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  外国人労働者


 この回は日本にいる外国人労働者について、彼らを受けいれるべきか、受けいれるべきでないかという点から考え、レポートに書いてもらいました。
 なお、授業では、あらかじめ、こちらから、日本人の中に「受けいれるべき」「受けいれるべきでない」双方の意見があることを紹介し、その代表的な主張を参考意見として提示しました。そのうえで、ビデオで、日本にいる外国人労働者の状況とイギリスの状況を見てもらいました。
 
【資料1】ビデオ

●日本の外国人労働者(NHK「ニッポン50年」1995.12 25分間)
 日本にいる外国人労働者が何を求めて日本に来て、日本でどのようなくらしをしているかが描かれている。また、彼らの「3K」といわれる職場の様子や密造テレカや売春などの犯罪の様子もレポートされている。

●イギリス、不況下での移民排斥と人種差別(TBS「CBSドキュメント」1994.12 12分間)
 イギリスは長い不況で、外国人労働者や移民への風当たりが強くなっている。
 特に、労働者階級にとっては、自分たちの仕事をとられているという意識が強く、反発が強い。こうした人々の不満を利用する形で、イギリスでは極右政党が勢力を強めている。彼らは、労働者階級の不満をバックに、声高に移民の国外追放やテロによる攻撃をとなえる。
 
【資料2】参考意見・外国人労働者をめぐる主張(新聞・テレビ等に見られる代表的なものを村田がまとめたもの)
 受けいれるべき

●大勢の日本人や日本の企業は、外国に進出して、大もうけしている。また、日本でつくった色々な製品は、外国に輸出されている。それなのに、外国人労働者を受けいれないというのは、不公平だ。

●外国人労働者が、日本でかせいだお金は、彼らの国に持って帰れば、何倍、何十倍もの価値がある。だから、彼らが豊かな社会をめざして、出かせぎに来るのは当然のことだ。彼らにだって、より「もうけられる」場所で働く自由がある。

●もともと、人類は世界を自由に移動して、各地に住みついた。それを「国」というわくでしばってしまうのは、おかしい。どこに住もうと個人の自由だ。

●外国人労働者を受けいれないというのは、国際化に逆行している。彼らを追い出すのではなく、彼らといっしょにくらせる社会をつくるべきだ。日本の中に、色々な国の人がいたほうが、社会や文化は豊かになる。

●景気の良いときは、彼らをやとっておいて、景気が悪くなると、追い出そうとするのは、あまりにも勝手だ。外国人労働者は、日本人が嫌がるような仕事をしており、日本の社会に役立っている。それに、彼らは税金だってはらっている。

●日本の政府は、外国人労働者を取りしまるばかりだから、彼らは地下にもぐって暴力団と結びついたり、犯罪をおかしたりする。
 むしろ、日本が彼らを受けいれ、彼らを認めることによって、彼らにも日本の社会の一員という責任感が出てくるはずだ。

●日本人には、アジアの人たちをバカにしたり、見下したりするところがある。だから、「イラン人はこわい」とか「外国人がふえると日本は悪くなる」という意見には根拠のない、差別によるものが多い。
 外国人労働者が増えることよりも、日本人の差別する気持ちのほうが、深刻な問題だ。
 受けいれるべきでない

●日本人は、一生けん命はたらき続けて、ようやく豊かな社会をつくった。これは日本人の努力に成果なのだから、外国人労働者を受けいれる義務はない。
 彼らも豊かなくらしがしたければ、自分の国を豊かにすればいい。

●日本人は外国の人とつきあうのになれていない。「ガイジン」というだけで、おどろいてしまう人もいる。そういう人たちのなかに、大勢の外国人労働者がやってきたら、社会は混乱する。
 日本は閉鎖的な社会だといわれるが、それで何百年もうまくやってきたのだから、それで良いではないか。

●外国人労働者を受けいれると、景気の悪い時に、大勢の日本人が失業してしまう。外国人労働者は、日本人より安い給料でもはたらくから、彼らに仕事をうばわれることになってしまう。
 「どんどん外国人労働者を受けいれて、仲良くすればいい」というのは、無責任な意見だ。

●外国人労働者は、お金をかせいだら自分の国に帰ってしまう人たちだから、日本の社会に責任感を持っていない。そのため、日本で犯罪をおかす人も多い。だから、もっときびしく取りしまるべきだ。

●外国人労働者は、同じ国の人とだけつきあい、仲間だけでかたまって生活しようとする。だから、彼らがふえると、日本の社会がバラバラになってしまう。日本で、日本語が通じないような地域ができてしまうのは良くない。






 


【生徒のレポート】

「受けいれるべき」という考え

●私は「受けいれるべき派」です。
 日本が彼らを受けいれるようになれば、犯罪などの悪いことをする人は減ると思う。
 それに、きちんとまじめに働いている人が、「不法労働者」なんて呼ばれるのは、おかしい。
 日本がいくらきびしく取りしまっても、彼ら全員をつかまえることはできないのだから、彼らを受け入れることで解決していく方が前向きだと思う。
 
●本当にまじめに働く人なら、受け入れても良いと思います。
 でも、多くの場合、外国人は信用できません。私は、外国人が日本に入国することで、事件が増えている気がします。たとえば、覚せい剤事件や偽造テレカなどは、多くの場合、彼らがかかわっているので、不安があります。
 
●僕は、受け入れるべきだと思います。
 きびしく取りしまると、それだけ、裏で法をやぶって彼らが犯罪をおかすようになるからです。上野とかでは、偽造カードを売っている人たちがたくさんいます。彼らは、仕事もなくて、仕方ないから、暴力団とつながって、カードを売っているんだと思います。
 
●彼らが日本でお金をかせいだら自分の国に帰ってしまうことに文句を言う人もいるが、それは、その人が、自分の国に帰って幸せになるためのお金なのだから、私たちがとやかく言うことではないと思う。
 
●僕は、受け入れるべきだと思います。
 もしも、逆に、日本人が外国で働けなかったり、給料が現地の人の半分しかもらえなかったら、おこるでしょう。
 
●特別な技能を持った人だけを受け入れて、大勢の外国人労働者を受け入れないのは、差別だと思う。
 
●僕は「外国人労働者を受け入れる」という意見に賛成です。
 資料の意見にあったように、人間はもとは自由にくらしていたのに、今では国というしきりができてしまったのだと思います。
 それに、今まで日本の企業は、外国にたくさんの輸出をして、その国で大勢の失業者を出してきました。それなのに、自分の国の利益ばかりを考えているのは、まちがっているます。僕は、産業の面からではなく、人権の面から考えていくべきではないかと思いました。
 
●ぼくは受け入れるべきだと思う。
 彼らにとって、日本に来て働くことが、生きていくためのすべなのだから、認められるるべきだ。そもそも、「外国人」というだけで、差別するのはおかしい。もし、それを認めるのなら、日本人も外国で差別されることになる。
 もしも、日本が閉鎖的な国になってしまうと、社会が進歩しなくなる。それに、外国に対しての偏見やつきあいの下手さも増していく。江戸時代がそのいい例だ。
 
●外国人労働者にも才能を持った人が大勢いると思う。それなのに、彼らを受け入れないと、その才能を発きできないばかりか、そういう人も犯罪に走ってしまうことになる。
 
●受け入れるべきだと思う。
 豊かな社会に住んでいる私たちがやらないような仕事を彼らはやってくれている。
 彼らが犯罪をおかすのは、日本に彼らを受け入れる場が少ないからだと思う。
 日本の社会が、きちんと制度や法律をととのえて、彼らを受け入れれば、日本の社会がくずれてしまうこともないと思う。
 
●日本人は勝手なことばかり言っている気がする。日本人だって、外国で働いている人がいるのに、「外人は日本で働いちゃだめ」なんて、勝手すぎる。
 彼らとは生活習慣は違っているけれども、その国にいるときはその国のルールにしたがえばうまくいくはずだ。
 そもそも、同じ人間なのに、なぜ「外国人」という言い方をするのだろう。
 
●日本人は、外国人がいると仕事を取られてしまい、自分たちが失業してしまうと言っているが、その考え方はどうかと思う。
 外国人は、日本人とちがって、「キツイ・キタナイ・キケン」な仕事であってもやる。それも安い給料で。そして、彼らはそのお金を自分の国に持って帰れば、すごい大金になるのだから、それで良いではないか。
 もし、外国人労働者が日本中からいなくなってしまったら、今まで彼らがしてきたキツイ仕事を全部日本人でやっていかなければならなくなる。「外国人を追い出せ」という人は、そういうことを考えたことがあるのだろうか。
 
●日本人は、自分の国が豊かになってきたからって、少し調子に乗っているのではないか?
 そして、外国人労働者を見下していると思う。これこそ、まさに差別だと思う。
 日本では、男女差別が問題になっているけれども、外国人労働者にも、同じことをしている。
 日本人にだって、良い人と悪い人がいるように、外国人労働者にも良い人はいるはずだ。
 彼らは、日本人より安い給料で一生けん命働いているのに、まわりの人たちが文句を言うのはおかしい。もし、逆の立場だったらと考えたことはないのだろうか。
 
●彼らにしてみれば、日本で働けることが一種の夢みたいなものらしい。
 それに、安い給料でも文句も言わず働いていているのだから、いいと思う。
 でも、働く場所がなくて、公園などでたむろっているのは、やめてほしい。仕事を持っていない人は、帰ってもらいたい。
 
 
「受けいれるべきでない」という考え
 
●私は、外国人労働者は受けいれるべきでないと思います。別に、外国人が嫌いなわけではありません。現に、私には、何人もの外国人の知り合いがいます。
 では、なぜ受けいれるべきでないと思うのかというと、ここが日本だからです。ここが日本であって、日本の習慣があることを忘れてほしくないのです。日本で働きたいのなら、最低限、日本語と日本の生活習慣を身につけてほしいと思います。
 何もできないのに、何とかなるという考えで日本にやってきて、仕事が見つからないからって文句を言うのは、少し虫がいいと思います。
 
●受けいれるべきでない。
 日本の治安が悪くなるし、外国人の集団地域ができてしまう。そうなると、ドイツみたいに、かえって外国人への反発が強くなって、不景気の時に失業した日本人の不満が、彼らに向けられることになる。
 
●もっときびしく取りしまるべきだと思う。このままでは、彼らは、あまい考えで、どんどん日本に来てしまい、きりがなくなってしまう。
 
●私は、無制限に受け入れるのは反対だ。彼らの働く期間や人数を制限するのが、一番いい方法だと思う。無責任に大勢受け入れると、日本人の権利がなくなってしまう。
 彼らについて許せないのは、かせげるだけかせいで、あとの日本のことなど考えずに、おみやげを山盛りかかえて、さっさと祖国に帰ってしまうことだ。働くなら働くで、日本に住みついて、日本人として働いてほしい。それに、日本語をもっと勉強してほしい。
 
●私は外国人労働者をあまり受け入れない方がいいと思う。
 言葉もちがうし、生活習慣だってぜんぜんちがうのに、どうやってうまくやっていけるのだろうか。
 最初は、あまり深く考えなかったので、「別にいいんじゃないかな」と思っていたけど、よく考えてみれば、外国人と日本人とでは、ちがうことがたくさんある。言葉や食べ物などこれだけちがっていると、いっしょに仕事をしたり、生活したりするのはむずかしいと思う。
 
●受け入れるべきではない。きびしく取りしまった方が良いと思う。
 日本に働きに来て、そのお金は自分の国に持っていってしまうのは、良くない。それに、彼らは、日本に来なければ生きていけないというわけではない。
 彼らは、日本人の嫌がる仕事もしてくれているといっても、いずれ、自分の国へ帰ってしまい、途中でやめてしまう人たちだから、彼らをあてにすること自体良くない。
 
●たしかに、外国から日本に働きに来たいという人がたくさんいるけれど、だからといって、日本人が嫌がる仕事を彼らに押しつけて良いのだろうか。
 日本人に押しつけるつもりはなくても、結果的に、彼らには、そういう仕事しか回ってこないのだから、ひどい仕事を押しつけているのと同じことだと思う。
 
●僕は外国人を受け入れるべきではないと思う。
 最近、外国人をよく見かけるけれど、彼らが日本語で話しているところを見たことがない。それにくらべて、外国に住む日本人は、ちゃんと外国語を話しているではないか。日本語をきちんと話せるようにならなければ、外国人を受け入れるべきではない。
 しかも、「観光」とうそまでついて働きに来るなんて許せない。
 
【生徒の考えの集計】

「受けいれるべき」・・・・・・34人
「受けいれるべきでない」・・・・・・17人
「保留」・・・・・・3人

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