それは十数年前、私が高校二年生の夏のことです。
友達3人と放課後に教室に残っておしゃべりをしていました。
もうすぐ夏休みということもあり、遊びに行く計画は次から次へと浮かんでは話込んでしまってとうとう外は薄暗くなり、学校中には誰もいなくなってしまったようでした。
教室の扉が開き、見回りの先生が入って来た。
「いつまでも話してないで、早く帰りなさい。」
今まで最高潮に盛り上がっていた話題を中断され、私達は仕方なく帰り支度を始めた。
「はーい、今帰りマース!」・・・立ち上がりながら返事をして教室を出た。
長い廊下を歩き、階段を下りたところで私はトイレに寄りたくなった。
「ちょっとトイレに行ってくるね。」そう友達に言って、私は玄関近くのトイレに入った。
個室に入ると、扉の外では友達3人がさっきの話の続きを話していた。
私も個室の中から彼女達に話しかけた。
「だからさぁ、さっきの話・・・」「うんうん、そうだよねー」「でもさぁ・・・」「そうそう・・」
と会話は続く・・・
用を足し終り「それでさぁ〜」と言いながら扉を開けると・・・誰もいない!
個室は全て空いている。
手を洗うのも忘れて廊下に出てみるが、誰もいない。
慌てて玄関まで走っていくと、友達3人はすでに外に出ていて、数百メートル先の校門の所に立って私を待っているようだった。
「今の今まで私と話をしていたのは・・・一体誰?」
急いで靴を履き替え、外で待っている友達のところに走った。
「ちょっと!一緒にトイレに寄ってくれたんじゃなかったの!」
息も切れ切れに私が言うと、友達の一人が「先に行ってるよって言ったじゃない。」と少し不機嫌そうに言う。
するともう一人が「そうそう、言ったよー。それに独り言しゃべってるの聞こえていたよー。」
独り言? 絶対にへんだ。確かに誰かと会話をしていた。だが、この3人が私を騙すということも考えられない。第一、トイレの扉を開けるその瞬間まで会話をしていたのだから。その後にどんなに早く走ったとしても靴を履き替えて数百メートル先の校門の所に立って私を待っていることなど出来る訳がない。
「すると・・・私が話しをしていたのは・・・」
それ以来、私達は放課後遅くまで残ることは無かった。
(亜空間通信第四号は、北海道在住のH.N.零子さんから頂いた投稿メールを掲載させていただきました。)
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