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  資料 クリントン、セックススキャンダル


【クリントン大統領をめぐる主な疑惑・事件】  (朝日新聞 1998.8.7より)

 (1)ホワイトウォーター疑惑
 アーカンソー州知事時代、長年の支援者が経営する貯蓄貸付組合(S&L)に便宜を図り、見返りに政治資金の応援を受けた疑い。大統領夫妻がこの支援者と共同経営した不動産開発会社「ホワイトウォーター」に、同組合から不正融資した疑いもある。94年1月に特別検察官が任命され、同年8月にスター氏(独立検察官)が後任となった。

 (2)トラベルゲート
 93年、ホワイトハウスの旅行事務所職員全員を「ずさんな経理」を理由に解雇した事件。後任に大統領の遠縁を充て「身内びいき」の批判を浴びた。

 (3)ファイルゲート
 米連邦捜査局(FBI)が保管する歴代共和党政権の要人を含む大量の個人情報を、93年9月から12月にかけ、不正に取り寄せていた事件。

 (4)ジョーンズ・セクハラ訴訟
 知事当時の州職員、ポーラ・ジョーンズさんが起こした民事訴訟。ホテルに呼び出され、性的行為を要求されたと主張したが、98年4月、連邦地裁が却下。控訴している。

 (5)不倫偽証疑惑
 大統領が自ら証言したジョーンズ・セクハラ訴訟のなかで、ルインスキーさんとの性的関係について偽証や偽証教唆、司法妨害をした疑い。98年1月、ルインスキーさんの元同僚が、電話の録音テープをスター検察官に持ち込んだのがきっかけで、本来ホワイトウォーター事件の捜査をしていたスター氏の捜査対象が拡大され、刑事事件としての捜査が始まった。


【不倫疑惑の概略とポイント】

●クリントン大統領は女性に弱い。
 今回のモニカ・ルインスキーさんだけでなく、他にも色々女性問題を起こしている。大統領になる以前から、色々あった様子。若きクリントン青年はケネディ大統領にあこがれていたようだが、政治的野心だけでなく、女性関係もお手本にしたようです。

【出発点】 昨年、ポーラ・ジョーンズさんという女性が、クリントンさんがアーカンソー州知事時代に、セクハラを受けたと訴えた。(売名行為、対立政党からの圧力などの噂もあった。)

     セクハラ=セクシャルハラスメント→性的いやがらせ
         ↓
 ●セクハラなら、あきらかに犯罪。
  しかし、ポーラ・ジョーンズさんの訴えは証拠不十分で却下。
  その調査の中で、今年1月、モニカ・ルインスキーさんとの関係が浮かび上がってくる。
 (ルインスキーさんは、研修生としてホワイトハウスに派遣されていた女性。)

         ↓
 ●ポーラ・ジョーンズさんのセクハラ裁判の中で、大統領はルインスキーさんとの関係を否定。
  ルインスキーさんにも話を合わせるように要請した。
         ↓
 ●スター特別検察官が大統領の偽証疑惑に乗り出す。
  法廷での偽証は犯罪。刑事事件として調査される。
         ↓
 ●調査から逃れられないと判断した大統領は、8月18日の法廷証言とテレビ演説で、
  ルインスキーさんとの「不適切な関係」を認める。

         ↓
 ●調査の結果、ルインスキーさんとの浮気が明らかになる。(セクハラではない。)
    ・調査報告書
    ・証拠のビデオ など、クリントンさんのプライバシーに関わることまで、暴露される。
              かなりえげつない内容。「やりすぎ」「魔女狩り」「うんざり」という批判も多い。

【不倫疑惑事件の結末】

●ルインスキーさんの場合はセクハラではなく、両者合意の浮気である。
 アメリカでは、浮気は犯罪ではない。(日本でも。韓国では、浮気は姦通罪という罪になる。)
 大統領夫人のヒラリーさんは、クリントン大統領を許すと言っている。(本音はどうかわからないけど……。)

●クリントン大統領は、8月18日に浮気をみとめるまで、国民に嘘をついていた。
 ポーラ・ジョーンズさんの民事訴訟では、法廷でも嘘をついている。ルインスキーさんにも話を合わせるように要請した。ただし、偽証疑惑の刑事裁判では、浮気を認めたため、偽証はしていない。

【アメリカ国民はどう考えているか】 1998年10月、アメリカCBSの世論調査より

   ●大統領は辞職するべきだと考える人……30%
   ●大統領は任期までつづけるべきだと考える人……67%
   ●大統領の仕事ぶりを支持する人……63%
   ●大統領は偽証をしたと考える人……70%
   ●これ以上不倫疑惑を追及するべきでないと考える人……56%

 クリントン大統領の支持率は7割近くと高い。その一方で、大統領はウソをついていると考える人の割合も7割になる。つまり、多くの人は、大統領は浮気したみたいだし法廷での発言は偽証になるけど仕事ぶりは評価するので辞職の必要はないと考えていることが読みとれる。セックススキャンダルの下世話な暴露についても、もううんざりだしこれ以上の調査は必要ないというところではないだろうか。

【補足】

 アメリカとイギリス(日本も)では、政治家のセックススキャンダルがしばしば大衆紙の見出しを飾り、大きな問題に発展する。ときには政局に影響をもたらすこともある。逆に、フランスでは、政治とは直接の関係がない政治家のプライベートな出来事はほとんど報道されない。フランスのミッテラン前大統領に愛人がいることは、彼が大統領だった1980年代から公然の秘密で、ミッテランの友人はもちろん、政治記者たちも知っていたが、問題になるどころか、報道されることもなかった。1994年に週刊誌によってそのことがはじめて報道されたとき、批判されたのはミッテランのモラルではなく、彼の私生活を暴露した週刊誌のほうだった。
  → プライバシーをめぐる日仏マスコミ格差

【今後の展開】

●アメリカ国民の多くが、クリントンさんはやめる必要はないし、もううんざりという中、次々と浮気の証拠や報告書が公開され、マスコミも報道に力を入れている。
(ここがもっとも理解しにくい点です。ピューリタニズムがいまだに生きているということでしょうか。それともクリントンを追い落としたい保守派が扇動してメディアを動かしているのか、見えてきません。)

●アメリカ上院議会・下院議会も大統領の偽証を追求、弾劾のかまえを見せている。
(みなさんご存じの通り、結局、この弾劾は上院で否決されました。)

【問題点】
 女性問題という個人的トラブルがなぜ大統領弾劾につながるほどの大事件になるのか、なかなか理解しにくいので、問題点を整理してみました。

1.政治家の職務と個人的なモラルとは分けて考えるべきか?
 アメリカ大統領という職は、政治的手腕のみではなく、人格的・モラル的にも優れた者であるべきという考え方もできる。例えば、大統領選挙は人格の高潔さや誠実さをアピールし、対立候補の人間性を攻撃する。そういう選挙で当選したのだから、今回のスキャンダルはやめるに値するとも考えられる。

2.ホワイトハウスでの浮気をプライベートと言い切れるのか?
 モニカ・ルインスキーの場合、舞台がホワイトハウスで、彼女もホワイトハウスの研修生であるということ。つまり、クリントンにとって、職務の場での浮気であり、公務の延長と考えられ、プライベートとは言い切れない。(日本の学校では、教師が生徒の母親や教育実習生と浮気をしたら、公務員の倫理規定で懲戒の対象になる。)

3.浮気に関することとはいえ、国民に嘘をついたことは大統領として許されるのか?
 浮気は個人的なこととしても、8月に認めるまで、クリントン大統領はテレビや法廷で浮気を否定してきた。つまり、浮気のこととはいえ、国民に嘘をついた人物が大統領に値するのか。とくに法廷での嘘は偽証罪に問われる可能性もあり、議会での追求もはじまりつつある。

【まわりの人々にもきいてみました】

「プライベートなことと公職を分けて考えるべきだって意見を聞くと、そうかなって気がする。逆に、政治家にはふだんからモラルを守る義務があるって意見を聞くと、そうかなって気もする。……でも、こういう事ってアメリカならではよね。ヨーロッパや日本だと問題にならないよね、政治家が浮気しても」
(宇野宗佑は大スキャンダルになりましたよ。選挙で大敗して総理大臣やめたし。)
「あの人は無能だからやめたんでしょ」

「クリントンねえ……。ニクソンのウォーターゲート事件とは全然違うわよね。あのスター特別検察官でしたっけ、他に仕事ないのかしら」
(浮気調査の私立探偵みたいですね。)
「ほんと」

「チェルシーさんって言ったっけ、娘さん。彼女がかわいそうね。お父さんが浮気しただけでなく、それが全米に報道されて大騒ぎになっちゃうなんて、彼女にとっては悪夢よね。政治家なんかなるもんじゃないわねえ」

「まずいんじゃない、あれ。浮気はプライベートっていっても、ホワイトハウスの中であったんでしょ。相手のモニカ・ルインスキーもホワイトハウスの研修生って言うんじゃ職務の延長だし、個人的問題じゃすまないんじゃないの。クリントンは大統領の立場を利用したと見られても仕方ないよ」

「あのひと、アーカンソー州知事時代も色々あったんだよね」
(ええ、女性問題はむかしからですね。他の女性からも色々訴えられてます。)
「こりない人だよね」
(あれでモテるんですかね?)
「あれセクハラじゃないの?」
(両者合意みたいですよ)

「別にいいんじゃないの、浮気ぐらい。政治的なミスをしたわけじゃないし。それより、日本の政治家や官僚が職務上の犯罪行為をしてもちっともやめないことのほうが問題だよ。ワイロとったり、選挙でお金ばらまいたり、天下りの圧力かけたりさ。やめないばかりか、次の選挙で当選しちゃうってーのはどうなってんだろ。政治家天国だよね」

「あんなだらしない男やめるべきよ。アメリカの大統領って、政治的能力だけでなくて、人間的にも信頼できる人物って視点から評価されるわけでしょ。大統領選挙なんて、『誠実』だとか『信頼できる』だとかキャッチフレーズをかかげて人格評価ばっかりじゃない。そうやって大統領になったんだもん、ああいうスキャンダルをおこしたら辞職するべきよ」
(人間味があっていいとは思わない?)
「モラルが欠けてるだけよ。部下に手を出すなんて」
(一夫一婦制の結婚のほうがまちがってるとは思わない?)
「あんたどこの国から来た人よ?」

「クリントン?とりあえず女の趣味は良くないね」
(そんなこときいてないよ。)
「やっぱ、ヒラリーってさあ……(以下、下品なので省略)」

「浮気はまあいいとしてさ。あっちこっちで偽証してるわけだよね。テレビやら法廷やらで『やましいことはない』って。偽証は問題じゃないの」
(でも、そもそものはじまりは浮気だよ。)
「偽証は偽証だよ。そういうウソをつく人物が大統領って事は問題じゃないの。国民をだましたんだから」

「ロンドンブーツの『ガサ入れ』と同じだね」
(あんなの見てるの?)
「見てる見てる、あれ面白いね。あれ「浮気しただろ」って問いつめられると、みんな「してない」って言うでしょ。大統領も同じだよ」

「 なんで浮気が裁判沙汰になるんじゃい! 韓国みたいに姦通罪があるならともかく。両者同意の事だからセクハラでもないやないかい!!!問題が大きくなったのはどうせルインスキーってアホが誰かにそそのかされたに決まっとる。ゼニやら権力争いがからんどんのとちゃうんかい!!だいたい浮気の釈明をテレビを通じてやらせるなんてまともとは思われへんわい!! 浮気の内容を詳細に公表して何の意味があるんじゃい!法的には偽証強要が問題ちゃうんかい!!!そもそもなんでこんなこと証言せないかんのかわからん。ちょっとイッとるでアメリカは」
(日本でも宇野宗佑さんは議会で取り上げられたよ。)
「宇野首相は完全に売春防止法違反だから、これとは全く別の話や。こんなこと授業の題材に取り上げるのはやめたほうがいいで」

「 なんか魔女狩りみたいね。浮気で法廷に呼び出されたり、浮気現場のビデオテープが公開されたりさ。明らかに異常よ。10年後くらいに振り返ると、マッカーシーのアカ狩りとならんで、アメリカの歴史の汚点になるんじゃない?」


【新聞報道に見るクリントンスキャンダルの経過】 朝日新聞 インターネットより

●クリントン米大統領、また女性疑惑。元実習生と関係?偽証強要の疑いも  1998.1.22
●クリントン米大統領に新たな女性疑惑、偽証の強要巡り議会追及の動き  1.23
●偽証強要?でっち上げ? 会話続々明るみに 米大統領女性疑惑が波紋  1.23
●クリントン大統領、女性スキャンダルに触れ、改めて疑惑を否定  1.27
●メディア混迷、国民は冷静。米大統領の女性スキャンダル報道  2.4
●クリントン米大統領女性疑惑、元実習生の証言延期  2.13
●刑事免責合意で元実習生、証言へ。米大統領の不倫・偽証教唆疑惑  7.29
●米政権へ重大な影響も。クリントン大統領不倫疑惑、捜査大詰め  7.29
●クリントン米大統領、来月17日にビデオ証言 不倫疑惑、捜査終了へ  7.30
●政権脅かす?米大統領不倫問題、司法妨害の可能性も  7.30
●米大統領「不倫疑惑」元実習生が「物証」ドレス提出か  7.31
●不倫疑惑証言「心待ち」 クリントン米大統領が心境を語る  8.1
●元実習生、大統領との関係認める。「性的関係は十数回」  8.3
●「米大統領、性的関係認めるなら弾劾回避」と共和党  8.3
●「不倫」捜査大詰め、深まる「偽証」の疑い   8.7
●証言非公開、断片情報にメディア四苦八苦  8.8
●クリントン米大統領、証言は日本時間18日未明  8.15
●証言は関係否定を修正か?一部認める方向  8.17
●家族に謝罪、訴訟には反発。世論調査は大統領を評価  8.18
●大統領のテレビ演説要旨  8.18
●弾劾回避へ政治的打算。政権は弱体化か  8.18
●大統領が不倫告白「不適切な関係、深く後悔」、偽証は否定  8.18
●焦点、共和党の出方に。9月にも検察報告  8.19
●報道の洪水、国民に疲労感  8.19
●夫を信じて戦って…ヒラリー夫人沈黙  8.19
●不倫巡る米大統領演説、共和党は慎重な評価  8.19
●私は許し請う専門家 大統領、ちゃかしながら低姿勢価  8.30
●独立検察官に元実習生証言、不倫疑惑で8月に  9.4
●不倫疑惑「申し訳ない」 大統領、アイルランドで初の陳謝  9.5
●捜査報告書、下院に提出 民主・共和公開合意  9.10
●民主党、選挙控え危機感 厳しい姿勢強める  9.11
●公開前もう1万件のアクセス  9.11
●不倫疑惑報告書をネットで公開 下院議長が意向 9.11
●スター独立検察官の捜査報告書公開 9.12
●米大統領証言のビデオを公開 9.22
●クリントン米大統領弾劾、駆け引き大詰め 10.03
●米下院司法委は大統領弾劾調査開始を決議 10.06
●弾劾調査開始、56%が「反対」─米世論調査 10.08
●下院が弾劾調査の開始決定、中間選挙後に開始 10.09


【ビデオ資料】

●テレビ朝日「ニュースステーション」1998.8 大統領の釈明と不倫疑惑の経過
●TBS「CBSドキュメント」1998.10 クリントン夫妻の友人が語るスキャンダル
●NHK「20世紀人物伝 フランソワ・ミッテラン」1998.10より一部を引用 (ミッテランに愛人と隠し子がいたことが発覚。しかしフランスではそうした政治家のプライベートなことは全く批判されなかった。)
●TBS「CBSドキュメント」1999.3 クリントン弾劾にまわった民主党長老議員の主張 (大統領の浮気は別にして、法廷は神聖な場であり、そこでの偽証は許せないと主張する長老議員。敬虔なカトリック教徒で、モラルを重んじる人物。民主党でありながら弾劾の立場にまわり、彼の説得が共和党議員たちを動かしたという。なかなか説得力がありました。)

→ クリントン大統領の浮気 レポート

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