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シェム・リアップの郵便局。どう見ても傾いているように見える。
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今日は遅く起きた。既に10:00になっていた。朝早くMABUが「スラ・スランへ朝日を見に行こう」と誘ってくれたのは覚えている。しかし、何しろ疲れていたのだ。ドアを開け、「今日は疲れているので勘弁してほしい」とお願いした後、また眠りについた。朝食にScramble Egg with Breadを食べた私はAir Mailを出すために郵便局へ向かった。今回は比較的長い旅だったので、ぜひAir Mailを出してみようと思ったのだ。(結局宛先の手に届いたのは帰国後だったが)ハガキ1枚につき2,200リエル(日本円で70円弱)、非常に安い。日本にいて国内にハガキを出すときの切手と同じ料金でAir Mailを出せてしまうのだ。日本はもっとコミュニケーション料を安くするべきだと思った。電話代、携帯電話代、メール代、郵便代、これらを用いたコミュニケーションは今や人間にとって絶対に必要なことであり、そこに金をかけさせれば払わないわけにはいかなくなる。しかし、だからこそ人間の本質であるそこにお金をかけさせてはいけないと思うのだ。
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街中を堂々と流れるシェム・リアップ川。両岸は奇麗に整備され、若干観光地的な雰囲気である。
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それから私はオールド・マーケット周辺を歩き回りゲストハウスに帰ってきた。なんだか今日はとても疲れている。なぜだろう。そう、それはマレーシアの旅の最終日に感じたそれと似ていた。午後からMABUとトンレサップ湖に行こうと言っていたのだが、キャンセルしよう。昨日からなんだか金の使い方にシビアになっていたのもあったし、そういったものに対する交渉にも疲れた。さらにトンレサップ湖近くにある観光スポット、プノン・クロムは山である。今、この精神状態で、さらに感情がわけがわらなくなっている中だと、ちょっとした小高い丘であるプノン・バケンに登れと言われても嫌になりそうだ。とにかくlこのゲストハウスは疲れる。おかしな話だが、親しくなりすぎただけに疲れる。昨日も考えたことだが、おそらくこの街にはもう来ないだろう。もし万が一次にこの街に来ることがあったらこのゲストハウスは訪れるかもしれない。しかし、それはきっと挨拶程度であって、ここに泊まるということはないだろう。それにしても、せっかく親しくなったモノを突き放そうとしている自分は本当に不思議だ。なぜだろう。
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一歩路地を入ると、急速な観光地化の裏で追いやられた現地人たちの生活風景を見ることができる。
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私はこの旅で初めて昼寝をした。前のマレーシアの旅ではよく昼寝をしていたが、この旅では初めてだった。起きるとすでに日は傾きかけている。そう、今日一日どこへも行かなかったのだ。これは明らかに疲れてきている証拠だ。日本人バックパッカーの間でよく「沈没する」という言葉を耳にする。沢木耕太郎が「深夜特急」の中で用いた言葉(本の中では「沈殿」だったような気がするが)だが、それは一カ所にとどまって動けなくなってしまう状況をさす。別にそこで何をするわけでもない。次の行動に出れなくなってしまうのだ。結構軽々しくこの言葉を使う人が多くて私はこの言葉を口にするのを非常に嫌うのだが、後から考えると動けなくなることはないにしろ、もしかしたらこれと似た状態に私は陥っていたのかもしれない。とにかく何もやる気が起きないのだ。明日タイに戻るのも億劫になってきている。なんとかしたい。とりあえず土産用にでもカンボジアのタバコを買おうと外に出た。そしてそのまま散歩がてら山田さんの宿泊しているSky Way Guest Houseまで歩いて行った。歩くと片道20分くらいの距離だ。もちろんまだ日が傾きかけた15時過ぎ、7日券を買っていた彼が遺跡巡りに出掛けているだろうことは容易に察しがついた。それでもいいのだ。ただ歩きたかった。
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今回宿泊したHello Guest Houseの門。「地球の歩き方」には載っていないが清潔で過ごしやすい宿だ。
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夕食をゲストハウスで食べ、山田さんに別れを言うために今度はMABUのバイクタクシーでSky Way Guest Houseへ向かった。近くの出店でMABUも含め3人でTiger Beerを飲みながら会話をする。彼はもう2、3日ここに滞在してから川を下ってカンボジアの首都プノンペンへ向かうことにしているようだ。ここシェム・リアップからプノンペンまでの川下りは結構危険という噂を聞いている。2000年に入ってから所々で強盗が出たり、あるいは古い船が壊れて沈んでしまうというアクシデントが続いており、結構な犠牲者が出ているらしい。ぜひとも旅の安全を祈りたいところだ。そこから今度は一度タイに戻り、ラオスに行くそうだ。ラオス、マレーシアのペナン島で青年海外協力隊でラオスに滞在していた沼田さんからこの国についての話を聞いたことがあった。それまでそんなに名前を聞いたことがなかったこの国、日本に帰ったらぜひともチェックしようと思った。結局1時間ほど話してアドレス交換をして別れた。「良い旅を!!」だ。帰る途中思った。そういえばここシェム・リアップの夜空をしっかり眺めたのは初めてだ。思ったより星が見えなかった。
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Hello Guest Houseのコミュニケーションスペース。ここで旅人たちは旅の情報交換や人生論の講義などをする。
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ゲストハウスに帰ってきてシャワーを浴びた。広間へ戻るとBOREYが日本語を教えてくれと言ってくる。本当に勉強熱心だ。彼の将来の夢はカンボジアで日本語教師をやることだそうだ。彼がもし将来日本に来ることがあったら、絶対に落胆しないような日本にしておかなければいけないと思った。今日は新しいピックアップトラックがここへ到着するらしい。今回はMABUはボーダーには行かなかった。どうやら旅人の入れ替えのタイミングのようだ。ちょうどいい。明日は6:00起き、またピックアップトラックで悪路の中を国境まで行かなければならない。それがどのくらいハードなことかは来るときに十分体験している。果たして今の精神状態で乗り切ることができるのだろうか。私は奮発して8$払って、ピックアップの中の席を確保した。それにしても本当に疲れた。なんだか急に日本にいる友人や仕事仲間と飲みに行きたくてしょうがなかった。日本に帰りたい。今ここに「どこでもドア」があったなら迷わず日本へ帰るだろう。もしかしたら、本当は私は一人旅なんてできる人間じゃないのかもしれない。そんな不安も沸いてきた。もういい。とにかくこんなときは寝てしまおう。
つづく