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World Trade Center付近のバンコクの道路。車の量が非常に多く、空気も汚染されている。
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昨晩は深夜2時頃に眠りについたのに、7:30に目が覚めてしまった。今日は旅の最終日、何かやりのこしたことはないか、残りの時間を無駄にしたくない、そんな軽い緊張が自然に働いたのかもしれない。朝食を摂りにカオサン通りへ向かう。通りのちょうど中間あたり、ワット・チャナソンクラム通りから入って右側にある欧米人向けの大きなカフェで、ちょっと豪勢にハムとソーセージ、ベーコン、エッグ、ブレッドそしてアイスコーヒーがセットになって80Bの朝食セットを食べ、Tシャツを一枚買ってゲストハウスへ戻った。12時前に荷造りを終え、バックパックをゲストハウスで預かってもらうことにしてチェックアウトした。すぐに公共バスに乗り込みWorld Trade CenterのDuty Freeに土産を買うために向かった。それにしてもだんだんバンコクの街を公共バスで移動するのが楽になってきた。しかもだんだん道もわかるようになってた。こうなってくるとまるでこのバンコクで生活しているような錯覚に陥り楽しくなる。ただ、昨日1時間半かけて歩いたファランポーン駅がバスで行くとすぐだとわかったときは、さすがにショックだった。
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ワット・サケットの麓にある屋台群。英語表記はなく現地人向けといった感じだ。
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Duty Free Storeやタイシルクで有名なJim Thompsonで土産物を購入した私は、帰りも公共バスで帰ることにした。ちょうどカオサンに近づいてきたなというところで遠くに展望台のようなものの上に寺がある建物が見えてきた。ワット・サケットだ。そういえば行っていなかった。バスは通り過ぎてしまったが、ちょっと引き返してワット・サケットへ向かった。寺へ昇る道の入口付近はスゴい数の屋台が出ていた。しかも観光客はまったくいない。完全に現地人向けだ。英語表記も一切ない。そしてどれもがとても旨そうなのである。カオサンではなかなか見られないような食べ物も並んでいて非常に魅力的だったが、腹がそれほど減っていなかったのとやはり英語が通じなそうだったので結局何も口にすることはできなかった。奇麗に整備された階段を昇っていく。結構な高さだ。頂上にある寺自体は大したことはなかったのだが、何よりここからの景色が素晴らしかった。急速に発展したバンコクを360度見渡すことができる。高いビルがある。スラム街のようなものが見える。そして、すごいパワーを感じた。
カオサンへ戻った私は一昨日行った食堂でHot Chili Red Curry with Riceを食べ、チャオプラヤ川へ向かった。川沿いに設置されたベンチに座りカンボジアへ発つ前に買った沢木耕太郎の「バーボンストリート」を1時間強ほど読んだ後、最後の食事と空港税のために1000円ほどをバーツに両替し、最後のPad Thaiを食べ、例の食堂へ来た。そしていつもは旅行日記の最後は帰りの飛行機の中にしようと決めていたのだが、今回はこのお気に入りの店で旅行日記を終えようと思う。
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ワット・サケットから見たバンコク市街。急速に発展する街の中に何かパワーを感じた。
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考えてみれば「リベンジの旅」という意味で出た今回の旅、その達成度はと言えば100%と言えるだろう。しかし、それとは別に新しい気持ちが芽生え初めていた。特に前回のマレーシアや今回のバンコクとは違う、まだまだ未開の地カンボジアへ行ったことによる影響はものすごかった。自分がいる日本、そして東京とは違う全く場所、今まで探訪モノやドキュメンタリーなどのテレビ番組等でしか見たことがなかった世界に自分が入った。結局そこで私は身分のギャップに苦しむことになる。それは裕福/貧乏という意味の身分というものももちろんあるが、それよりもどこか国の違いや立場の違いで非常に気を使ってしまうということである。そんな中で私は必死にその壁を打ち破ろうとしていた。本当に心の通い合える人間対人間の関係になりたい。それが私にとって旅をしていて一番幸せになれるときなのだと信じていた。しかし清水さんが言っていた通り、それはそもそも無意味なことなのかもしれない。だとすると、「なぜ僕は旅に出るのだろうか?」という疑問が浮かんでくる。そんな中で少しずつ私は旅の疲れを感じ、そして早く日本に帰りたいという気持ちになる。ところがいざカンボジアを出てみると、不思議とあの地にいたときの何とも言えない影響をまた受けてみたいと思う。日本で、東京で、あの高層ビルの13階で仕事をしているときは決して受けることができない影響を受けてみたいと思うのだ。そんなよくわからない、何か煮え切らない形のまま私は日本に帰ることになる。きっと日本に戻ってしばらくすれば、また旅に出るべきか、もうこういった旅をやめるべきかがわかるだろう。
この食堂へ来る途中、空を見上げるとまた稲光が起こっていた。今日もまたスコールが降るのだろうか。今の時刻は18:42、SinghaのBig Bottleを半分ほど飲み干した私は、数時間後にはあの稲光に向けて飛び立つことになる。それが幸を暗示しているのか、あるいは不幸を暗示しているのかは行かなくてはわからないのだと思う。
第3章 再びバンコク/アユタヤ 完
第2便 タイ・カンボジア編 完