華麗なるクラシックバレエ・ハイライト
(レニングラード国立バレエ)

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02年7月20日(土)

川口総合文化センター・リリア・メインホール

 

『白鳥の湖』第2幕よりグラン・アダージョ

音楽:P.チャイコフスキー  振付:M.プティパ,L.イワノフ/N.ボヤルチコフ演出

オクサーナ・シェスタコワ, ドミトリー・シャドルーヒン

よかったです〜〜。
シェスタコワは,繊細で優美,哀しい運命も伝わってくる立派なオデット。踊り慣れたシャドルーヒンとのパートナーシップも申し分ありません。

昨年のこの公演で見せてもらった黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥもすてきでしたし,今度の冬の『白鳥の湖』全幕は,是非彼女の日を選ぼうっと♪ 

 

『春の水』

音楽:S.ラフマニノフ  振付:A.メッセレル

エレーナ・エフセーエワ, アンドレイ・マスロボエフ

「ルジマトフのすべて」と同じ演目・出演者。
この日もいい上演でしたし,エフセーエワのメイクがナチュラルな感じになっていたので,なおよかったです。

 

『ジゼル』第2幕より パ・ド・ドゥ

音楽:A.アダン  振付:J.コラリ,J.ペロー

アナスターシャ・ロマチェンコワ, アルチョム・プハチョフ

ううむ・・・よくなかったです。
踊り以前に雰囲気が・・・あのー,ロマチェンコワって,もともとこんなに肌が小麦色だったでしょうか? それとも,日焼けしていたの??

 

『シェヘラザード』よりパ・ド・ドゥ

音楽;N.リムスキー=コルサコフ  振付:M.フォーキン

ユリア・マハリナ, ファルフ・ルジマトフ

名演でした。

ルジマトフは,こちらが,「体調が心配」モードだったせいかもしれませんが,調子はあまりよくないようで,昨年秋のインペリアル・ロシア・バレエのときより動きはよくなかったように思います。
だからといって,舞台が悪かったわけでは全然なく,驕慢なハーレムの美姫のマハリナとともに,官能的な愛の世界を見事に描き出してくれました。
やせてしまった分,切なさのオーラが増したようにも感じられ,それが「未来への希望など全くないからこそ燃え上がる恋」という感じを強めていたのかもしれません。

 

第2部

『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥ

音楽:L.ミンクス 振付:M.プティパ/N.ボヤルチコフ演出

オリガ・ステパノワ, ミハイル・シヴァコフ, レニングラード国立バレエ

主役二人については,「ルジマトフのすべて」と同じ印象。
コール・ドも登場し,女性ヴァリアシオン二つも加わって,より華やかな印象になりました。
ヴァリアシオンを踊ったのは,(表記はないですが)イリーナ・コシュレワとスヴェトラーナ・ギリョワ。コシュレワの,空間を大きく使う伸びやかな踊りがすてきでした。

そうそう,ステパノワのグラン・フェッテは,規則的にダブルを入れて,そのとき扇を開くというもので,酒井はなの,どうやって開いたり閉じたりするのか客席からはわからない動きとは違って,ココで開く,今度は閉じる,というのが明瞭に見えるのですが(ピエトラガラ風?),それがアクセントになって,鉄火娘の雰囲気をますます強めていました。お見事。

 

『眠れる森の美女』よりグラン・パ・ド・ドゥ

音楽:P.チャイコフスキー  振付:M.プティパ/N.ボヤルチコフ演出

オクサーナ・クチュルク, ロマン・ミハリョフ

「ルジマトフのすべて」と同じ演目・出演者。印象も同じ。

 

『瀕死の白鳥』

音楽:サン=サーンス 振付:M.フォーキン

オクサーナ・シェスタコワ

シェスタコワは,腕の動きが美しい白鳥でした。静謐に傾きすぎて,瀕死には見えませんでしたが,品なくもがいたりするよりはいいです。
今までにどれくらいこの作品を踊っているのかわかりませんが,まだ若いのですから,舞台の数を重ねて,自分の色を加えてほしいなー,と思いますし,そう期待できるバレリーナだと思わせてくれました。

ほんと,彼女は,すてきなバレリーナになりましたねー♪

 

『スポーツのワルツ』

音楽:D.ショスタコーヴィチ  振付:A.シードロフ

ドミトリー・ルダチェンコ, ミハイル・シヴァコフ

男性ダンサーの元気のいいテクニックを暢気に楽しめる作品で,決して嫌いではないのですが,毎年見せられて多少食傷気味なのも事実です。
トレウバエフが出ていないのも悪かったのかな?

 

『パキータ』より

音楽:L.ミンクス  振付:M.プティパ

イリーナ・ペレン, ファルフ・ルジマトフ, レニングラード国立バレエ

ううむ・・・あまりよくなかったです。

ペレンについては・・・基本的には「ルジマトのすべて」での『海賊』パ・ド・ドゥと同じ印象。しかも,この作品は,『ドン・キホーテ』などと共通する熱さが求められますから,そもそも彼女の個性に向いていないのでしょう。
その上,去年ヴィシニョーワとの舞台を見ているので・・・「ルジマトフのパートナーとしては力不足だよなあ」というのが率直な感想ですね。
特に残念だったのは,二人でいっしょに踊るシーン。ペレンはパートナーと合わせるコトが苦手なのでしょうか,ポーズや動きの調和がなくて,全然うっとりさせてくれない・・・。

それにしても,失礼ながら,ペレンという方はいったい何を考えているのかなー,と不思議に思います。(以下,小姑モード)
この日のパートナーは,かのファルフ・ルジマトフなわけですよ。ワガノワ・バレエ学校の大先輩,ペテルブルク派の重鎮,ロシア連邦人民芸術家,日本でのカーテンコールでは花屋を開業できそうなほどの質と量の花束が捧げられるスーパースターのルジマトフ。
・・・・・・そのダンサーと踊るのに,いったいなぜ,もう少し張り切らないのだ?? 
緊張して硬いとかなら微笑ましく見えて好感が持てると思うのですが,そういうわけでもなく,シヴァコフと踊ったときと同じように淡々と踊るだけ・・・。(あ,シヴァコフくん,ごめん) もしやにして,物事に決して動じない,たいへんな大物なのだろーか???
いや,もちろん,パートナーや会場や観客に応じて,力を入れたり手を抜いたりしろと言っているわけではないですが・・・「さあ,最後はルジマトフだわっ」と張り切る私たちを盛り下げないでほしい,「ペレンもがんばってくれたわね」と言わせてほしい・・・と,切に願います。

ええと,それで,ルジマトフのほうですが・・・やはり調子が悪いように見えました。(ファン仲間の話によると,前日よりはよかったらしいですが。)
体調の悪い中,パートナーをきれいに見せることにも気を遣いつつ,最善を尽くしているのはよくわかりましたし,見得の切り方をはじめとして,彼ならではのかっこいい見せ方,キメ方はしてくれたので,決して不満ではないし,あれだけ美しく見せてくれたことに感謝していますが,でも,無理をして踊っているように見えるのがつらくて,素直に舞台に入り込めなくて・・・。
こういうのって,ダンサーに対して失礼だとは思うけれど,でも,正直言って,熱狂できなかった・・・。(ああ,ファンって疲れる・・・)

コール・ドもついて,4人のソリストのヴァリアシオンもありました。順番に,(たぶん)コシュレワ,ロマチェンコワ,ギリョワ,タチアナ・ミリツェワ。
ここでも,コシュレワの堂々とした,楷書風の踊りが印象に残りました。うーん,冬には彼女も『白鳥』を踊るのよね。彼女の日も見たいなー。

 

最後は,全員でのカーテンコールになりました。マハリナが登場しなかったのは少々残念でしたが・・・。
そうそう,ロマチェンコワが『パキータ』に出演していたため,プハチョフは一人で登場しました。それはもっともなコトですが,そのまま彼だけ1列目にいて,ロマチェンコワを2列目から前に呼ばないというのはなんなんですかねえ? 一組ずつ前に出るときも,一人で出てくるし・・・。彼ではなくバレエ団の責任だと思いますが,舞台全体の演出として,非常に疑問に思いました。

 

全体としては,『パキータ』のコトを別にしても,昨年の公演より楽しめませんでした。
たぶん,容姿に優れたリシンスキーと技術に優れたトレウバエフが抜けた穴を,他の男性ダンサーがカバーできなかったせいでしょう。(特に,リシンスキーはけっこう気に入っていたので・・・。会場で質問したら,ドイツのバレエ団に移籍したらしいというコトでしたが,残念だなー。)

(02.8.16)

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