
自分が殺されてしまう前に(自分の行為が、そこまで相手を追い詰めていることを知ってください)、
全て破滅させてしまう前に、解決に向かう少しの勇気と理性を持ってください。

人間は肉体と精神と魂で出来ています。
肉体が疲れたり、病気になるように、精神も疲れたり病気に罹るのは、当たり前のことなのです。

 ただ、肉体は老いて衰えていくものだし、治らない病もあるでしょう。でも、自分の精神が引き起こしてしまった病は、誰かの力を借りたとしても、必ず自分で回復してゆけると思うのです。
人間の魂だとか、老いているとかいうこと無く、すべて同じ様に、崇高な良いものからできていると思います。その魂が訴え掛ける良心の声に、耳を塞いでしまったり、溢れている生命力を時には感じられなくなったとしても、何時でもそれは自分の中にあって、自分さえ再ぴ心を開き、信じることができたら、より良い自分として再生することができると、私は信じています。

[8]一つ前に戻る  [9] 最初に戻る

* 作成 by T.kasai (8/2,2000)   無断転載禁止