旅行記3-3

今日は元旦。従って、殆どの観光施設やお店はお休みです。
それを見越して、今日1日は教会巡りを中心とした計画を立てています。

まずはトラムに乗って、サン・ジョバンニ・イン・ラテラーノ教会へ向かうことにしました。
停留所を確認しながらちょっと緊張していると、まん前の座席に、かなりお年を召したおじいさんが一人座りました。とても優しそうな表情をしたおじいさんです。

トラムはしばらく進むと、コロッセオの真横の、車窓から絶好の景色を眺められるポイントを通過しました。すると先ほどのおじいさんが、私の方をニコニコ笑顔で見ながら、
「あれがコロッセオだよ」
と、教えてくれたのです。その優しい表情に私も嬉しくなって、「素晴らしいですよね」と相槌を打ち、「私はラテラーノ教会へ向かう所なんです。」と伝えました。
その後しばらくして、おじいさんは降りる様子で立ち上がり、再び私に向かって、「あと・・・先の停留所だよ。」と一生懸命伝えようとしてくれました。
でも、お年を召しているせいか、なまっているのか、よく聞き取れず私がちょっと怪訝そうな顔をしていたら、また「あと△×○載ればいいから。」と、ニコニコ笑いながら何やら一生懸命言ってくれるのです。
そうこうしているうちに、トラムはおじいさんの降りる停留所に到着してしまいました。
ところがドアが開かないのです。どうやら降りる人は自分でボタンを押さなければならないようだったので、あわてて私がかわりに押そうとしたのですが、もたもたしているうちにトラムは走り出してしまいました。
「ひぇ～～～、待って～～～！」
それでもおじいさんはニコニコしています。
「やだやだ、私のせいでおじいさんが降り損なってしまったのかしら。」とあせっていたら、おじいさんはなおも私に、
「あと２つだよ。」（やっと理解できた）
と、説明してくれるのです。
あ～～～イタリアーノの紳士ってジェンティーレ（優しい）！！

次の停留所でおじいさんは無事降りていったのですが、足元がお悪い様子だったので、目的地まで行くのが大変だったのではないかと、ちょっと心配でした。
おじいさん、優しくしてくれて本当にありがとう。

さて、トラムはしばらく進み、本当に次で降りて大丈夫かな？と思っていると、角を曲がったとたん、目の前に巨大なラテラーノ教会が見えてきました。
このラテラーノ教会はローマ4大聖堂のうちの一つで、外観・内部共、本当に素晴らしく、その荘厳な佇まいには圧倒されるばかりでした。
中心地から少し外れているせいか、ヴァチカンのように観光地化されておらず、訪れる人もさほど多くないので、静かに見学することが出来ます。

中では新年ミサをしていたので、静かに一番後ろの席に座って、神父さんの祈りの言葉を聞いていました。もちろん、意味など全くわからないのですが、静かなその語りが心に染み入り、これからの1年を平穏に過ごせるよう、心を清めてくれたような気がしました。

教会を出て、近くのバス停からバスに乗り、テルミニ駅へと向かいました。
次は、テルミニ駅周辺にある３つの教会を目指します。

まずは、サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会へ。
ここは、ディオクレティアヌス帝の浴場跡に建てられたものということで、教会というよりは、古代遺跡の崩れかけた廃墟に入口が付いているといった様相です。
外観はあまりぱっとしないのですが、中はアンジェリ（天使）の名にふさわしい、美しくもおだやかな色彩に満ちた絵画が壁を飾っています。
この日は全部で４つの教会を回ったのですが、このサンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会が私の一番のお気に入りとなりました。

次に向ったのはサンタ・プラッセーデ教会。
建立されたのが9世紀と、大変古い歴史を持った教会で、特徴的なのはローマ時代のモザイクで飾られているということ。
はっきり言って地味な観光向きの教会ではありませんが、新年ミサには熱心にお祈りする信者がたくさん集まっており、地元の人たちに愛されている教会なのだということがわかりました。

そして、今日２箇所めのローマ４大聖堂のひとつ、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂へ。
ここも建立されたのが４世紀と、1,600年以上もの歴史を持つ教会ですが、ファザード、後陣、内部、すべてが絢爛豪華で、当時のローマの隆盛がしのばれます。

教会を出た後はテルミニ駅へと向かいました。
テルミニ駅構内には本屋さん、ＣＤショップ、スーパーマーケットなどが並んでいるため、ちょっとした買物を楽しむことができます。３６５日無休なので、元旦にも買物が出来るのが嬉しい！

しばらくフラフラした後、２Ｆのセルフ・レストランで遅いお昼を食べることにしました。
このレストランは、トレーに好きな飲み物、パン、フルーツなどを取って、最後にレジで清算してから好きな席に座って食べるというシステム。パスタや肉料理などは、その場で調理してサーブしてくれるので、熱々を食べることが出来ます。
私はシーフード入りトマト・ペンネを食べたのですが、これが結構美味しかった！
とは言っても、日本のセルフ・レストランと比較しての話なので、グルメな人が行く所ではけっしてありません。あしからず。

一旦ホテルに帰り、時間もかなり早かったので、近くのサヴェッロ公園に散策に行くことにしました。
ここは別名「オレンジの公園」。本当にオレンジがたわわに実った木がたくさんはえており、展望台からはテベレ川をはさんで、対岸のサン・ピエトロ寺院などを一望することができます。
次々とたくさんの人たちが訪れていたので、地元民や観光客になかなか人気のスポットとなっているようでした。。

しばらく景色を楽しんだ後ホテルに戻ったのですが、初日に続いてなんだか体調が思わしくなく、私にしては珍しくホームシック状態に。
どうしてだろう・・・なんだか早く帰りたくてしかたがない・・・。
後にして思えば、この時すでに、帰路に起こるとんでもないトラブルを予知していたのかも？！