どうやら、今の時点で壬生のウィークポイントは、皮との境目である上部であるようだった。
足の先まで緊張感を募らせて、快楽を堪能するのではなく、堪えているような気配がある。
「もり、とさ」
「なんだ」
「そこ、ばっかり。しないで、下さい」
「何故」
「……びくびく、なるから」
拙い物言いが堪らなかった。
「なっとけ」
「もりとっつ!ああんっつ」
掠めるように歯を立てれば、甘い悲鳴が散る。
完全に開いた花びらの奥から、とぷんと蜜が溢れ出た。
試しにと、蜜に唇を寄せて、啜り上げてみる。
イヤラシイ水音に反応した壬生の、声にならない抵抗は、指先が必死にシーツを掴む所作
から見て取れた。
ここで感じるにはまだ時間がかかるだろうが、放置するには味が良い。
塩辛さと独特の臭いの中に、甘さを感じるのだ。
完全な狼に変化した時は、さて置き。
普段でも鼻の良い俺だ。
最中に、女が漏らす淫臭は鼻について鬱陶しいくらいだったというのに、壬生の泉には
率先して鼻面を突っ込んでいる。
五つに区分される味覚の内、一番苦手なのが『甘味』だ。
甘さを旨いと感じる事などまずはない。
なかった、はずなのだが。
壬生の蜜の中に含まれている微かな甘味を、初めて甘露だと思った。
「ここも、良い味だ」
「信じ!られません」
「味見してみるか?」
不図、悪戯めいた心地が湧き上がって、壬生に口付けた。
唾液と共に含んでいた蜜を注ぎ込んでやる。
吐き出そうと抵抗する身体を押さえつけて、諦めて嚥下するまで辛抱強く待った。
ようやっと飲み込んで、数秒後。
唇を離してやる。
「どうだ」
「趣味悪過ぎます」
「もう一度、飲ませてもいいんだぞ」
「……生臭いです」
「そうきたか」
緋勇による壬生情報曰く、魚は好物。
生魚は好物、だったはずなのだが。
「お前、魚は好きじゃなかったか?」
「肉は好きではありませんよ。特に生肉は苦手です……出されれば勿論頂きますけれど」
「じゃあ、あれだな。お前が肉嫌いなのは俺しか知らないんだな」
「……それがどうかしたんですか?」
「別に。嬉しいだけだ」
「っつ!」
馬鹿な事を言わないで下さい!ぐらい言われるかと思ったが、どうやら甘ったるい雰囲気に
飲まれているのは俺だけでもないらしい。
「悪い、それたな」
「それ続けたままで、けっこ!ひゃうっつ」
皮を剥き、丸さを出してきた突起を吸い上げたら、この嬌声。
ああ、本当に、真剣に、いい加減、突っ込みたい。
己を押さえ込む為の深呼吸の吐き出しは、壬生の秘所に向かって思い切り吹きかけて
やった。
剥き出しの突起がひくひくと反応する。
開き出した花びらからまた、とろっと蜜が溢れ出た。
「蜜啜るのはお預けで、こっちを可愛がってやろうな」
返事など期待してはいない。
代わりに実に雄弁に、気持ちを語ってくれる突起を可愛がるのに努めた。
「やあんっつ。ああっつ。だ、め」
硬くなってきた突起は、中々舌触り歯触りが良い。
舐めしゃぶって、歯を立てるの繰り返しが気に入った。
「もり、と。杜人、さ!」
「どうした?」
「おねがっつ!もぉ。だめ」
「駄目って事はやめろって事か?」
絶頂を迎えたくて身体が焦れ始めているのだろう。
ただ、俺が導いてやらなければイけないのは、わかっている。
しかし、オネダリなどできない。
そんな壬生の感情の揺れは、手に取るように理解できた。
「じゃあ。ここ。じっと見ててやろうか。お前。もう見られるだけで濡れるぞ」
「そんな!」
指摘されて、潤む花びら。
心持ち花弁の赤味が増している気がするが、この程度じゃ物足りない。
「ほら……また、蜜が滴ってきた」
感じていても慎ましいそこから、とろっと蜜が溢れ出てくる。
この濡れ具合なら、入れてもいいだろう。
悪魔の囁きは、常に付き纏う。
俺は首を幾度も振って、壬生の秘所を愛撫するのに集中しなければならなかった。
「ほら、お前も集中しとけ。ここが、気持ち良いって事だけ考えるんだ」
「お前も?」
壬生の疑問には答えずに、俺は手っ取り早く奴をクリトリスでの絶頂を迎えさせる為に、剥き
上げていた皮を一旦引き下ろした。
先刻までは綺麗に隠れていたのが、大きく硬くなって、僅かに全部隠し切れないのが、何とも
愛らしく、そそられる。
頭隠して尻隠さずってーのは、こんなに楽しいものだとは思いもよらなかった。
日本の慣用句も棄てたもんじゃない。
「ああああ!」
皮の上からゆっくりと突起を指の腹で弄る。
舌でも唇でも歯でもない、初めての感触は壬生を翻弄させるのに、十分だ。
「やあっつ。やああっつ」
一番細かい動きをしやすい利き手の人差し指。
節くれ立った指の感触は、皮越しだと実にじれったいだろう。
鼻を鳴らす壬生は、本人そうと気が付かぬうちに腰を振っている。
自分が良いように動く様を指摘したらすぐさま止めてしまうだろうから、指摘せずに観察だけ
を続けた。
「あっつ。だめっつ。それ、だめっつ」
「駄目じゃねぇだろ。気持ち良い、だろ?」
「ちがっつ!」