□□ croton 自動巻き cal.1256 □□
□2009/4/8


ジャンク時計復活シリーズ、第2弾。クロトンというメーカーの時計です。まったくり知りません。ニバダというメーカーの傘下らしいという情報をネットで入手しました。ニバダとは、クロノグラフなどでは、時々出てくる名前で、けっこう高級なラインナップらしいです。この時計を購入した理由は、ムーブメントがちょっと独特な感じがして素敵だったから。あとでわかったことですが由緒正しい機械を積んでいました。

この時計を入手してわかった大きな弱点がありました。それは、4時間くらいしか稼働しないこと。ゼンマイも巻けるし、自動巻きのローターも動いているのですが、ゼンマイを巻いて机の上において見ていると、4時間くらいすると止まってしまいます。それは、時計としては致命傷です。今回の分解は、機械洗浄とともに、その原因を解明し、できれば復活させることが目的となりました。


ちなみに、機械は自動巻き。17石。タイムグラファーで見てみると5振動です。

話がすぐにそれますが、この5振動、最近ではほとんどみない仕組みですが、非常に精度がいいです。どうして、最近では5振動の機械がなくなったのでしょう?


これが裏蓋を開けたところ。ニバダ云々という文字がローターに書いてあります。ローターとは、重りのようなものです。時計を腕につけて上下左右に腕を動かすと、この重りが重力に従って動きます。その動きを歯車で伝えてゼンマイを巻くわけです。自動巻きと言われる時計には、多少の違いがありますが、こんな機械が搭載されています。

まずは、このローターを取りはずことから分解は始まります。ところが! 通常、矢印のところがネジになっていて、それをはずすとローターが取れる仕組みなのですが、こいつにはネジがありません。いきなりの挫折です。ローターを指で回しながら、機械を調べてみると、ローターの台座がネジ止めされていました。台座ごと外す仕組みのようです。


これはローターを台座ごと外したところです。こんな外観になると、これまでいくつか分解した時計と同じような形になりました。ちなみに、機械は金色にメッキされています。昔の時計は金色メッキタイプが多いです。

すこし話はそれますが、現時点でこのホームページに紹介していないものも含めて8個の時計を分解しています。一番新しいもので6年前の時計。それ以外は、おおよそ30年以上前の時計ばかりです。でも、そんなに古い時計でも、機械はそれほど汚れていませんでした。もちろん、細かくみれば油が固着しているものなどあり、止まっていたりするわけですが、パッと見て汚い感じのものはありませんでした。だいたい時計の機械って、普通の人はまず見ることがありません。そのため、メンテナンスせずに何十年も使っても、密封に近いケースのなかに収まっているので、そんなに汚れるものではないのでしょう。

逆に言えば、機械が明らかに汚れているものは、水没したとか、よほど手荒い扱いをされていたと考えてもいいのかも知れません。オークションなどで古時計を買う時には、そうした点を考慮したほうがいいと思います。


これが取り外したローターの裏側。歯車がついているところがローターの台座です。セイコーでは、ベアリングがついて、かつ、マジックレバーという非常にシンプルで効率がいい仕組みがあるため、ローター周りの機械は少ないのですが、こいつは、見るからに複雑な仕組みです。4つの歯車でローターの回転をゼンマイに伝えているようです。まだ、よく見ていないのですが、たぶん、全回転型のローターで、どっち周りになってもゼンマイを巻ける仕組みなのだろうと思います。


テンプを外した根元になにやら文字がありました。「ETA 1256」と書いています。この時計、3500円くらいでゲットしたのですが、とてもアタリでした。それがこの根元の文字です。実は、エタ社のムーブメントだったのです。といっても、エタ社のムーブメントというだけではアタリではありません。この「cal.1256」とは、エタ社、最初期に位置する自動巻きムーブメントだったのです。エタ社とは、ムーブメントを様々なメーカーに供給する機械メーカーです。今では、オメガやブライトリング、ラドー、フランク・ミュラーなどヨーロッパの主だったブランドはエタばかりです。

もちろん、この数字を見ただけで、それとわかるほど時計の知識があったわけではありません。このムーブメントはどういうものだろうとネットで調べたら、
http://nakahiro.parfait.ne.jp/moji2/favreleuba1256.html
ここに情報があったというわけです。


そんな由緒正しい時計であれば、是非とも4時間で止まる問題は解決してあげたいものです。


テンプ、アンクルをはずし、歯車の抑え板を外しました。そして、小さいほうの歯車をはずしたら、ここでも初めて見る構造がありました。赤丸が歯車の最初の状態。センターのネジをはずして歯車を外したら、その下に変な歯車がついていました。

この歯車はリューズと連動している歯車です。リューズを正しく回すとその力がブツブツがついた歯車に伝わり、その上についている赤丸の歯車にもつたわり、その横のゼンマイに直結した歯車を回しゼンマイを巻き上げます。しかし、リューズを逆回転させると、ブツブツの歯車までは力が伝わりますが、上の歯車には、ブツブツが引っかからない仕組みがあり、上は連動しないのです。

と、ここまで書いて不思議な気持ちになりました。果たして、今まで分解した時計は、どうやってリューズの逆回転に対応していたのだろう? たくさん分解しているのに、逆回転時のゼンマイ逆回転をどうやって解除していたのかが、想像できません。



とりあえず分解は終わり、洗浄して組み立てました。それで時計本体には収納せず、剥き出しの機械のまま様子をみました。私の最初の読みでは、時計が4時間で止まる理由は、ゼンマイの汚れにあり、一部固着していて力を発揮仕切れないのだろうと思ったのです。しかし、ゼンマイを掃除して組み立てても、結果は同じ。やはり4時間で止まってしまいました。しかも、その4時間は、非常に好調に作動するのです。



テンプ問題なし、歯車問題なしとなれば、やはり原因はゼンマイしかありません。ゼンマイを取り出し、もう一度入念に清掃。これがゼンマイです。普段は、丸い歯車の形をした香箱と呼ばれるケースの中に収納されています。この歯車への収納の仕方が、先週わかったので、今回のように大胆に取り出してチェックすることが可能になりました。

しかし、ゼンマイを取り出してみても汚れていたことを除けば大きな問題はなさそうです。この状態で、小一時間、ああでもない、こうでもないとやっていて、やっと原因がわかりました。

ゼンマイを収納する香箱と呼ばれるケースのなかには、ゼンマイの終端(一番外側)を固定するためのパーツがあります。そのパーツが、なんか違う感じです。うん? これって、もしかして逆?

そう、そのパーツの取り付け方が逆になっていて、ゼンマイの終端がまったく固定できない状態だったのです。そのため、ゼンマイをある程度巻き上げることはできても、一定以上の力が加わると、端からほどけていたのです。その一定の力というのが、約4時間分の巻き上げに相当していたのでした。

原因がわかれば解決は簡単でした。パーツを正しく取り付け、ゼンマイを巻き入れ、組み立てておしまいです。

ゼンマイの汚れ具合から見ておそらく20年以上前に、私のように分解してしまったシロートがいて、全部分解した挙げ句に、この部分を逆につけてしまったのでしょう。そういわれてみれば、文字盤のセンターの傷など、いかにも針取りで失敗した傷のように見えます。

修復が完了したといっても、実は、まだ修復後10時間経過して程度。でも、鬼門の4時間は過ぎているので、たぶん、これで修理完了でしょう。


時計の本体には入れていません。入れようかと思ったのですが、針が汚いことがちょっと気になりだしたのです。せっかくだから、針を交換しようかな?

明日には、ジャンク4つセットが到着する予定。幸い、針はキレイなものもあるので、そのどれかが交換可能なようなら、入れ替えるかも。完成はそれから。

機械を入れている透明のプラスチックケース。これ、ダイソー商品です。3つセットになっていいてアクセサリーケースとして販売していました。1つ買って、非常に使い勝手がよかったので、もう2つ3つ買おうと、1週間後にダイソーに行ったら売り切れていました。すわ、時計分解好きが、そんなにいるのか!? と思ったりもしましたが、そんなことはありません。アクセサリー収納に、すごく適しているのでしょう。


その後、2日ほど様子を見て問題なく作動していたのでケースに入れました。若干ケースを磨き、文字盤を洗浄し、針の蛍光塗料も汚れていたので洗って、磨いています。文字盤の文字は洗浄しすぎたために若干薄くなってしまいました。今日、初めて1日携帯していたのですが、問題なく動いているようです。精度もよく、日差15秒以内には収まっていると思います。これまた満足な出来です。


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