□□ ROYAL PRINCE 42石 手巻き AS cal.1700/01 □□
□2009/5/2


 今回は、ROYAL_PRINCEというメーカーの時計です。まったく知りません。アメリカで時計を収集した方が売りに出したものを4本、4500円くらいでゲットしたもののひとつですので、たぶん、販売メーカーはアメリカだと思います。アメリカものって、ムーブメントはスイス製が多いようです。アメリカも日本と同様にスイス信仰があります。また、今はどうか知りませんが、完成品を輸入すると関税が高かったらしいので、スイス製パーツを輸入し、アメリカで組み立てという方式も多かったようです。UNADJUSTEDなどの表記が見受けられますが、それがアメリカで組み立てられ、ADJUST(調整)されたものらしいです。

4本4500円でしたので、さほどの期待もなかったのですが、裏蓋を開けてローターに書かれた文字を見て、俄然、やる気が湧いてきました。なんと41石と書かれています。時計には、摩擦防止に宝石が使われています。一般にその数が多いほど高級です。それでも普通は20石〜30石くらい。それが41石! 石数を無闇に増やす爛熟記もあったらしいので、そういうったものだと思いますが、それでも気になるムーブメントです。


さて、分解開始。見た目はとてもキレイです。銅メッキ? ピンクゴールドメッキ?されています。1970年代くらいまでのオメガも、こんなカラーのメッキを施されたムーブメントが多いようです。


ローターを外します。写真は、すでにネジをひとつ外しています。二つ目のネジの下にスライドする板があり、それを軸側に回すことで、固定する仕組みでした。自動巻きの分解は、まだ4つしかしていませんが、これは初めて見る仕組みでした。


ローターの回るところを取りはずし、台座をちょっと外したところです。


ローターの台座を裏返してみました。わりと単純な仕組みです。


ローター関連をすべてはずしたところ。テンプの周りがとてもスッキリしたデザインです。香箱を押さえる板がコンパクトに作ってあり、そのため、テンプ周辺がスカスカした感じになっているようです。



ここでキャリバーを確認。AS cal.1700/01 とあります。AS社の1700/01というムーブメントでした。あとで、ネットで調べてみると、

→http://nakahiro.parfait.ne.jp/moji2/waltham100.html

上記のような情報がありました。これまた由緒正しいムーブメントのようです。果たして、私の41石はどんな石構成になっているのでしょう。



と、分解を進めていっても、いっこうに石は増えていきません。若干の前後はあっても、20石程度の機械と同じような構成です。石って見えないところにあったりして、数え方がよくわからないのですが、一応数えてみると、

テンプ周り−4石、アンクル周り−2石、ガンギ周り−2石、輪列周り−5〜6石? ローター周り−6石? 

となるので、19〜20個といった感じ。あと21も足りません。でも、もう分解するとこもわずかです。



ちなみに、これが香箱押さえ。とっても小さいです。香箱車までがメッキされているのも初めて見ました。けっこう手が込んでいます。こういうところもしっかり仕事されているところをみると、いい機械だと断定していいようです。

そうそう、ここで気づいたのですが、油がまだ残っていました。これだけ油が残っているところをみると、ちょっと前にメンテナンスが行われたかも知れません。しかし、そのわりには、時間や動きは不調でした。動きがわるいので、簡単な注油だけが行われたかも知れません。

話はそれますが、最初の分解の頃は、私もこの写真のような注油をしていましたが、最近は、こんな感じには注油しないようになりました。というのも、香箱車って軸以外は、押さえ板に接していないことに気づいたので、面に油を塗っても、あまり意味がないように感じたからです。



香箱をはずしてみると、なんとここに大量のピンクの石が登場。16個見えます。こんな部品を見るのは初めてです。香箱車の下にあり、香箱の軸と噛み合って回っています。通常は香箱の軸だけで、香箱車は回りますが、この仕組みでは、石を挟むことで、さらに摩擦力を低下させるということなのでしょう。

はずしてよく見たかったのですが、横のネジが、とても固く、またラドーのようにネジを破壊してしまってはいけないので、諦めました。石数は周囲に16個、軸に1〜2個あるようです。さきほどの19〜20個と足すと、35〜38個くらいとなります。

どっかに見落としがあるかもしれませんが、だいたいこんな感じで41石が構成されているようです。

また話が少しそれますが、取り外せなかった香箱受け石付き歯車のとなりの歯車。これがなんのためにあるのかわかりませんでした。香箱の回転とは連動しているのですが、それ以外と連動していないように思います、たぶん。

あとで考えたのですが、もしかしたら、この機械にはパワーリザーブ表示できる機能があって、この歯車と連動する歯車を文字盤側につけて、針をつければパワーリザーブ表示が行われるのかも?

パワーリザーブ表示の機械を分解したことがないのですが、たぶん、香箱車と連動した仕組みだろうと想像していました。これを見ると、その可能性は高いように思います。



これが文字盤などを除くパーツです。


こちらが文字盤側のリューズ周辺。ここもスッキリとした印象です。



これは文字盤側のテンプの真下です。テンプの軸を受ける石を外しています。インカブロックと呼ばれる耐震機構をそなえた軸受けです。穴があって、そこにカップ状のものがあり、その上にピンクのルビー(たぶん人工ルビー)が入っています。カップ状のものにも石が貼られています。どこが耐震なのかいうと、その石などを押さえるものが、針金のような板で、軽く、穴に差し込んである弾力のある構造となっていることです。非耐震タイプの軸受けは、ガッチリと石をネジ止めしているので、軸に上下の余裕がなく、振動によって折れやすくなっています。



そんなわけで、とてもおもしろい分解でした。これが時計の見た目。表にはどこにも41石など書いていません。もしかしたら、文字盤は違うのかも? 多くの時計では、石数は売り文句なので、文字盤に41jewelsとか書くものなのです。


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