□□ シチズン ホーマー □□
□2009/4/13


ジャンク時計復活シリーズ、第3弾。シチズンのホーマー、という時計です。
機械式時計に興味を持った理由のひとつに、シチズンのクロノマスターという時計がありました。
「機械式時計に見る現代の幻想と現実をめぐる話」
http://www.bekkoame.ne.jp/~wohya/040710.htm
というネットのコラムを読んだからです。

しかし、クロノマスターはオークションで探しても5万円近くが相場のようです。それはちょっと手が出せない。
そう思っていたら、クロノマスターの機械の原型がホーマーにあることを知りました。ホーマーは、鉄道時計としても利用されており、元々も精度のいい機械だったようです。シチズンの60年代前後を支えた名機のひとつらしいです。

そういうわけで、1500円でホーマーをゲット。動作も怪しい状態ですが、これのメンテナンスに着手。


機械はちゃんと動いている状態。遅れが出ていますが、それは油ぎれのようです。あと風防がとても緩い状態でした。たぶん、サイズが1つか2つ下の風防が入っているのでしょう。風防交換も今回の課題となりました。


ご覧のように、機械はとてもキレイです。21石、手巻き式、5振動です。


まずはテンプをはずします。今回は、作業になれて余裕ができたので写真も丁寧にとっています。


テンプをはずしたところです。赤い丸で囲んだところがアンクルというパーツのオシリのところ。赤丸の中心の穴にテンプが刺さる仕組みです。そして、テンプの軸についている突起が、アンクルのオシリの二股のところに引っかかり、アンクルを左右に動かすのです。


アンクルを外したら、次は歯車をとります。まずは、歯車を押さえている板をとります。ネジをはずせばすぐに取れそうなものですが、実はそうではありませんん。ネジとあわせて突起の凹凸で組み合っているので、ネジをとってもすぐにはパーツをはずすことができません。しかし、取り外すための設計もちゃんとできていて、赤丸のように、一部、ドライバーを差し込めるようなスキマがつくってあります。ここにドライバーを差し入れ、ちょっとずつ開いていきます。


歯車の押さえ板をとりました。もしかしたら、間違っているかも知れませんが、各パーツの名称を写真に入れました。四番車という歯車には、長い軸があり、それが表側まで地板や文字盤をも突き抜けています。その軸に秒針をさすわけです。また、この写真では見えませんが、その軸の途中に歯車が噛み合っていて時間や分の歯車も同時に動く仕組みです。

丸穴車につけた赤い矢印の真下に、小さな穴があり、その穴のところでリューズについた歯車と丸穴車が噛み合っています。そのためリューズを回すと丸穴車も回ります。

その丸穴車と噛み合っているのが角穴車。そして、角穴車の下に香箱と呼ばれるゼンマイが収まっています。



これは、丸穴車を取り外したところ。一見、一つの歯車のようですが、拡大図のように、実は、2つのパーツが組み合わされています。最初の頃は、こういうパーツに気づかず、落としてしまったり、あとでどのパーツなのかわからなくなり苦労しました。



角穴車、丸穴車のパーツです。ここにもゼンマイを巻き上げて止めるために仕組みが組み合わされています。組み上がった状態では見えないパーツが多いので、最初の頃はとてもドキドキした箇所です。厚みのあるネジが香箱車。この香箱車の中にゼンマイが入っています。


歯車も金色の大きな歯車だけでなく、その下に小さな歯車がついていて、それが隣の歯車と噛み合っていたりします。


テンプ、アンクル、歯車(輪列)、ゼンマイをとると時計の裏側は終了です。


これが時計の表側。文字盤側です。文字盤側は、日付表示などの仕組みがなければとてもシンプルです。面倒なのはリューズ周辺のみとなります。


ちょっとわかりづらいですが、上の写真がリューズを押し込んだところ。押し込むことで、根元の歯車のかみ合わせがはずれます。下の写真は、リューズを引っ張ったところ。ひっぱることで、リューズの根元が歯車とかみ合います。その状態でリューズを回すと、小さな歯車が回り、その横の大きな歯車も周り、中心の歯車も回します。その中心の歯車が時針や分針につながる歯車なのです。


リューズの仕組みを少し説明します。リューズを引っ張ると、その根元の板も引っ張られます。するとテコの働きで、その板の下にある“足”の形のようなパーツのカカトのところが押し下げられます。足のつま先は、歯車の噛み合っていて、その結果、歯車も押し下げられ、針とつながる歯車に噛み合う仕組みです。


これはリューズを取り出した所。リューズには3つのパーツで構成されています。また、リューズは丸い軸ではなく、一部、角のある四角い軸となっています。この構成があるために、リューズを引っ張ったり、押し込んだりした時に、歯車を回したり、空転させたりすることが可能になっています。


リューズまで分解すれば、すべてのパーツをとりはずしたことになります。手巻き、3針というのは一番単純な時計ですが、それでも、こんなにたくさんのパーツで構成されています。


分解が終了したら、次は洗浄です。ベンジンで洗います。ベンジンにもいくつか種類があるようですが、うちの近所には、衣類のシミ落とし用しか売っていませんでした。それで大丈夫だろ、と判断して、それを使っています。大丈夫と思った理由は、シミ落としようなので洋服が汚れないように純度が高く、かつ、揮発性が高いものなのではないか? と想像したから。間違っているかも知れません。


ベンジンをガラス容器に入れ、そのなかにパーツを入れ、そして超音波洗浄機で洗浄します。別に超音波洗浄機じゃなくてもいいです。ハケを使った手荒いでも問題ありません。最初の頃は、そうやっていました。超音波洗浄機って高価なイメージがあったのですが、調べてみたら2500円ぐらいから購入できることを知りました。ちなみに、これは4000円。メガネユーザーな私としては、4000円なら買ってもいいと判断しました。


洗浄が終わったら、しばらく乾かします。一気に洗浄したような構成ですが、実は違います。各パーツのブロックごとに数回に分けて洗っています。どのパーツかわからなくなる可能性があるからです。もうちょっと慣れてきたら、面倒なので一気に洗うようになるかも知れません。


洗浄・乾燥が終わったら組み立てに入ります。そして組み立てる時に注油も行います。オイルは3種類つかい分けています。一般的な稼働部分、歯車の軸が当たるところ、アンクルとガンギ車の3種類です。中央に写っているガラスの小瓶は自作品です。これまでは後ろに移っているパレットに油を一滴垂らして注油していました。しかし、その一滴で、たぶん10個くらいの時計に注油できる量なのです。しかし、パレットでは保存ができないので、1個の時計で一滴使い、みるみるオイルが減っていきました。

それで、ある程度小分けにできる容器を探しガラス瓶をゲット。ハンズで1個60円。ついでにそのガラス瓶を保管しやすいように、プラスチックケースと丸い筒をハンズで購入し、切断して接着。いい感じにオイル用容器ができたわけです。この容器に1〜2滴オイルを垂らし使っていますが、その1〜2滴で、すでに3個の時計に注油。オイルの節約ができるようになりました。


これは私の左手。組み立て作業に入る時には両手の指先に指サックをしています。100個入りで600円とか、そんな感じでした。指の脂はよくないらしいのです。でも、けっこう生指でつかんだりもしています…。まぁ、趣味とかマニアなものとかは、形が入るものです。そういうわけでも私も気持ちだけは本格的です。


たまに、ガリちゃんがジャマしに来ます。時計をいじるには劣悪な環境といえるでしょう。


そうやって組み上げて完成。この時計も非常にうまくできました。タイムグラファーで調整して、日差5秒以内に収まっています。40年近く前の時計で、1500円ということを考えれば、素晴らしい出来です。風防取り替えの写真を撮りませんでしが、風防も交換済み。実は、私がゲットした風防も、ちょびっと緩い感じがあったので、今回は、接着剤も使っています。防水機能はたぶんダメでしょう。


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