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第2便 タイ・カンボジア編
第3章 再びバンコク/アユタヤ

第4話 テーマパークのようなアユタヤ

東南アジア旅行者の旅の起点となるバンコクのファランポーン駅。もちろんタイ人も多く利用している。
 9:00過ぎに目を覚ました。昨晩のタイウイスキーのせいで若干気持ち悪かったが、二日酔いはないようだ。早速軽くシャワーを浴びてから出掛けた。今日は世界遺産、アユタヤへ鉄道で行こうと思っていた。さて、鉄道が発着するファランポーン駅までどうやって行こうか。はじめはバスで行こうと思っていたのだが、その方面へ行くバスがどうしても見つからない。とりあえず駅の方へ向かって歩いてみるか、もしかしたら案外近いかもしれない。そう思って歩き始めて中国人街のようなところを抜け、やっとのことで到着した。結局炎天下のバンコク市内を1時間半も歩いてしまったのだ。これにはさすがにくたくたになった。まだバンコクも出ていないのにもう疲れ始めていた。11:18発の鉄道に乗り込んだ。駅を出てすぐ、鉄道の外にはタイのスラム街のような風景になる。鉄道の線路のすぐそばに掘建て小屋のようなものが並び、明らかに貧困層と言える人々の生活を見ることができた。カオサン通り付近もそれほど裕福な場所とは言えないが、こんなスラム街があるのかと驚いた。列車はなかなかスピードを上げない。まさかずっとこのままなのかと不安になったが、バンコクで混雑した場所を抜けるとスピードが上がった。バンコクを出ると、そこには広いアジアの大地があった。列車の窓は全開でかなりの勢いで風が入ってくるが、それが非常に心地よかった。12:58、私の乗った列車はアユタヤに到着した。

アユタヤの川を横断する渡し船。この船を利用しないと遺跡群のあるエリアへは行けない。
 駅を出てすぐのゲストハウスに併設された食堂で、昼飯がてらFried Rice with Chickenを食べる。そこから渡し船で川を渡り、しばらく歩くとようやく遠くに遺跡の入口が見えてきた。途中、他の旅行者はレンタサイクルを利用していたようだが、1日30Bを高いと感じた私は自分の足で遺跡を廻ることにした、ところが、これが大失敗だった。敷地はかなり広かったのだ。最初にワット・プラ・マハタートを見た私は、それだけで歩き疲れてしまった。さらに次のワット・プラ・シー・サンペットまではかなりの距離がある。隣を自転車に乗った旅行者が悠々と通り過ぎていく。1日30Bは安かったのだ。やっとのことで到着した3つの尖塔の遺跡、こんなのがワット・プラケオにもあったなという印象だ。そこからさらに遺跡群敷地内から外れたところに、ワット・ロカヤスタの寝ブッダがある。そこへ向かう途中、小道に入ったのだがそこで妙な懐かしさを覚え、何枚か写真を撮った。快晴の空の下、ブッタは心地よさそうに寝ていた。それから来た道を戻りワット・プラームに向かった。ここアユタヤ遺跡はそれぞれの遺跡を見るのに30Bの料金がかかる。遺跡内の内容にしては結構高いなと思ってしまう。最後のワット・ラチャプラナは見ようか見まいか迷ったが、レンタサイクル代も浮いていたのでここはケチらず見尽くしてやることにした。それにしてもここアユタヤは遺跡というよりはテーマパークのように思える。どこも奇麗に整備されているせいだろうか、それともやはりアンコール遺跡群を見た後だろうか。とにかくアンコール遺跡群を見たときのような感動は全くなかったのである。同じ世界遺産でもここまでその場が持つパワーが違うものだろうか。

アユタヤ遺跡で最も有名な木に埋まった仏像。はたしてどのようにしてこのようになったのか、全く分からない。
 アユタヤの駅に戻ったのは17:30、すでに日は沈もうとしている。次の列車は18:32発だ。まだ時間はある。私は夕方から駅前に出ていた屋台を散策することにした。そこで串揚げ2種類(魚とチキン)と焼き鳥と焼豚を買った。どれも5B、安い。そしてうまい。大満足だ。駅のホームに戻ってすぐに平らげてしまった。列車はなかなか来ない。ここアユタヤではホームで待つ人ももちろんいるのだが、多くの人は線路横の木でできた板の上で待っていた。日本では見られない光景だ。ここを通る列車は本当に少ないからできることだろう。すると18:00ちょうど、何かの放送がかかった。「ん?列車の遅延情報かな?」と思っていると、横でつい先ほどまで世間話をしていたタイ人のオバさん2人が起立をする。いや、この二人だけではない。この駅にいるすべての人が起立をしている。スピーカーからはタイ国歌のようなものが流れ始める。私だけ座っているのもおかしいので私も起立した。写真を撮りたかったが、この夕方の儀式がタイ人にとってどこまで厳かなものなのか全く想像がつかなかったので、ここでは控えておいた。歌が終わるとすべての人が何事もなかったかのように話を始める。隣のオバさん2人も世間話に戻っている。なんとも不思議な光景だった。

線路で列車を待つ人。本数が少ないのはあるのだろうが、ひかれても完全に自己責任ということだろうか。
 20:30、私の乗った列車は無事ファランポーン駅に到着した。カオサン通り方面へ向かうバスを探したが見つからない。トゥクトゥクはどうも好かないので、仕方なくタクシーと値段交渉を始めた。100Bくらいのものがほとんどだったが、1台だけ60Bでいいというタクシーがいたので利用することにした。やはり冷房が効いている車内は気持ちがいい。それに早かった。20分もしないうちにタクシーはカオサン通りへ到着した。ゲストハウスへ戻りシャワーで今日の汗を流したあと、夕食のため再び外出した。向かったのは昨日の夕飯でも行ったあの店だ。今日はWeeも清水さんもいなかった。私は青菜炒め(チキン入り)とライスを注文、さらにファンタ(ミリンダ?)と水を追加注文して40Bだ。うまいし安い。この店はカオサン通りで行きつけになってしまいそうだ。腹も十分満たされたので、やはり昨晩行ったバーへ向かいカールスバーグを1本飲んだ。この店は欧米人をターゲットにしているためか、大音量のロックが流れ大型テレビではサッカーの試合を放送しているのでいつまででもいることができた。ゲストハウスに戻った私は再びシャワーを浴び、軽く出発の準備をした。明日はいよいよ旅の最終日だ。少しずつ寂しさと孤独感を覚え始めている私は今、日本へ帰りたいと思っている。

つづく

2005/12/29(Thu)掲載