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マラッカのChurch of St.Francis Xavler(サン・フランシス・ザビエル教会)。ザビエルオジさんはアジア各地に影響力を持っていたようだ。
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悩む私を放っておいて、朝は当たり前のようにやってきた。昨晩はこの地を去るべきか、あるいは居残るべきか悩んでいたが、目覚めたばかりの私はすでに首都に向かう覚悟を決めていた。時刻は8:30、Traveler's Lodgeの2階が食堂で私はHarryが料理してくれたオムレツとツナサンドウィッチを食べ朝食とした。ベランダのテーブルで一服しているとAziziが洗濯物を持って歩いてきた。しかし、私と目を合わせようとはせず、スゥーっと通り過ぎてしまった。昨晩からAziziは何か私との別れを寂しがってくれているようで、旅立つ方の私としては少々つらかったが、嬉しかった。しばらくすると、昨晩このゲストハウスで会った長谷川さんが起きてきた。彼はマラッカに来る前にクアラ・ルンプールに滞在していたということで、これから私がクアラ・ルンプールに向かおうとしていることを告げると彼が滞在していたバスターミナル前のゲストハウスを紹介してくれた。値段は少々高めに感じたが、首都であるせいか、これでも安い方だと言う。まあ。とりあえず候補としてあげておこう。
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マラッカのDiscovery Cafe。別に中に入った訳でもないし、おいしいカプチーノを出す訳でもなさそうだが、何かこの看板のメッセージに惹き付けられてしまった。
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旅立つ時間だ。結局、先ほどは素っ気ない態度をとっていたAziziもHarryと一緒にゲストハウスの下まで私を見送りに来てくれた。クアラ・ルンプールへ向かうにはマレー鉄道と長距離バスという選択肢があるが、長距離バスの方が本数も多く、早いと言う。ゲストハウスに向かうときは夜も迫っていたので公共バスを利用したが、私はこのマラッカに来るときに停留した長距離バスターミナルまで歩いて行くことにした。途中、Stadthuy'sを越えたあたりにChurch of St.Francis Xavler(サン・フランシス・ザビエル教会)があった。優美なゴシック様式で何とも素晴らしい建物だったが、何より日本にキリスト教を広めたことで有名なザビエルがこんなところにも足跡を残していたことに驚いた。さらに歩いて行くとちょっと面白い建物が見えた。ガイドブックにもどこにも載っていないDiscovery Cafeという名のそのカフェは特に何をやっているという訳ではないのだろうが、なかなかユニークなデザインと"発見"というメッセージが何か私のこのときの心境とマッチした。カフェ名の下にはConnecting People around the worldと書かれている。"世界中の人々をつないで自分を発見する"、そんなメッセージに受け取れ、今回の一人旅で私が感じたことに似ているような気がした。バスターミナルは思ったより遠かった。小一時間ほどは歩いただろうか、重い荷物と照りつける太陽でターミナルについたころにはヘトヘトになっていた。ターミナルは地元のスーパーマーケット、ハン・トゥア・プラザがあることもあって、やはり現地の人たちで賑わっていた。また、ここからクアラ・ルンプールをはじめ、マレーシア各地に旅立っていく人もほとんどが現地人だった。今回の旅でマレー鉄道に乗れなかったのは少々残念だったが、まあまたの機会に乗るとしよう。そして、そのときは必ず再度このマラッカという素晴らしい土地を訪れよう。そんなことを思いながらわずか8RMで私を首都まで運んでくれるバスに乗り込んだ。
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クアラ・ルンプールのSt.John's Cathedral。ジョン牧師が何をした人かは知らないが、ザビエル教会より幾分か大きかった。後方にはKLタワーが建っている。
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バスはたった2時間半でクアラ・ルンプールのPudu Rayaというホテルの中にあるバスターミナルへ到着した。バスを降りてまずこのバスターミナルの広さに驚いた。いくつものレーンがあり、何十台もバスがいる。ターミナル内は民芸品や食料(おそらく長旅のためのもの)などを売る小さな商店が軒を連ねている。本当にマレーシア全土から、ここ首都クアラ・ルンプールに人々が集まってくるんだなぁと思わされた。私は早速バスターミナルを出て歩道橋のようなところを渡りゲストハウスを探すことにした。歩道橋の上から下を見てみるとかなりの量の車が走っている。歩道は狭く、ゴミゴミしている。上を見ると、遠くに高層ビルが立ち並ぶ。間違えなく大都会だ。歩道橋の上には物乞いをしている人がいた。今までのペナン島やマラッカではほとんど目にすることのなかった光景だ。都会であるが故の貧富の差、そんなものを目の当たりにした感じだった。長谷川さんが紹介してくれたゲストハウス、Anuja Backpacker's Innはバスターミナルから近い建物の中にあった。料金は25RM(Deposit込みで35RM)、やはり今まで旅してきた場所より若干の割高感はあるが致し方ない。部屋はファンがあるのみで、トイレとシャワーは共同だった。この道の狭い、圧迫感のある都会の中を重いバックパックを背負って歩き回るのもつらいだろうと思ったし、旅の残りも少ないので早くマレーシアの首都を満喫したい思いから、私はここに泊まることにした。唯一、最後まで私を迷わせたのはこのゲストハウスにはバックパッカーたちのコミュニケーションスペースがなかったことだ。結局、まあ一晩限りなのでということで納得した。
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赤褐色のガイドブックにない、されど立派な建物。おそらくお坊ちゃまたちが通う学校ではないだろうか。何か由緒正しき学校のように見えた。
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荷物をおいて早速私はゲストハウスを出た。と言っても、ここクアラ・ルンプールでは特にどこに行こうと目星はつけていなかった。クアラ・ルンプールといえば国営の石油会社ペトロナス社の社屋として使われているイスラム教のモスクの尖塔をイメージしたペトロナス・ツイン・タワーやクアラ・ルンプールの街並を一望できるKLタワーが有名だが、それらは目と鼻の先に見えている。まずはゲストハウス近辺を適当に散策してみようと、ガイドブックをバッグにしまい込んで歩き始めた。ちょっとした小道に入ってみるとそこにマラッカで出発のときに見たChurch of St.Francis Xavlerによく似た教会が建っていた。St.John's Cathedralという名前のその教会(聖堂)はガイドブックには載ってさえいなかったが、白を基調にした立派な建物で、イスラム教が大半を占めるここマレーシアの首都にもキリスト教が根付いていることを感じさせた。そこから少し歩くとやはりガイドブックには載っていない赤褐色の立派な建物が見えてきた。こちらは雰囲気から言っておそらく学校だろう。それにしても、もしこれらの建物がマラッカやペナン島にあったら、それなりに観光地として紹介されてもいいようなものである。規模も内容もやはり"首都"なのである。今まで旅してきたマレーシアとは違う、何かマレーシアの田舎から初めて都会に出てきた現地人のような感覚を持ちながら私は散策を続けた。
つづく