牛羊犬

 HALが家に来てから2ヶ月が過ぎました。まだまだやんちゃな盛りでしたので、おとなしいなんてことは全然無かったのですが、訓練が利いたのか、それとも毎朝公園に行って他のWAN子達と思いっきり走らせていたのが良かったのか、来た当時の悪魔のようなWAN子から、普通のやんちゃな可愛い子犬になっていきました。もちろん最大の原因は家族がHALに慣れてきてだいぶ余裕がでてきたってことだったのですが。
 毎日ピリピリしていた家内も朝一緒に公園に行って、WAN子達と走りまわるHALの姿を見たらやっと可愛いと思えたようで、それからは家の中が随分と和やかなムードになってきました。
 季節は夏真盛り、朝の8時ともなれば焦げるような暑さで初めて夏を迎える子犬には厳しい季節でした。少しでも涼しくしてやろうと思ったのと、大きくなったら泳げるようになるように今から水に慣れさせたかったので、子供が前に使っていた空気を入れるビニールのプールで遊ばせてみましたが、床に穴を掘るは縁には噛みつくはで一瞬にしてオシャカになりました。黒ラブを飼っている会社の後輩から、水浴びならセメント船が良いと聞き近所の日曜大工センターに買いに行きました。セメント船ってセメントで出来た船ではありません。ホラ、良く工事現場でセメントと水を混ぜてこねている大きな四角い箱みたいの、あれがセメント船と言うらしいのです。昔見たのは鉄のような感じだったんですが、今はプラスチックでできています。大・中・小とあってHALくらいなら中で十分でした。
 毎日散歩から帰っきてシャワーで遊びながらセメント船に水を入れ始めると、中に飛びこんで気持ち良さそうに転がったり、中の水を後足で掻き出そうとしたりしています。なんだかとっても嬉しそうで見ているこちらも楽しくなってくるようでしたが.....。
 そんなのが1週間ほど続いたある日、尻尾の付け根あたりにかさぶたのようなものが数カ所できているのに気が付きました。フケみたいにカサカサになった皮膚がちょびっとづつはがれてくるし、そこの部分だけ毛が抜けて点々とハゲになっています。慌ててお医者にいったんですが、前回予防注射に行った獣医さんは全然たよりにならず、車で走りまわって別の獣医さんに連れて行きました。細菌性の皮膚炎でしょう。患部の毛は刈ってしまった方が治りは早いけど、ちょとみっともなくなるので、しばらくは薬浴と軟膏で様子を見ましょう。子犬には良くあることなので心配はいらないけれど、草とかでなる場合もあるので草が沢山生えている所には連れていかない方が良いし、水浴びも治るまでは止めときましょう、と言われてしまいました。
 ついでにまだ便検査をやっていなかったのでやってもらうことになり、翌日散歩の帰りに便を持っていって調べてもらったところ、なんとコクシジュウム原虫という虫がいることがわかりました。成犬ではたいしたことない虫だそうですが、幼犬だと急激に血糖値が下がって危険な状態になることもあるとの話しでした。HALの場合はもう4ヶ月を過ぎていたんで、命にかかわるものではないけれど、21日間薬を飲まなくてはならないし、他のWAN子にうつるといけないので、その間は公園などには連れていかない方が良いとのことでした。
 結局、水浴びも公園での散歩も当分出来ないことになり、暑い家の中にいなくちゃならないのなら涼しいし、治りも早くなるし、ということでお尻の毛を刈ってもらうことになりましたが、お尻だけザックリ刈るとみっともないので結局全身超サマーカットにされてしまいました。
 模様が牛、シルエットが羊、実は犬という、世にも奇妙な生き物の一丁あがりです。散歩してるといろんな人に「何犬ですか?」と聞きまくられていい加減にうんざりでした。飼い主の心配と不満をよそに、本人は涼しくって快調な上に欲求不満で家の中で跳ねまわり、去年までの何倍も暑苦しい雰囲気の中で夏が過ぎて行きました。

 
 

back  top  next