ドメスティック・バイオレンスから逃れて



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 パニックを克服するために私がしたのは、次のような事でした。

1.どんな時にパニックは起きるのかを考えてみる。

 私の場合は、暴行の記憶に関するもの(似た人物とか、事件の報道など)を見たときに起きることが多かった。どんな時に多く起きるのかわかってしまうと、自分でもある程度予想がつき、心構えができるので怖さや苦痛が軽くなる。

2.現実を認識すること。

 パニックによって、一瞬過去に戻ってしまった自分に対して、今は安全なところに居るし全く違う状況であること、全てもう終わったのだということを繰り返し言い聞かせて認識させる。
そうする中で、特に注意したのは、 「無理をしない」ということでした。
自分の様子(身体や気持ちの状態)をそのときどきで注意深く見ながら、大丈夫そうなら、少しだけ頑張ってみること。不安のほうが大きければとにかくじっとして、落ち着くまで待つ事にしていました。

それから、神経症的な不安に苛まれたときの私の考え方と対処法としては、まず、回復していくためのエネルギーみたいなものがあるとしたら、私はそれを使い切ってしまって、まだ蓄えが十分ではないから、頼れるものには頼って、これ以上余計にすり滅らさないようにしようと考えました。
私もそうでしたが、精神的な問題を抱えて、悩んでいる人は、自分でなんでもしようとしてしまう、責任感の強い人が多いと思います。でも普段そうして頑張ってきたのだから苦しい時くらい、他の人や物に頼ることも必要だと思うのです。

 病院、カウンセリング、本、薬など、なんでもいいから自分の力を補ってくれるものを探し、試していくこと。何が一番役に立つかは、ひとりひとり違うので、とにかくやってみることが必要です。
 他人から見て、どうであっても―それが自分や他人を傷付けたり害を及ぼすものでなければ―自分の心が楽になれることは、何だってやってみていいんだと思います。

 そのとき大切なことは、薬や、医師やその他のものが、ただ自分を助けてくれるのではなく、自分を救えるのは自分だけだということ、力になってもらうことは必要だけれど、回復しようとする自分がいて、初めてその力が意味を持つのだという事を忘れないことです。
 探し始めたということが、もう回復に向けて動き出せている、生きる力がまだ自分に残っているという証明なのだから、そのことを信じましょう。

 それでも落ち込んで信じられず、マイナスの考え方しかできないときは、考えるのを意識してやめること。そのまま考え続けてもどんどん悪いほうへ突き詰めて、もっと苦しくなるだけなので、考え過ぎない癖をつけましょう。

(なんでも突き詰める癖のあった私は、初めはなかなかそれができなかったので、そんな時は、睡眠薬を使って無理矢理にでも神経を眠らせ、休ませることにしていました)

「エネルギー」を減らさない方法として私がやったのはこのような事でしたが、増やす方法として私がしたのは、とにかく自分を労り、楽しませることでした。
 食べたいと思うものは食べ、疲れたと感じたときは眠り、おいしいとか、気持ちいいという感じを味わうこと。
行きたいところへ行き、会いたい人に会い、その時間を楽しむこと。
ほんの少しでも、やってみたいと思ったことは、とりあえずやってみること。やってみてつまらなかったらやめればいいのだし、楽しかったらもっと続けてみたらいい。私の場合、それは絵を描いたりすることだったけれど、料理をする、犬小屋を作る、散歩をする、なんでもいいのです。

料理を作っているうちに、新しいメニューを覚えたくなったら、料理教室を探して通ってみてもいいし、犬小屋ができたら、そこに住んでくれる新しい友達(犬)を探しに行きたくなるかもしれない。近所を散歩するうちにもっと遠くへ行きたくなったら、旅行の計画を立ててみる。 (実際すぐ行かなくても、細かく計画を立てるだけでもいい)特別なことじゃなくて、小さなことでいいから、やってみたらそこから少しずつ、気持ちも行動範囲も広がっていきます。

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* 作成 by T.kasai (7/28,2000)   無断転載禁止