「言うな」
「恥ずかしいから?」
「それ以外に、あるのか?」
「ないな」
にやりと性質の悪い笑いを浮かべた龍斗が、不意に口付けを仕掛けてくる。
舌を絡められて、未だ口の中に残る己の味を唾液ごと寄越されて、眉根を寄せた。
「どうだ、自分の味は」
「……最悪だ」
「はは、そんなもんか」
「龍も試してみるか?」
男のそれを加えるに抵抗はあるが、龍のならばきっと耐えられるに違いない。
龍の下肢へと手を伸ばせば、きつく手首を掴まれて、動きを封じられた。
「嬉しいけどな。そっちはまた次の機会に。俺は下の口で銜えて欲しいんでな?」
「下って」
わかりきっていても、尋ねずにはいられない。
何よりも己を納得させる為に。
あの、大きなモノを受け入れるのだと。
できうるならば、恐怖なく。
「んーここ」
出したばかりなのに、まだ萎えもしない肉塊をすいと撫ぜ下ろした指先は、悪戯に双珠を弄ん
で、自分でも用を足す時にしか触れない場所に、届く。
爪の先で、かりっと擦られて。
「ここで、手前のを全部飲んで欲しい」
「入るの、だろうか」
「入れるんだよ、霜葉」
「っつ!」
爪の先が強引に分け入ってきた。
針の効果のせいだろう、切れた、感覚は無かった。
が、ちりりとした痛みは残る。
「……ああ、すまん。つい急いた。幾らお前が痛みに強いからって、痛みを強いるつもりは
ねーんだ」
口付けが、軽く、唇へ届く。
労わられるのも、久しぶりかもしれない。
何時でも、強くあり過ぎた。
労わりを寄せ付けない雰囲気もあったのだろう。
何もかも初めてばかりで、苦笑しか浮かべられない。
「複雑な面だな」
「そうでもない。ただ、初めて感じたりする事が多くて、驚いているだけだ」
「あーな。この年で初めてに遭遇すると、結構衝撃だったりするかもしれないな」
一体何時用意したのか、龍が小さなツボを引き寄せる。
恐らく中には、俺が受け入れる部分を解すための薬剤が入っているのだろう。
「少し、冷たいぞ」
「んっつ」
言われても反応してしまう冷たさだった。
元々は冷たいものでもないのだと思う。
ただ、俺の体温が上がりすぎているだけだ。
俺の視界の端、ツボの中からととりとした液体を、たっぷりと指に掬い取った龍は、その指
を窄まっている場所に差し入れてくる。
ぞぞぞぞぞ、と得体の知れない感触が背筋を一気に這い上がった。
「ああっつ」
思わず、龍の胸を力一杯押してしまったが、びくともしない。
「気持ち、良い?」
「わけっつ!あるかっつ」
「……そんなに怒らなくても……」
「やっつ…あああっつ、嫌だ」
生理的な嫌悪感から、ぼろぼろと涙が溢れた。
自分で制御できない涙なんて初めてではないだろうか。
幼い頃から割りと冷めた性質だったから、泣くほどの思いをしても、すぐに泣き止んだような
記憶が遠くある。
「そんなに、子供みたいに泣くなって……」
伝い落ちる涙を啜り上げられて、更に涙が溢れた。
今度は羞恥までもが加わって、止める気も失せてくる。
「可哀想とか、思えんで。可愛いとか、無茶苦茶してぇとか……思っっちまうんだよ、手前はさ。
そーゆう。人非人なんだ」
「ひ!あああああっつ」
悲鳴を掬い取られるようにして、口付けられた。
舌を吸われ、噛まれ、歯の裏が舐め上げられ、逃げようと身体を捻れば、頭を抱え込むよう
にして固定された。
「う?ああっつ!」
激しく繰り返される接吻による呼吸困難と、体の奥底を弄り回される恐怖に限りなく近い嫌悪
に、頭の中がぐらぐらと揺れだした頃。
その感覚はやってきた。
「龍!なんだこれっつ!ナニを、したっつ」
不意に、まるで小水を漏らしてしまいそうな、射精を堪えられないような。
快楽としか表現しようもない、凄まじい熱が下肢を覆い尽くした。
「ん?この、中にな。アレを直接弄られるのより気持ち良くなれるとこがあるんだよ…
どうだ」
「どうだって、ああっつ。寄せっつ!駄目だっつ、出るっつ」
後、数回。
や、もしかしたら、一度でもその箇所を擦られれば到達してしまったかもしれない。
「あ?……ふっつ…ふううっつ……」
続きを、もっと!と。
先刻止めてくれと強請った口が、真逆の言葉を吐きそうになるのを、何とか唇を噛み締めて
堪える。
歯の隙間から零れる吐息が信じられない熱さだった。
「出しちまいそうだったろ、霜葉」
首を振りかけて、龍の、目線の強さが怖くて、不承不承といった風情で頷いた。
「うん。だろう?いかせてやっても良かったんだけどさ……慣れてないと、イった後で入れる
とつらいから…よ?」
ひく、ひくと収縮する箇所に、龍の雄が押し付けられた。
逃げる、間は許されなかった。
「ひ!」
悲鳴は、喉の奥で凍り付いてしまう。
それほどの衝撃だった。
大きさは、無論。
本来排出しかされない場所へ、無理矢理大きな異物を押し込まれて、太股から肩までが、
がくがくと震えた。
「も、少し。後、ちょっとだけ、我慢できるか」
頷くのが精一杯だった。