MORI Hiroshi's Floating Factory Gyro Monorail Workshop
ジャイロモノレール資料館(1号館)


Louis Brennan and his daughter on his gyro monorail model 1907.


★ジャイロモノレール関連の資料を集めました。未整理の状態です。少しずつ加筆していくつもりです。
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Louis Brennan's and his gyro monorail

 Louis Brennanは、魚雷開発の技術者だった。魚雷の進行方向を自動制御する技術として、ジャイロによるスタビライザ(姿勢安定装置)が発案された。
 筆者が知る範囲では、つい最近(15年ほどまえ)でも、ミサイルなどに回転式のジャイロが姿勢制御のために用いられていた。
 ワークショップにいるBrennanの写真は珍しい。仕事中ならば、スーツを着ているはずがないが。
 よく見ると、地球ゴマのようなジャイロを手にしている(ヤラセであることはまちがいない)。この写真から描かれた絵が、Brennanの肖像として用いられていることが多い。
 ジャイロモノレールの実機の予想図。ツインジャイロをキャビンに装備している。車両前面にある2機の四角は、ラジエータで、エンジンを回して発電し、ジャイロとコンプレッサ、走行用モータを駆動する。コンプレッサは、ジャイロのジンバルに加力するサーボモータのため。また、ジャイロは回転抵抗を低減するために、真空容器で覆われている。これらは、実際に作られた車両とほぼ同じであるが、後方の客室が実機では間に合わなかった。
 この右にある肖像も、1枚上の写真から描かれたもの。
 Brennanの工場で1908年に撮影された写真。友人たちとともに中央でステッキを持って写っているのがBrennan。このジャイロモノレールは、1910年にホワイトシティで開催された英日博覧会で展示され、入場者を乗せた。
 この実機は、2機作られていて、博覧会のための予備だった。その後、1機は、20年ほど遊園地で余生を送った。もう1機は解体された。
 同機を前から見た写真。トリックではなく、1本のレールの上に立っている証拠である。もちろん、動画は残っていない。
 ジャイロを止めるときには、倒れないようにスタンドをサイドに出した。電源が切れてから、ジャイロが停止するのに(ジャイロが真空中で回っているため)40分ほどかかった、と記録にある。


Louis Brennan's gyro monorail Model

 Brennanが実機に先駆けて作った模型のジャイロモノレール。これは、政府の予算を獲得するためのデモンストレーションのためだった。この絵は、有名な写真から描かれたもので、彼が自分の娘をジャイロモノレールに乗せ、ワイヤロープを渡らせているところ。
 エドワード・ジェンナが、自分の子供に種痘の予防接種をさせたみたいなイメージだろうか。
 同じく、Brennanの自宅で行われたデモンストレーションの様子を描いた絵。パイプ(ガス管?)がレールに用いられた。
 紳士淑女が訪れ、見学をしている長閑な様子であるが、これは実際とは違っていたように思われる。見学者の多くは、軍部の人間であったはず。
 ヨークにある国立鉄道博物館に展示されているBrennanのジャイロモノレールの模型。上記のデモンストレーションに用いられた実物である。白く見えているのがツインジャイロで、白いのは容器で、ホイールは見えない。ホイールインモータと思われる。後部に人が座れるシートがあるが、この下にバッテリィが置かれていた。現在は動かない(動かそうと思えば可能だろうが、修復する技術者がいない)。
 全長は180cmほど。ジャイロのホイールは13cmくらい。後ろの壁に、写真が飾られているが、これらの写真は購入ができる(本サイトで使用している写真は購入したものである)。
 上の模型のツインジャイロの仕組みを説明した図(バランシング・ホイールと記されている)。ジャイロの回転軸は、車両の傾きに応じて、両サイドどちらかに接触する(図の右であれば、CとGが接する)。この接触によって、ジャイロのジンバルに力が加わり、歳差を促す。
 ただし、この図では、ツインジャイロが対称に歳差運動することがわからない。1枚上の写真からわかるように、2つのジャイロは左右対称に歳差運動するようにギアでリンケージされている。また、図では、2つのジャイロの軸が同一のように見えるが、そうではない。互いに逆回転している。
 大人が乗っている写真。これほどの搭載能力があったとは、少々信じ難いが、この写真では、キャビンの屋根がなく、試作段階のモデルだったかもしれない。淑女の姿は見当たらない。
 ジャイロのホイールは、全重量の3〜5%程度が必要と言われていて、2つのホイールが合計で5kgあれば、総重量で100kgまでは可能となるので、不可能でもない。
 これが、Brennanの娘が乗った写真。
 少年を乗せた写真は、2枚ある(違う少年の意)。綱渡りをしているところ。万が一転落する危険があるため、よほど自信がなければできない荒技といえる。


August Scherl's gyro monorail

 ドイツのScherlが開発したジャイロモノレール。4人乗り(運転士以外で)の小型の車両であるが、模型ではなく実機。Scherlは、実業家であり、彼が自分でこれを開発したのではなく、優秀な技術者、設計者がいた。イギリスのBrennanの成功を聞きつけ、試作したものと思われる。このScherl機が現れたため、Brennanも実機の公開を早めなければならなかった。
 これが構造図。車両の下部中央にあるのは、2機のジャイロのジンバルが対称に歳差運動するためのギアリンケージ。左にあるのが、ジンバルを動かすサーボでモータ。加力には、油圧が用いられていた。


Pyotr Shilovsky's gyro car

 Shilovskyは、ロシア人だが、Brennanの弟子であり、イギリスに住んでいた。彼は、Brennanの後を継ぎ、ジャイロによる姿勢制御を自動車に応用した。オートバイよりも大型での2輪車が試作された。
 モノレールを実用化するには、巨額の資金が必要だが、自動車であれば、需要がある、と考えたのだろう。しかし、自動車を2輪にしなければならない理由は、残念ながらさほどない。
 別の角度から同じ写真。カメラマンが移動しているはずだが、車両は同じ位置に停車したまま自立している。6人が乗れるようだ。
 ボディやシートを外した写真。ジャイロは、運転席の下にある。ツインではなくシングルジャイロだった。このため、このジャイロカーは、左折時に何度か転倒事故を起こしてしまい、実用化に至らなかった。ジャイロの回転方向と同じ方向への転回が苦手なのは、Brennanも理解していて、そのためにツインジャイロにしたのだった。
 同じく、ジャイロ搭載部のハッチを開けているところの写真。
 構造図。これを見ると、ホイールがかなり大きいことがわかる。おそらく、低速回転のジャイロだっただろう。
 シングルジャイロのジンバルをコントロールする仕組み。左にあるウェイト(分銅)によって、ジンバルに加圧するギアを持ち上げる様子が示されている。これは、Shilovskyの特徴で、左右のカーブで異なる力をジンバルに与えていた。車両が左折するときの対処といえる(それでも事故があった)。
 通常は、車両が傾くと、ジンバル左右のギアのいずれかが接触し、ジンバルに加力する。Brennanは、ジャイロの回転軸の接触摩擦を利用していたが、Shilovskyは、ジャイロの回転軸をウォームギアで減速し、左右のギアへ伝動している。このギアが、シャーシから突き出た扇形のギアに当って動かす仕組みとなっている。この図では、このギアが逆回転していることも示している。

 このような構造図は、文章よりも多くのことを語る。じっと見ているうちに、仕組みが理解できてくる。


Gyro car in USA

 アメリカのLouis E. Swinneyが開発したジャイロモノレール。Gyro-Dynamics方式という、ウェイトを左右にシフトさせる技術を用いている。(筆者の想像だが)イギリスのBrennanの特許を回避するために考えだされたものだろう。1962年のこと。
 筆者がジャイロモノレールの模型をYouTubeで発表したあと、このSwinneyのモノレール協会(?)の副会長から連絡があり、当時の動画がDVDで送られてきたが、映っていたのは不鮮明で数秒間の映像だった(現在は、YouTubeで公開されている)。
 イギリスの場合と同じく、モノレールでは資金が得られなかったようで、その後、路上を走るジャイロカーに技術が応用された。自動車ならば、わざわざ2輪にする必要はないし、既にオートバイが存在するのだから、存在価値が認められない。
 この写真は、Gyro-X carと呼ばれたもので、1967年にAlex Tremulisがデザインしたもの。シングルジャイロを搭載し、時速200kmで走れる(たぶん、直線に限られるだろう)。
 最近になって、この車のスクラップを入手した人が、3輪車に改造して走らせている動画が公開されている。価値が理解できなかったとしか思えない。
 これは、1961年にフォードが発表したFord Gyron。いわゆる、コンセプトモデルで、生産・販売には至っていない。


Etc.

 イギリスのおもちゃメーカ、バセットロークが作ったジャイロモノレールの模型。大きさは5インチゲージくらい。シングルジャイロだが、ジンバルコントロールの方法は、この小さな写真からは読み取れない。
 ネットで見つけたイラスト。細い道しかない工事現場で使われる運搬車だろうか。いずれの車両にもジャイロを搭載する必要がある。右下の写真は実機らしい。人がこんなふうにしても倒れない様子を示している。アメリカで、1960年代に同種の特許申請がある。
 ジャイロモノレールではないが、19世紀後半から20世紀初頭にかけては、モノレールこそが鉄道の高速化の切り札と考えられていた。ここにある、時速150マイルは、時速250kmくらい。写真にあるのは、懸垂式モノレールで、各地で実際に作られたが、さほど高速度ではなかったようだ。
 ジャイロモノレールの想像図。海上に建てられた鉄塔にワイヤを渡し、そこを走行している。これが実現しなかった理由は、飛行機の進歩にあるだろう。



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