「 今日も停滞日和 」
過去の日記一覧です。
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ネパール帰り

(05.12.13記)

 11月頭より12月7日までネパール・トレッキングへ出掛けておりました。
 今年はマオイスト(反政府活動をしている毛沢東主義者)が一方的な停戦宣言を出し、ヨーロピアンを中心にトレッカーもだいぶ戻ってきたなあという印象です。一昨年がイラク戦の影響もあり最も人が少なかったみたい。マオイストはトレッキングの異邦人は攻撃対象としていないが、山で会うと政府側の入域料相当のドネーションを払わなければならず、貧乏トレッカーには懐が痛いところ。でも領収書を発行し、次のマオイスト・チェックの際はそれでOKなのだから、いわば政府が2つあるようなものか?
 政治的には(経済的にも)問題が多い国ですが、ヒマラヤの峰々はそんな人間社会とは全く無縁のように輝いておりました。
 今回はバスに揺られての長旅。夜行バスなのに真夜中はアーミーのチェックポイントが封鎖中で、4時間ほど止まったままの状態のバスでの仮眠。ローカルバスで進むダートは車内中砂埃で溢れかえり、機材もすごいことに。まあ何はともあれ無事日本に戻ってきました。
 山と溪谷社から出ております「2006年カレンダー・美しき世界の山」12月にアマダブラムの写真を掲載しております。まだ2006年
カレンダーをお決めでない方は是非ご覧戴き、書店にてお買い求めください。(税込価格¥1,050-です)

パキスタン大地震のこと

(05.10.17記)

 

 10月8日に起こったパキスタン大地震、テレビや新聞等で報道されているが4万人を超す被害者が出ている。道の寸断による生活物資不足や家屋の倒壊、衛生状況の悪化に伴いさらに被害は広がる模様だ。これから厳しい冬の季節も到来するので大変気がかりだ。

 パキスタン北部山岳地帯は言わずと知れた世界の屋根、ヒマラヤの一角にあり、周辺には8000mを超えるヒマラヤジャイアントを5峰を数える。カラコルム・ハイウェイも落石等で寸断されている様子。興味を持っている地域の出来事だけに詳しい状況を知りたいのだが、テレビで流れる情報は日本人被害者や大都市部のものばかり。山岳部の状況が伝わってこない。

 実は来年あたり、カラコルムのトレッキングツアーを予定していることもあり、どうなることか気に病んでいる。ネパールのみならず全ヒマラヤを撮影対象にと思っているので、今回のような災害はとても気になる。

 知り合いのライターさんのブログでアフリカやパキスタンを撮影している船尾修さんが義援金を呼びかけているのを知った。船尾さんとは以前、チャーター便を使ったネパール・トレッキングで際一緒になり、お話しした事がある。以来気になるカメラマンの一人でもある。今回の災害に際し、いてもたってもいられなくなった彼は11月8日に現地に飛び、義援金をパキスタン山岳会経由で渡してくれるとのこと。郵便振替にて受け付けているので、この災害に対して何かしらの行動をしたいと思ったいる方は是非ご協力をお願いします。(詳細は→船尾修H.P.へ) 

夏も終わり

(05.8.24記)


 今年の夏も早くも終わろうとしています。取材で主に北アルプス南部を動き回っていました。それもほとんど5万分ノ1図の上高地、槍ヶ岳のエリアでしたが。
 取材先では何人か新しく知り合った方もあり、また久しぶりの再会となり旧知を深めた方ありで夏山を満喫しておりました。取材先でお世話になった山小屋の方々にもこの場をお借りして御礼申し上げます(見てないか。。。)。
 今年の夏山の天候は前半の外れに外れた天気予報、そして夏山らしく朝の数時間のみの青空、午後の雷雨。まあ夏山ってそんなのものだよねえ、って感じでした。個人的には合計しても1時間ほどしか雨具の必要な時間がなかったので、まあ恵まれていたのではといった感じ。これで台風の直撃が少なければいい紅葉になりそうな気はしますが、さて今年の紅葉は如何なものでしょうか。
 今年は5月の低温、6月の小雨の影響で残雪が残っており、何年か前にもあったように雪から顔を出したばかりの枝は新緑、夏の日をたっぷり浴びた葉は紅葉。一挙両得というのかまあ不思議な世界になりそうです。

いよいよ夏山

(05.7.16記)

 
 さて、いよいよ梅雨明けも秒読み段階に入り、夏山シーズンの到来です。今年はどんな天気になるか?不安半分と楽しみ半分といったところ。山岳雑誌の取材で梅雨明けと同時に北アルプス・西穂高岳に入ります。その後は夏山シーズン中、山中をさまよい歩いています。順調にスケジュール通りいけばいいのですが。これは天気次第。何年か前の夏山では天候がぐずつき、ひとつの山小屋に一週間も滞在したこともありました。(知り合いのカメラマンでは昔3週間滞在という人もいましたが)
 夏山というと昨年の7月25日前後もひどかったですが、雷を思い出します。雷、おそらく人一倍嫌いな質だと思います。運良くこれまで飛ばされたことはないのですが、かなり感じやすい体質で雷雲探知機なみかそれ以上に敏感に体が探知します。どうなるのかというと髭や顔の産毛がまずむずがゆくなり、さらに近いと額の辺りがビリビルしびれてきます。こうなるともういつ落ちてもおかしくない状態。我先に小屋の安全な場所に逃げます。ピッケルなどの金属類が鳴り出し、髪の毛は逆立ち、もういい気持ではありません。
 というわけで雷だけは避けたいのですが、夏らしい夏。これには期待したいと思います。
 今年の夏山も皆さんとどこかの山でお会いできるといいですね。その際はお声掛け下さい。
 

山小屋のネット事情

(05.6.11記)

 いま北アルプスの南部エリアの山小屋では無線LANでネットワークを構築しています。何年か前から試験的に行われていた信州大の遠隔医療システムを発展させ、NPO法人として立ち上げたものです。急病人など発生した際下界にいるお医者さんに相談したり、H.P.ではライブカメラの映像配信など北アルプス南部の情報が載っています。(→北アルプスブロードバンドネードバンドネットワークH.P.へ)興味のある方は覗いてみてください。

 北アルプス山中からパソコンで原稿書きをして出版社へ送稿するなど、以前では考えられなかったことができるようになりました。ワープロでフロッピー入稿していたころを考えると(さらに以前は手書き原稿)雲泥の差です。私のような地方の執筆者にとって締め切り当日までに送稿すればいいのは大変ありがたいことです。(以前は前日19時までに郵便局へ持っていかないとアウト!)しかし天気の悪いときはともかく、撮影等で日中は過ごし、夜は原稿書きでPCに向かうなどなかなか山中にいるとは思えないようなことをするようになりました。まるで新聞記者のようです。最も重要な写真原稿は相変わらず郵送に頼っていますが、時の流れとしてこれもそのうちデータ入稿となっていくのでしょうね。

山岳遭難の縁

(05.5.22記)

 
 僕のホームグランドの穂高では、起きて欲しくはないのだけれど毎年遭難事故が発生しています。
 遭難にシーズンはないものの一定数の登山者に対しての事故発生率が高いのがこの5月末から7月初旬にかけての時期。春山から夏山への移行期にあたり、下界では半袖でもOKの過ごしやすい季節ですが山では残雪も残り、3000mの穂高ではまだ雪が降ることもある時期です。当然ピッケルやアイゼンといった冬山装備が必携となります。
 北穂高小屋にいると付近にいる別の登山者や同行者によって事故の第一報が入ることもあり、警察とコンタクトをとり小屋のスタッフが救助に向かいます。僕が小屋にいるときは出動することもあり、何年か前の6月も北穂沢で滑落事故が発生し、出動要請を受け現場に向かいました。
 ゴルジュの上の遭難者のいる現場目指し北穂沢を下降中、別の登山者からインゼルの反対側に動けない人がいると知らされ、ルートを変え行ってみるとゴルジュの遭難者の同行者。二人パーティで一人が滑り落ちてしまい、それを間近に見ていた彼女もその後滑り、すぐ止まったものの怖くなって動けなくなっていたのでした。ここでさらに救助要請を受け、後で別の人が来るから動かないでと言い残して、第一番目の人のいるゴルジュの上へ。
 現場にはたまたま居合わせ、連絡してくれたとある山岳会のメンバーが手当を済ませて付き添ってくれていたのでした。この山岳会の予定は奥穂高岳への縦走でしたがレスキューに協力したため予定を変更して北穂沢を下りることに。その際あろうことか2番目の人がトップを巻き込んでスリップ。巻き込まれたトップがインゼルの岩に・・・。この日三件目のレスキュー発生。無線連絡を受け、付き添ってくれた山岳会メンバーは現場へ駆け上がっていきました。たくましいなあと思いながら見送ったのでした。こちらは一人目に付いて県警とコンタクトをとり、ヘリの誘導。ホイストで順番に三人を収容し作業終了。
 そんなことがあって数年後、涸沢で山岳雑誌の取材中、前回のこのコーナーに書いたことを涸沢ヒュッテの売店で聞いた編集部員が「私も誕生日に北穂沢で遭難事故があったんですよねえ。」と言って話し始めたのがこの日のこと。「えー。じゃあ、あの現場にいたのは渡辺さん??」あのたくましいなあと見送った後ろ姿はまぎれもなく彼女でした。人の縁とは不思議なものです。

 あれから10年・・・

(05.4.15記)

 忘れようとしても忘れられない事があります。嬉しいことや悲しいこと辛いことや苦しいこと。今からちょうど10年前の出来事もそんな出来事のひとつです。
 今年も間もなく涸沢ヒュッテの戸開けに参加しますが、その時も毎年の行事のひとつとして涸沢へ入っていました。日本山岳写真集団展が東京であり、どうしても下らなければならず、4月19日に下山することにしました。屋根を伝わる雨音で朝目覚めるとさすがに気分は憂鬱。こんな日に下山かいやだな。そんな時の予感は当たるもの。またすぐ戻って来る予定だったので撮影機材は預けてほとんど空身で歩き出しました。
 長靴履きのツボ足歩行でいくと膝までもぐる重い雪ですぐワカンを着用。さらに下ると上から今まで聞いたことのない「ドーン!」という爆発音がし、振り向くとあろうことか雪が押し寄せてきます。「雪崩だ!まさか、まさか。夢だよなあ。夢だといいなあ。」と思いながらも体はひたすら雪の上を走ります。時折振り返りながら。しかしすぐ雪に追いつかれ・・・雪に巻き込まれました。意識がしっかりしていたので流されながらも体勢を立て直し、なんとか脱出。再びヒュッテに逃げ戻ったのでした。
 あれから10年。あの30歳の誕生日のことを決して忘れることはできません。今を生きている事に感謝。生かしてくれた穂高に感謝。自然のリズムに逆らった行動をとると遭難する。死と生が常に隣り合わせだということを身をもって知りました。

春間近か

(05.34.15記)

 このサイトを立ち上げて一年経ちました。あまり更新出来ず、、、飽きずに何度も訪れてくださった方々に深謝深謝。少しずつ手を入れたいと思いますので、今後も飽きずに遊びに来てください。

 このページでもご案内いたしましたが、3月の日本山岳写真集団展には沢山の方にご来場いただきありがとうございました。次回は2年後の40周年記念展を予定しております。

 冬の間は僕のメインフィールドの穂高は雪深く、山行の回数もめっきり少なくなります。

 自称冬眠生活と言っているのですが、冬眠中とはいえ何かとあわただしい生活を過ごしていました。今年の冬は特にモノクロームのプリントに精を込めていました。いくら時間があっても足りないと思うのは僕だけではないのでしょうが、冬の間にしなければならないことも終わらず、ちょっとあせっているところでもあります。

 そうは言ってもいよいよ4月。僕にとっての活動期の始まりです。又今年も山でどんなシーンが待っているか。今年は天気との巡り合わせが良いといいなあ(昨年はけっこう苦戦していました)。

 今シーズンも槍穂高を中心に山中をうろついておりますので、見かけましたらお声掛けください。          

  

   

   

  集団展のお知らせ

               (05.3.1記)

 早いものでもう今年も二月が過ぎました。関東地方や北陸では春一番も吹き、春の足音ももうそこまで聞こえてきています。
 この3月10日(木)〜17日(木)の間、私の所属しております日本山岳写真集団の写真展、「第29回 日本山岳写真集団展」を東京・銀座の冨士フォトサロンにて開催いたします。今回僕は紅葉の穂高の写真、全紙5枚を出展しております。お近くにお立ち寄りの際はご来場ください。

マ冨士フォトサロンH.P.へ

暗室籠もり

(05.2.16記)

 昨年の山小屋シーズン終了後以来の近況報告です。ご無沙汰して申し訳ありません。何人かの方からご心配及び叱咤のメール等をいただきました。取り敢えずは生きながらえておりますのでご心配なく。
 10月下旬から12月上旬までネパールトレッキングに出掛け、年末年始は蝶ヶ岳。下山は久しぶりに暗くなるまでラッセルをして冬山の厳しさを感じてきました。
 ここの所は無精して溜めていたモノクロのプリントにチャレンジ。そのうち雑誌やこのHPにも載せたいとは思っていますが、首を長くしてお待ち下さい。久しぶりに集中して暗室に入ると忘れていた何かを思い出します。暗室独特の酢酸の鼻を刺激するにおい。初めて暗室に入った日、現像液に入れた印画紙から像が浮き上がってくる時の感動。うまく言えませんが、初心に戻ることの大切さのようなもの。そして暗室の引き伸ばし機に映し出された自分の出会ったシーンとの再会。カラー以上に自分の撮った写真を見続けることから生まれてくる写真への想い。
 なかなかプロとしては、モノクロは仕事に成らないのですが、写真表現の大切なチャンネルのひとつだと思います。今年も5月にJPS展があり、会員作品に出展しますので、見にきてください。テーマは「私のこの一枚・モノクローム」です。そんなこともあり現在は暗室に籠っています。

秋から冬へ

(04.10.19記)

 9月に稜線から始まった紅葉も日に日に標高を下げています。穂高の稜線では15日には雪も降り、15センチの積雪。いよいよ穂高の稜線では秋から冬へ季節が足早に過ぎていきます。とはいえ今年は例年よりかなり暖かく感じる10月。次に降るのが雨ならこの雪も消えてしまうことでしょう。
 この時期は一夜にして50センチ以上雪が降ることもあり、そうなるといよいよ根雪。長い冬の季節の到来です。
 そして今年の穂高通いも間もなく終了。ポストモンスーンのネパールへ行ってきます。


草紅葉

(04.9.22記)

 彼岸入りというのに各地で真夏日を記録し、まだまだ残暑が続いています。そんな今年は例年とはちょっと違った秋の山になっています。暑い都会と違い、3000メートルの穂高ではさすがに一足早く紅葉の季節を迎えていますが。
 本格的な色づきが始まる前に夏の間、咲き誇っていた高山植物が色づく草の紅葉。つまりは草紅葉(くさもみじ)が見られるのが例年の秋の山。ところが今年はどうしたものか、草紅葉と同時に本各的な紅葉が稜線で始まっているのです。
 夏の日照り、渇水で冷え込めばいつでも紅葉を始めようとしていたのでしょうか。例年より一週間から10日早い本紅葉のスタートです。

 ナナカマドやダケカンバなどの色鮮やかな紅葉とは趣を異にしますが、崖錐(がいすい)の斜面を覆っている高山植物が萌葱色に染まります。樹の紅葉と比べてしまうと非常に地味ではありますが、僕の好きな光景のひとつです。
 夏の間、緑色に覆われていた岩壁もこの草紅葉の季節を過ぎると、色がなくなります。特に曇った日など灰色一色の世界となり、今にも雪がちらついてくるのではと思わせるような薄ら寒い山になってしまうのです。もっともそれはそれでしんみりして個人的にはいいのですが。

 さていよいよ紅葉が始まりました。バラバラに始まっているので、全山紅葉の山にはならないかもしれませんが、足早に過ぎていく秋を追って山を駆けめぐっています。

 

枯れ紅葉

(04.8.23記)

 連日の猛暑も収まり、少しずつ秋の気配が漂ってきました。3000メートルの稜線では間もなく初氷となり、短い夏も終わりを迎えます。
 夏の終わりのこの季節、山の緑にちょっとした変化が見られるのをご存じですか。木々の枝先の葉が所々黄色くなっています。そう紅葉しているのです。でもこの紅葉は、秋の紅葉の始まりではありません。夏の間、たくさんの陽光を受け光合成をしてきた葉の一部が、風や虫などにやられて痛んでしまい、その役割を終えて枯れてしまったもの。僕は個人的に「夏の終わりの枯れ紅葉」と呼んでいます。
 本格的な紅葉の始まりはまだ一月ほど先ですが、登山者の少なくなったこの季節、あまり知られることなく色づく葉っぱ。雨の少ない年だと色づく木々も多く、遠目に見ても黄色く見えることもあります。この「枯れ紅葉」の時期を堺に山は秋へ向かい、足早に季節が巡っていきます。


    

近況報告

(04.7.22記)

 気象庁の梅雨明けが発表されたと思ったら、山では逆に雨模様の日々が続きました。でもようやく夏山シーズンの到来です。昨年の夏山は雨の日が多く、取材ではさんざん泣かされましたが今年はいかなものでしょう。好天続きの夏山を期待したいところです。
 今年の夏は、槍穂高を中心に周辺をうろついております。山で見かけましたらお声掛けください。

 先日一週間ほど、モンゴルへフラワートレッキングに行ってきました。二年ぶりの来訪です。エーデルワイスが足の踏み場がないほど・・・。それはそれは見事なものです。昨年世界自然遺産に登録された、モンゴル最大の塩湖ウブス湖畔のキャンプでは蚊の猛攻に遭遇。久しぶりに草原の雄大な風景の中に身を置き、改めてこの地球の大きさを感じ、自然の環境について考えてきました。
 同じ自然でありながらいつもとは違った環境に触れると、この星の持つ自然環境の多様性に驚かされます。それぞれの地域で異なった環境の中、人も動物も植物も同じ今という時間を生きている。自然や人との一期一会の出会いを今後も大事にしていきたいと思います。
 帰路ウランバートルのホテルの空調でやられて、夏風邪をひいてしまいました。夏山直前だというのに情けないことです。そのうち写真もアップしたいのですが・・・。写真の取り込む時間がなく・・・気長にお待ち下さい。


    

 

山で出会う動物たち―雷鳥―

(04.6.25記)

 一年の大半は山に入っているので、野生の動物と出会う機会がときおりある。とは言え僕の場合、山岳風景が専門の写真家。動物写真家ではないからそれを狙って山に入っていないし、専門家が持つような明るい望遠レンズも持っていない。また山といっても稜線に居ることが多い。だから動物の写真はたまたま偶然に出会った時でしか撮れないのだけれど。
 僕のホームゲレンデの中部山岳・槍穂高では大型のものはニホンカモシカやツキノワグマ。森林帯でホンドキツネやアナグマ、ニホンザル、小動物はオコジョやニホンリスなどが生息している。
 だが最も身近に見る機会が多いのは何と言っても雷鳥だ。梅雨の今時分はペアリングの季節。登山者も少ないこの季節は、登山道脇でつがいの二羽を見かけことがある。もう少しして卵を抱える時期になると警戒心が強く、雄が岩の上で見張りをしている姿が見られるようになる。どこか近くに巣があるのだなと思いながら、カメラザックを背負ったまま通り過ぎる。夏山シーズンには小さい雛を連れた姿が今年も見られるだろう。雷鳥というと立山が生息数も多く有名だが、槍穂高の険しい岩稜帯で人知れず暮らしている彼らを見られるのは、ある種幸福なひと時だ。

新緑

        (04.6.18記)

 この季節の山は新緑が目映いばかり。上高地は新緑も落ち着き、そろそろ初夏の彩りといったところ。しかし奥に入って横尾ではケショウヤナギの新緑が、涸沢まで入れば、雪から出てきたばかりのダケカンバやナナカマドの芽吹きに出会えます。
 新緑と一言に言っても芽吹きから始まり、遠くから見ると薄らぼんやりした浅い緑の浅緑、目に目映い新緑、光をたくさんとり入れた真緑、さらに光合成をして初夏の頃には落ち着いた深緑となります。同じ木々の緑でも微妙に違いがあり、また歩くたびに緑の息づかいが違っていて、何度同じ森を歩いてみてもあきることがありません。特にこの季節は新鮮に感じます。
 今年の梅雨は今のところ空梅雨の様子。5月に梅雨の走りで結構降ったので前線も一休みといったところでしょうか。梅雨は梅雨らしく降ってくれないと夏が夏らしくならない。昨年みたいに晴れ間の少ない夏はちょっと勘弁して欲しいものです。
 梅雨の晴れ間、本来の五月晴れの山行もいいものです。貴重な梅雨の晴れ間を狙って出掛けましょう。

 

     

 雨の音

        (04.5.20記)

 朝、パラッ、パラッと屋根をたたく雨音で目を覚ます。この時期、天気が良いと撮影の為、4時に起きなければならない。夏至の6月21日ころまで日ごとに日の出時刻が早くなり、好天が続くと寝不足の日が続きます。
 それがこの音を聞くと今日は起きなくていいんだという安心感から再び眠りにつくことができる。二度寝の心地よさ。
 晴れの日もあれば雨の日もある。日本の山では当たり前すぎるほど当然のこと。雨が降るから水の恵みがあり、その水によって地上の生物全ては生きている。森や植物が潤い、緑豊かな森に育んでいく。雨は自然界になくてはならない大事な現象。自然を知れば知るほど雨のありがたさを感じずにはいられない。
 僕がテーマにしている雲も天候の変化がもたらせてくれた自然の営みの一つ。晴れたばかり続くと空に変化がなく、なんとなくつまらなく思ってしまう。雨が降るから晴れた日のありがたさがより強く感じるのだろう。雨が好きというとあまのじゃくと思われるだろうが、自然の大切な一現象として僕は雨が好き。
 雨の日は次に天気が回復したらどんなシーンを自然が見せてくれるのか想像しながら過ごす。小屋にこもり、することなく停滞するのはとても大切な時間だと思う。なかなか時間がとれずに読めなかった本を読んだり、ちょっとした書き物をするのに丁度いいと思うのだが。

   いよいよG.W.ですね

          

         (04.4.28記)               

 入山の手伝いを兼ねて登っていた涸沢並びに北穂から下りてきました。今年の雪は涸沢では例年より2mくらい少なかったようです。稜線上は例年並みと言ったところでしょうか。両山小屋とも営業体制に入っておりますみなさんもどうぞお越し下さい。ただし、冬山装備となりますのでお気をつけて。
 いよいよ明日(4/29)からG.W.です。みなさんの予定はいかがですか。僕は例年通り涸沢をベースで取材と考えていたのですが、その前に原稿書きや写真出しがあったりでどうなることかちょっと心配。
 涸沢ではこの時期、色とりどりのテントが花開きます。期間限定のテント村がオープン。たくさんの登山者が春山を楽しみに登ってきます。静かな山も好きだけれど、人気のある槍穂高は時にはたくさんの人で賑わいをみせます。それもまた槍穂高の一面。小屋開きという正月のあとのお祭りといったところでしょうか。お祭りの写真も含めて取材にあがります。

    山小屋のお正月

        (04.4.13記)

 

 いよいよ4月も中旬に入り、僕のホームゲレンデとしている北アルプス山小屋もいよいよ小屋開けシーズンとなります。毎年この時期が近づいてくると、冬眠から目覚めたばかりの熊の

ように体を少しずつ動かし始めます。今年も山通いの日々が始まることへの期待感。今年はどんなシーンに巡り会うことができるでしょうか。今から楽しみです。
 自然を撮る写真家には一年を通してシーズンと言えるのですが、北アルプスの懐深く入るには山小屋が開いている時期の方が安心して行動ができます。ですから4月中旬から11月上旬の間は山で過ごす時間が多くなります。年間では200日以上山に入っていますが、春から初冬にかけてはほとんど山にいると言っていいほどです。
そんな山通いが始まる小屋開けはいわばお正月のようなもの。半年ぶりに会う山の友たち。小屋開け時だけ会う人もいれば、期待と不安を抱いての新人さん。登山者の姿はまだなく、山小屋関係者しかいないのもこの時期だけのことで、新鮮な雰囲気です。
今年は4月15日から涸沢ヒュッテの小屋開けに上がり、21日には北穂高小屋に上がる予定です。この何年か繰り返しているパターン。雪をかき分け、扉を開き、半年もの間眠っていた小屋に入るときの何とも言えない独特な雰囲気。小屋閉めから止まっていた時間が再び動き出す瞬間です。また今年もお世話になる大事な山小屋。小屋がここにあるから撮影の際の足がかりとして大変助かっています。そんな感謝の念を持ちながら小屋開けというお正月を過ごしてきます。

※ 涸沢へのルートはまだまだ雪崩の危険があります。上高地へのバスは4/21から運行しますが、山小屋はまだ営業していません。G.W.までお待ちください。

                            

    

          

はじめまして

         (04.4.1記)

 

 

 このページでは僕、渡辺幸雄の普段感じていることや考えているなどを書いていきたいと思います。とりあえず、ようやく自分のホームページが出来ました。なるべく多くの方にご覧いただけたらと思っています。
 冬の間は夏の季節に比べると家での仕事が多くなります。雪山の季節は季節で撮りたいものも多いのですが、いかんせん時間がありません。というのも夏の間に撮り続けてきた写真がほとんど手つかずのままになっているからです。4月から年末にかけて山の中を駆けずり回っているので、撮った写真の整理が全く追いついていず、整理に追われているのがこの時期の僕の状況です。そんな状況を自ら冬眠中と呼んではいるもののやはり野山を駆け回りたい。ちょっと上高地へ。などとやっているからこのホームページも構想から3年もかかってしまいました。
 まあ、何はともあれ、今後もこのページを始め更新していきますので、ちょくちょく遊びにきてください。今後ともどうぞよろしく。
                                 

 

  

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