
昨日から体調を崩していた。今日は朝11:00のフライトだ。通常、国際線は2時間前に集合なので9:00には成田空港に着いている必要がある。私の住んでいる浅草から成田空港までは都営浅草線から京成線に直通して、すんなり行けば1時間15分程度で到着する。逆算すると7:30過ぎに家を出れば良い計算になるが、何かあったときのために余裕を持って7:00には家を出た方が良いだろう。すると遅くても6:00過ぎには起きたい。自然に不安が募ってくる。今年6月にセブに行ったので期間的にはそれほどブランクがあるわけではないが、一人旅は昨年11月のタイ・カンボジア以来だ。そう考えると約10ヶ月振りということになる。しかも、タイ・カンボジアでは色々と考えさせられた。それに加えて体調が悪いとくれば不安が募らない方がおかしい。ただ一方で一人旅だから体調が悪いことは安心できてもいた。体調が悪ければ外出しなければいい。誰にも気兼ねなく過ごせる、何かその地で生活しているような気になれるのは一人旅の醍醐味でもある。とは言え時刻はもうとっくに0:00を回っている。寝坊で旅に出れませんでしたではシャレにならない。私はもう出発まで寝ないと決めた。飛行機の中で寝ればいい。普段はあまりやらないテレビゲームをやったり、「地球の歩き方」を読んだりして時間を潰すことにしたのだが、4:00頃になってとうとう眠りに落ちてしまった。
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空港近くから出る小さい公共バス。10円以下という格安の料金で移動できる。
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なぜかこういうときは起きられる。なんとか予定通り起きることができ、無事出発することができた。9:30、予定より少々遅れて空港第2ビルに到着、そしてエスカレータを昇り出発ロビーに入って驚いた。なんだ、この人の多さは。南北のゲートはもちろん、両替所まで長蛇の列になっていた。こんな成田空港は初めてだ。もちろん私は外貨を全く用意していない。早速長蛇の列の最後尾に並ぶ。円からドルへ換金するのに30分、ゲートに並び始めた頃には10:00を過ぎていた。登場開始時刻は10:20、出発11:00なのだが、さらに運が悪いことに出発が10:50に変更になっていた。間に合うのだろうか。10:20を過ぎた。しかし、私は出国手続きどころか、ゲートすらくぐれていない。本当に間に合わないかもしれない。しかし、旅に慣れ始めていたのだろうか、何とかなる、そう思い始めた。そう、何とかなるのだ。今までもそうだった。そして、この瞬間一気に一人旅の感覚が甦ってきた。すると妙なものである。自然に余裕ができ、免税店でタバコを買う余裕さえあった。結局10:50ちょうどになんとか搭乗、私より遅い人もいたのだろう、飛行機は11:20になってTake Off、一路ホー・チ・ミンへ向かった。出発の際、このベトナム航空の旅客機の隣に停まっていたエア・インディアのあの独特のペイントを施された機体がいよいよ一人旅が始まったことを物語っているようだった。
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バスから見たホー・チ・ミンの街の風景。思ったより近代化されていない。
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ベトナム航空、機内食は最高レベルにまずかった。だが、それより気になったのはとにかく機体が揺れたことだ。自然vs文明の壮絶なバトルを身を持って体験したという感じだ。自然に対して人間なんてちっぽけなものと思っている私は、おおいに恐怖心をかきたてられた。現地時間で14:50、ホー・チ・ミンのタン・ソン・ニャット国際空港に到着、予定より少々早いといったところか。空港に降り立つ際私がまず感じたのは「これがホー・チ・ミン?」ということだった。近代的なビルなんて一つも見えない。マレーシアのクアラ・ルンプールでも、タイのバンコクでもそれなりに首都は近代化していたものだ。しかしここは違う。私が勝手にホー・チ・ミンは都会だと思っていただけなのだろうか。相変わらずしつこい空港のタクシー運転手を追い払い、空港出口から歩いて10分ほど行った所にあるボーリング場の脇にあるバス停へ向かった。バス料金は1000ドン、日本円にして10円もしない。やはり公共バスはいい。なおかつ必ずと言っていいほど親切な人が乗っている。私が乗ったバスは空港からベンタイン市場まで行くが、そこまで行ってしまうと予定していたサイゴン駅を越えてしまう。たまたま私の前の席に座っていたHaiという20歳の青年は、わざわざバスを乗り換えてまで私をサイゴン駅へ送ってくれただけでなく、またホー・チ・ミンに戻ってきたら連絡してくれとアドレスまでくれた。本当に親切すぎる。
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サイゴン駅前の道路の風景。統一鉄道の始発駅前とは思えない寂しさだ。
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バスで街中を走る間。やはり先ほどの疑問がつきまとった。「これがホー・チ・ミン?」、そしてその疑問はサイゴン駅に着いてさらにふくれあがった。「これが統一鉄道の始発駅?」、鉄道はおそらく市民の重要な足になっているはずだ。利用客も決して少なくないだろう。なのにこの規模なのか。そこはベトナムを縦断する統一鉄道の始発駅とは思えないほど質素なものだった。私は難なくニャ・チャンまでのチケットを買うことができた。S4のHard Bed中断で149,000ドン、決して安いとは思わなかったが、今の私が知る限り移動手段はこれしかない。出発は19:50、現在は17:00なのでまだ3時間近くある。私は駅周辺の屋台を歩き回りある小さな食堂で早めの夕食を食べた。豚だろうか?ベイクドされた肉とインゲン豆、それに何かのスープとライスといった具合だ。味は悪くなかったが、量が若干少なかったし、なにより英語が全く通じない。ベトナムではここ首都でも一部の人以外本当に英語は通じないようだ。(まあ他の国も同じだろうが)しかし6,000ドンは安い。本当は7,000ドンだったところを気前がよいオバちゃんがディスカウントしてくれた。それから私は近くのスーパーで333というビールと水、それにポテトチップスを買い込み列車を待った。待つ間少女とまだ2、3歳くらいの赤ちゃんが私につきまとってきた。駅前は夕方になると社交場の様になっていた。赤ちゃん連れや犬の散歩をする人たちが集まってくる。そんな風景を見て、何故か懐かしい雰囲気がした。
つづく